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» 2018年05月25日 18時48分 公開

ワイヤレスジャパン 2018:「5Gで体験価値の変革を」 KDDIが考える、5G戦略の“3ステップ”

「ワイヤレスジャパン 2018」では、5Gに関する基調講演「5G最前線!リーダーズ・ビジョン」が行われた。KDDIは「KDDIの5G戦略と研究開発の取り組みについて」と題し、KDDI総合研究所の中島康之所長が講演した。KDDIが考える5G戦略とは?

[田中聡,ITmedia]
KDDI KDDI総合研究所の中島康之所長

 「ワイヤレスジャパン 2018」の5Gに関する基調講演「5G最前線!リーダーズ・ビジョン」で、KDDIは「KDDIの5G戦略と研究開発の取り組みについて」と題し、KDDI総合研究所 代表取締役所長の中島康之氏が講演を行った。

 中島氏は、5Gの持つ多接続、大容量、低遅延という特徴に、さまざまなデバイスがインターネットに接続する「IoT」、そこから出力される「ビッグデータ」、人工知能の「AI」が掛け合わさることで、新しい価値が生まれると言う。

 例えば、食事内容や睡眠状況などをもとに、デバイス側から最適なアドバイスをしたり、ウェアラブルグラスに映し出した人の名前を検索したり(会ったことがあるけれど思い出せないときに役立つ)、さまざまな視点からスポーツの試合をディスプレイから見たり、といったものだ。

KDDI 5Gでさらなる体験価値向上を目指す
KDDI こんなことも可能になるかも

5Gの技術的な課題とは

 では、KDDIはどのような道筋で5Gに取り組み、体験価値を変革していこうと考えているのか。中島氏は「(1)5G実証実験」「(2)技術課題解決」「(3)ライフスタイル変革につなげる技術開発」という3つのステップが重要だと言う。

KDDI 体験価値を変革するための3ステップ

 実証実験は、スタジアムで50台のタブレットに4K動画を同時に配信する、大林組と連携して建築機械を遠隔で操作する、移動環境で8K動画を中継する、といったことを行い、利用シーンを開拓していく。

KDDI KDDIが利用シーンを開拓するために行っている実証実験
KDDI スタジアムで多数の端末に4K映像を配信
KDDI 3Dカメラで映した4K映像を送りながら建築機械を操作

 一方で、5Gを実現するにはまだ技術的な課題がある。LTEでは700MHz帯〜3.5GHz帯という、比較的低い周波数帯を使用しているが、5Gでは4.5GHz帯や28GHz帯など、高い周波数帯を使用する。高周波数帯の電波は直進性が高いが、減衰しやすいため、障害物のある場所や屋内でつながりにくいというデメリットがある。

KDDI 5Gの技術課題

 実際、LTEで使う2GHz帯と、5Gで使う4.5GHz帯、28GHz帯で、同じ基地局から出力している電波の強度を可視化したところ、2GHzは大通りや路地でも強い電波が浸透していたが、4.5GHz帯、28GHz帯と高くなるほど電波が弱まっており、28GHz帯は見通しの良い道路しか強い電波は見られなかった。

KDDI 高周波数帯の電波は入り組んだ場所には回り込みにくいという課題がある

 そこで、特定方向に電波を集中させ、対象端末を追従させる「ビームフォーミング」を活用している。JR東日本と連携し、列車の中に設置した5G端末にビームフォーミングで電波を送信したところ、走行中に4K/8K動画を伝送することに成功した。

KDDI ビームフォーミングを活用して、移動中の列車で4K/8K映像の伝送に成功

 基地局を柔軟に配置できるよう、マンホールや街路灯なども基地局の設置場所として活用していく。こうした手法なら、ビルの屋上などに設置するよりも短期間で済む他、景観を損なわないというメリットもある。

KDDI 身近なものにも基地局を設置していく

 5Gならではの超高速や低遅延などの品質を確保するには、「ネットワークを柔軟に構成できないと厳しい」と中島氏は言う。そこでKDDIは、「小さなデータを効率よく収集する」「ユーザーの近くで処理をして低遅延を担保する」など用途に応じて、仮想化した基地局の機能を分割する「スライシング技術」を開発。これにより、多様なサービスで求められる品質にきめ細かく対応できるという。

KDDI 多様なサービスを1つのネットワークに収容するアーキテクチャも構築する

ライフスタイル変革につながる5Gの技術

 5Gの技術が成熟すれば、いよいよサービスの提供だ。KDDIはライフスタイル変革につなげる技術開発も積極的に行っている。

KDDI ライフスタイル変革につながる技術開発も進める

 「自由視点VR」は、複数のカメラでとらえた映像を合成し、さまざまな視点から映像を視聴できるようにするもの。中島氏は「4〜5台の少ないカメラでも、臨場感のある映像を送れる」と話す。

KDDI あらゆる視点から映像を見られる「自由視点VR」

 高精細な映像をリアルタイムで伝送する際、例えばスポーツ選手が動いている部分は小さなブロックに分割して精細に処理をするが、それ以外の背景は大きなブロックに分割して簡素な処理をすることで、全体の処理が軽くなる。KDDIは、このような効率よくデータを処理できる技術も開発している。

KDDI 動きのある部分だけ精細に処理する技術

 「音のVR」は、動画で任意の箇所をズームすると、映像と共に音も“ズーム”されて明瞭に聞こえるというもの。例えば音楽演奏の動画で特定の演奏者をズームすれば、その人の近くで聞いているかのような体験ができる。これは、指向性マイクと全方位カメラを用いることで実現している。

KDDI 聞きたい部分だけをズームできる「音のVR」
KDDI 音のVRのメカニズム
KDDI
KDDI ズームした演奏者の音を明瞭に聞ける

 「テレイグジスタンス」では、オペレーターが装着したグローブなどのデバイスとロボットがインターネット経由で接続し、遠隔地にいるロボットに、触覚や手の動きを伝えることができる。

KDDI 視聴覚や触覚を伝送する「テレイグジスタンス」

 コネクテッドカーの分野では、移動中の無人車両が映した4K映像をリアルタイムで伝送し、遠隔地から車両を操作する、という実験を行っている。

KDDI 4K映像を伝送して、無人自動車を制御する技術

 この他、スマートフォンの位置情報ビッグデータから、タクシーの乗車数を30分単位で予測する「配車支援システム」、ドローンに基地局(スティックPCにソフトウェアを入れたもの)を載せた「空飛ぶ基地局」などの実証実験も展開している。

KDDI 「配車支援システム」では、人の流れを可視化する技術を活用している
KDDI 小型・軽量化した基地局を搭載した「空飛ぶ基地局」

 5Gで単に通信速度が上がってもLTEの延長線にすぎず、ユーザーがどれだけ付加価値を感じられるかが重要だ。KDDIが3つのステップで蓄積したノウハウを生かし、革新的なサービスを提案してくれることに期待したい。

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