ドコモとKDDIの株主は「料金」「楽天」に関心 ソフトバンクは? 3社の株主総会を振り返る石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2018年06月23日 09時57分 公開
[石野純也ITmedia]

 6月19日にドコモが、翌20日はKDDIとソフトバンクグループが、それぞれ株主総会を開催。各社とも、前期の業績や導入してきた施策の数々を振り返るとともに、今期以降の戦略を披露した。

 株主総会は、株主からの質問に経営陣が答える場でもある。少数株主にとっては、各社に意見をぶつける機会にもなっており、ショップへのクレームやCMの内容といった身近な話題から、経営戦略に関わるものまで、幅広い質問が繰り出される。ここに経営陣が、どう回答していくのかも株主総会の見どころだ。ここでは、3社の株主総会をまとめるとともに、ユーザーに関心が高そうな質疑応答の内容をピックアップしていきたい。

楽天への対抗策に関心が集中、ポイント制度への注文も

 ドコモの株主総会では、社長の吉澤和弘氏が、まず同社の戦略を解説。中期経営戦略である「Beyond宣言」を説明しながら、ここで掲げられているパートナーとの取り組みの紹介に時間を割いた。

ドコモ 吉澤社長が、議長としてドコモの方針を解説した

 ドコモは、約2年後の2020年に5Gを導入する予定で、パートナーとの取り組みを強化している。ネットワークが先行した3Gや4Gに対し、5Gではサービスを軸にしながらネットワークを組み立てていく方針だ。そのサービス開発の要になるのが、パートナーというわけだ。吉澤氏は株主に向け、次のように語った。

 「3Gや4Gを導入した際には、こんな高速通信が本当に必要なのかと言われたことを覚えているが、結果的にFacebookやTwitterなどのSNSや、YouTubeなどのストリーミングサービスが一気に普及した。サービスが後からついてきたが、5Gでは、当初からネットワークとサービスを同時に提供することを目指している」

ドコモ 5Gでは、ネットワークだけでなく、サービスの開発にも力を注ぐ

 「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」で幅広い企業、団体の参画を促しているのはそのためだ。吉澤氏によると、同プログラムには既に1400の企業、団体が参加しているという。

 また、既に語られていることだが、回線契約からdポイントクラブ会員に経営の軸足を移していくことも改めて強調された。ポイントプログラムを中心とした会員へ基盤を移行することは、「事業革新の要となる」(吉澤氏)。そのため、ドコモは2020年度までに300以上の加盟企業獲得を目標としており、「最大規模のポイントプログラムになることを目指す」(同)。

ドコモ 事業基盤を回線契約からdポイントクラブの会員へシフトさせる

 事業基盤の転換については、株主からも質問が飛んだ。ある株主は、5Gの取り組みには関心がない様子だったが、「ドコモユーザーにポイントを多くするというのは魅力的」と評価する。これに対し、副社長の辻上広志氏は「長期ユーザー向けに『ずっとドコモ割』をやっていたが、5月からはさらにdポイントを選べるようになり、1.2倍のポイントを差し上げている」と回答。

 「ベーシックパック」で3GB超5GBまでの場合、旧プランの「データMパック」で15年超のプラチナステージになっている場合、「割引だと800円だが、ポイントだと1000円に近くなる(960ポイント)」と、還元率を強化していることを訴えた。

ドコモ 辻上副社長は、「ずっとドコモ割プラス」で料金とポイントがさらに連動していくことを語った

 一方で、「dポイントのヘビーな利用者」を自認する株主は、「ANAのマイレージと連携できないのか」との疑問を投げかけた。ドコモは「例えば、マクドナルドやローソン、最近だとマツモトキヨシも加盟店として拡大している」(社外取締役 村上輝康氏)としたが、質問に対しては「加盟店を拡大するうえで、貴重なご意見」と述べるにとどまった。

ドコモ
ドコモ マクドナルドやローソン、マツモトキヨシなど、大型加盟店が増加している
ドコモ 村上氏は、社外取締役の立場からdポイントの魅力を語った

 ドコモでは「ANAとはやっていないが、JALとは(ポイント連携を)実施している」(吉澤氏)というが、株主が述べていた通り、特定の航空会社だけでなく、面的に提携企業をカバーした方がポイントの利便性が高まるのも事実。ドラッグストアはマツモトキヨシだけでなく、ドラッグ新生堂やツルハドラッグなど、複数チェーンが加盟している。逆にローソンのみのコンビニエンスストアや、高島屋のみの百貨店のように、1業種1社になっている業種もあるが、事業基盤をポイントプログラムに移すのであれば、既存の提携先と競合関係にある相手とも手を結ぶ必要が出てくるだろう。その意味で、株主の質問は示唆に富むものといえる。

ドコモ 日本最大級のポイントプログラムという目標を達成するには、加盟店獲得が重要になる

 MNOへの新規参入が大きな話題となったこともあり、ドコモが楽天にどう対抗していくのかも、株主の関心事だった。元取締役常務執行役員(株主総会をもって退任)の大松澤清博氏は「Beyond宣言でお示ししている通り、(回線契約よりも)もっと大きなdポイントクラブを活用しつつ、Eコマースにも進出していこうとしている」と語り、サービスの面でも競争になる見通しを語る。

ドコモ 対楽天の戦略を語った大松澤氏。この株主総会で、ドコモの取締役を退任した

 とはいえ、楽天はゼロからネットワークを構築しなければならず、サービスイン当初は、既存事業者3社と大きな差がつく格好になる。株主からは、ここを突くべきだとの提案もあった。楽天とのローミング交渉を「打ち切った方がいいのでは」(株主)というのがそれだ。ドコモとしては「ビジネスベースの話になる。中身に応じて、しっかりとした対応をしていくのが基本」(大松澤氏)だが、株主の質問は、楽天の新規参入に対する危機感の表れといえる。ドコモからは直接的な対抗策は示されなかったが、株主にとっては、もう少し突っ込んだ話を聞きたかったところかもしれない。

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