楽天への対応に関心が高かったのは、KDDIの株主も同じだ。ある株主は「安いキャリアにユーザーが移る流れもあり、あの会社(楽天)はショッピングでも大きな会員を持っている。(auも)3割ぐらい安くした方がいいのではないか」と問いかける。これに対し、社長の高橋誠氏は次のように語る。
「楽天はMVNOとして参入していて、料金水準もMVNO(楽天モバイル)と同じか、もう少し安くなるといわれている。KDDIは、MVNOに対する流出抑止をするために、auピタットプラン、auフラットプランを入れ、抑止傾向も出ている。このようなプランをうまくお伝えすることで、楽天参入後も流出の抑止を図っていきたい」
別の株主は、3Gケータイを使うユーザーを、新規参入事業者が狙い撃ちにしてくるのではという見方を示しつつ、KDDIに対応策をたずねた。これに対して高橋氏は、上記の回答と同様、auピタットプラン、auフラットプランですでに解約抑止効果が出ていることを示しつつ、「(楽天は)投資額も6000億円程度で、最初からどのくらい完璧(なネットワーク)なのかが計り知れない。auのファンをしっかり増やし、離れられないような戦略をしっかり準備していきたい」と語る。
対楽天とは別の角度からも、料金についての質問が相次いだ。従来型のケータイを使う株主からは、「今、(スマホユーザーは)1万円前後負担しているが、それに見合ったサービスになっているのか。対応をきちんとしていただきたい」と要望された。
別の株主は長期ユーザーへの対応がしっかりできていないのではと指摘する。こちらに関しては、副社長の石川雄三氏が、au STARの仕組みを解説。「auスターロイヤルでポイントバックをしている他、フィーチャーフォンをお取り換えするギフトも用意している」としながら、「まだそれが十分に伝わっていない」との課題認識も示した。
実際、ドコモと比べると、KDDIの株主総会では料金についての質問が目立っていた。かつてはドコモも同様の状態だったが、さまざまな還元施策が功を奏し、それが株主にも伝わったことで、こうした質問は減りつつある。KDDIは2017年、auピタットプラン、auフラットプランを導入したが、石川氏が述べていたように、それがまだ十分伝わっていない印象を受ける。新料金プランの利用者は順調に増えて、3月には680万契約を突破しているが、全体に広く行き渡らせるには、もう一段、何らかアクションが必要になってくるのかもしれない。
4月に社長に就任したばかりの高橋氏だが、株主総会では株主に向け、改めて経営方針を説明。高橋氏は「通信とライフデザインを融合させていく。これまではライフデザインへの変革を掲げていたが、通信からライフデザインにシフトするわけではない。通信は核として、さらに磨きをかけたサービスを提供しながら、ライフデザインサービスを拡充することでお客さまへの新しい価値提供を積極的に進めていく」と語った。
株主総会では、「(KDDIの前身となった1社の)DDI創業者ですが……」と名乗る株主が質問する一幕も。高橋氏とのやりとりや声のトーンから判断すると、DDIやイー・アクセスを創業した千本倖生氏が株主として質問したとみられる。同氏はドコモやソフトバンクと対等に渡り合っているKDDIを評価し、高橋氏の社長就任に期待しているとしたうえで、5年後の会社をどのようにしていきたいのかの方針をたずねた。
予想外の大物の登場に高橋氏は、やや緊張した面持ちで「お世話になりました」とあいさつしつつ、「現在、中期経営計画を練っているところ」と回答。5年後の目標を語るのは、この中身を披露してしまうことにもつながるため、直接的な回答は避けたが、「これから5Gが本格化すると、スマートフォンだけでなく、いろいろなものに通信が入ってくる。そういうところまで視野に入れ、通信とライフデザインの融合を拡大していきたい」と意気込みを語っている。
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