法人向けにIoTモバイル回線サービス「ネッツワイヤレス」を提供している、NECネッツエスアイ IoTビジネス推進室事業戦略 グループマネージャーの有川洋平氏は「クルマの現在地を把握するトラッキングはかなり普及しているが、こうしたIoT機器のデータを分析して制御することは、キャリアだけではできない。MVNOにとって大きなチャンスだと捉えている」と話し、小回りのきくIoT路線を継続することを強調した。
クロサカ氏もこの考えには同意し、「IoTに注力していくことは、キャリアから見ると簡単なことではない。キャリアは通信で稼ぐのがなりわい。IoTは(キャリアにとって)小さすぎる、作り込むので面倒なビジネス。この考え方が、コンシューマーの他の分野でも効いてくるのでは」と話した。
海外のMVNO事情に精通している情報通信総合研究所の岸田重行氏は「海外で変わったところでは、子ども向けを突き詰めて何歳〜何歳をターゲットにするとか、もっとセグメントを細かく切っているところもある。ペット向けに見守り端末を使う方法もある。ライフスタイルは画一ではないので、その中でボリュームゾーンを意識しながらターゲットを設定しているMVNOもいる」と話す。
岸田氏は、ディスカッション前に海外のMVNO事情について講演し、MVNOのタイプを8つに分けて説明。その中で、エスニック(移民)系のMVNOや、格安国際通話サービスを提供しているMVNOは、日本では(ほぼ)不在だと指摘したが、これはお国柄も関係している。「日本は移民が多くなく、通話も欧州のようにちょっと旅行すると国境が変わるわけではないが、マーケットがないわけではない」とし、まだ差別化の余地はあるとの考えを示した。
海外のMVNOは、日本よりも早い2000年ごろから存在しており、特に欧米は早くから始まった。ドイツとオランダはサブブランドが存在感を示しているが、欧州は規模が小さい国が多いため、あまりMVNOは伸びていない。米国はTracfone、Boost、Virginの3社が大手MVNOであり、ヒスパニックや黒人層をターゲットにしてシェアを伸ばしている。
気になるのがフィンランドの事例だ。フィンランドでは2000年代前半にMVNOの参入が相次ぎ、2005年にはシェアが12%に達したが、キャリアが相次いでMVNOを買収したことで、2007年にはMVNOのシェアは2%にまで下がってしまった。日本でもKDDIがビッグローブを、ソフトバンクがLINEモバイルを買収するなど、同じ流れが起こりつつある。2社ともMVNOのサービスは独立して展開しているのでシェアに影響はないが、MVNOとキャリアがいかに併存できるかも、MVNO成長の鍵を握っている。
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