auの料金施策は「ピタット/フラットプラン」では不十分? 株主から指摘が相次ぐ(1/2 ページ)

» 2018年06月20日 22時48分 公開
[田中聡ITmedia]

 KDDIが6月20日、第34期定時株主総会を開催した。今回は、高橋誠氏が社長に就任してから初めての株主総会ということもあり、高橋氏が目指すKDDIのビジョンが改めて語られた。【訂正あり】

kddi 株主総会の様子
kddi KDDI高橋誠社長

 KDDIは2016年度〜2018年度の3年にわたる中期経営目標として「通信とライフデザインの融合」を掲げており、高橋氏もこの目標を引き継いで事業を展開している。「お客さまに一番身近に感じてもらえる会社でありたい。お客さまから『私の目線で提案して、私のことをよく考えている会社』と思われるように、さまざまなテクノロジーを積極的に活用し、ワクワクを提案し続けられる会社になりたい。新しい体験価値を創出していきたい」と意気込みを語った。

 一方で高橋氏は「通信からライフデザインにシフトするわけではない」と話し、「通信が事業の軸であることは変わらず、さらに磨きをかけた通信サービスを提供していく」と、通信事業もおろそかにしない姿勢を強調した。

kddi 通信とライフデザインの融合による、新しい体験価値の創出を目指す

 直近の施策としては、2018年夏モデルとして「さまざまなライフスタイルに応えられる」(高橋氏)端末ラインアップを発表したこと、スマートグラスの企画開発を行い、JALと連携して映像視聴の実証実験を実施すること、人間とロボットをつなぎ、あたかも現地にいるような体験ができる「テレイグジスタンス」を進めること、通信料にNetflixの利用料を込めたセットプランを2018年夏に提供することなどを紹介した。

【訂正:2018年6月21日15時41分 初出時に、スマートグラスを活用した映像視聴の実証実験について「ANAと提携」としていましたが、正しくは「JALと提携」です。おわびして訂正致します】

kddi ホームIoT、スマートグラス、テレイグジスタンスなどの新技術開発にも取り組んでいく
kddi Netflixの利用料金をセットにしたプランも提供する
kddi Eコマースでは、キャリアフリーで利用できる「Wowma!」に注力している

コマース事業はどう展開する?

 株主からはさまざまな質問が挙がったが、その中で印象に残ったものを紹介する。

kddi 村本伸一氏

―― ライフデザイン事業の一環としてコマース事業を展開しているが、商品の在庫リスクにどう対処しているか。また世界の巨大企業にどう追い付き、差別化していくのか。

村本伸一取締役 コマース事業として、われわれは「Wowma!」と「au WALLET Market」を提供している。Wowma!はショッピングモール型で、仕入れは加盟店会社が行っているので、当社に在庫リスクはない。au WALLET Marketは、お客さまから注文いただいた後に発注して商品をお届けしている。一部の商品を除き、auショップや倉庫での在庫は持っていないので、大きな在庫リスクはない

 一方、商品をいち早くお届けするには、在庫化も必要だと考えている。データの活用や分析を進め、在庫管理を適切に行うことで、リスクの最小化を図りたい。

 差別化については、(auショップなどの)お客さま接点から得られるビッグデータがあるので、この強みを生かし、コマース事業の早期拡大を目指す。ポイントの還元や会員さま限定クーポンなども強化したい。

料金、もっと安くならない?

―― 楽天が第4のキャリアとして進出するが、どう対応するのか。安い方のキャリアに移る流れもある。auは今より3割ぐらい安くしても十分やっていけると思うが、どうか。

高橋氏 楽天は既にMVNOで参入しており、料金はだいたいMVNO程度の水準か、もう少し安くなるといわれている。われわれも、MVNOへの流出を抑止するために「auピタットプラン」と「auフラットプラン」を提供している。このような料金をうまく伝えることで、流出の抑止を図っていきたい。

―― 私は従来の携帯電話(フィーチャーフォン)を使っているが、通信費の負担が大きくなっているように思える。携帯電話が始まったころは月3000円だったが、(スマホユーザーは)今だと1万円前後の負担になっているのでは。それに見合ったサービスになっているのか。利用者の負担でものすごく利益を出しているのだから、今のような負担を強いられると(楽天などの)第三者に逃げていかれるのでは。

高橋氏 スマートフォンは、お客さまによっていろいろな形でお使いになっている。昔はメールが多く、最近は動画やゲームをする方が多い。5G時代では大容量、低遅延、多接続を生かし、スマートフォン以外の端末も増えるかもしれない。お客さまに応じて、多種多様な使い方になると予想している。

 料金は、ピタットプランとフラットプランを提供しており、(ピタットプランは)利用容量に応じて料金が変わる。できるだけお客さまには気軽にお使いいただける工夫も引き続きしていきたい。

kddi 石川雄三氏

―― 長期ユーザーに対してのプランが少ない。確かにピタットプランもあるが、(ピタットプランの対象外である)フィーチャーフォンをずっと使っている人もいる。そのあたりの戦略は?

石川雄三取締役 長期優遇プランとして、「au STAR」という会員制度がある。その中でスターロイヤルという名称でポイントバックをしている。また、10年以上フィーチャーフォンを利用したお客さまがスマートフォンに変更する際は、「スマートサポート」という、いつでもお問い合わせいただけるサービスを提供している。長期ユーザー様は本当にありがたいお客さまなので、より便利にお使いいただけるよう努めているが、まだ十分でないというご指摘なので、重要な経営課題として取り組んでいきたい。

“DDI創業者”からの激励

―― ソフトバンクの孫社長やドコモを競争相手にして、こうした実績を上げているのは高い評価に値する。高橋新社長が社長になる前に、新しい事業分野でいろいろなことを試みて、新規事業で確たる成果を上げた。そういう方が、新しい体制でKDDIを引っ張っていかれるということで、大きな期待を抱いている。特にお尋ねしたいのが、これから5年後のKDDIの姿。どういったビジョンを持ってKDDIという会社を引っ張っていくのか。

(※この株主は、質問の前に「DDIの創業者」だと述べており、その声色から、イー・アクセスの創業にも携わった千本倖生氏であると思われる)

高橋氏 4月に社長を拝命してから3カ月がたったが、中期の経営戦略を練っている。今までの中期経営目標をしっかりと引き継いで達成するのが大きな目標。5年後は少し先だが、通信だけで競争するのは難しい。通信を1つのアセットにして事業拡大できないかと考えたときに、ライフデザインに通信を組み合わせれば、他社と同じことをやるよりも、もっと素晴らしいことができる。

 これから5Gが本格化するが、スマートフォンやフィーチャーフォンだけでなく、いろいろなものに通信が入る時代を迎える。そういったことも視野に入れて通信事業を展開していきたい。

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