“余計なもの”報道の真相は? 「Mate 20 Pro」の売れ行きに影響は? Huawei呉波氏を直撃SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/2 ページ)

» 2018年12月25日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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「余計なもの」を入れる余裕がない

―― 好調な一方で、Huaweiの端末に「余計なもの」が入っているという報道もありました。直球になりますが、まず、本当にそんなものが入っていたのか? というところをご説明ください。

呉氏 Huaweiの端末に「余計なもの」が入っているという報道がありましたが、それを受け、すぐに公式の声明を出しました。インターネット上でも弊社の端末を分解した記事がありましたが、余計なものは何もなかったという結論でした。これは証拠が伴わない、虚偽の報道だと考えています。悪意のある、事実ではない報道に対してはすでに法的手続きを開始しています。

 冗談ではありますが、弊社としてはできるだけコスト削減するようにしています。余計なものなど入れる余裕はありません。少しでも技術をかじっている人には、そんなやり方はありえないということが分かると思います。

ファーウェイ 「余計なもの」報道に対して出した、ファーウェイ・ジャパンの声明

―― フィクションの映画じゃないんだから……とは思います。

呉氏 しかも弊社の製品は発売される前に、さまざまな機関や通信事業者における、大量の試験や認証を通っています。サイバーセキュリティとプライバシー保護は、弊社の中で最も考慮していることです。製品には設計段階からプライバシー保護の考え方を反映させています。その考え方は、開発過程の全てに落とし込んでいます。

 グローバルにおいては、プライバシー保護の枠組みがありますが、EU議会が16年4月14日に通した、一般的に言われている最も厳しいGDPRを基本要求として枠組みに採用しています。(会計では)CACA(カナダ勅許会計士協会)や、AICPA(アメリカ公認会計士協会)の定めたGAPPにものっとっています。

 消費者の個人情報を保護するため、プライバシー・バイ・デザイン(技術や設計、運用にプライバシー保護の枠組みを入れるという考え方)という理念は、設計、開発、検証、販売、サービス、工場の全てにおいて徹底しています。

―― 一方で、エンドユーザーソフトウェア使用許諾書に、ユーザーの情報が無制限に収集されているのではと読める規約があり、ネット上には不安視する声も見られます。英語版とも規約の内容が違っていましたが、ここについては、どうお考えでしょうか。

呉氏 実は、欧州の法律によると、お客さまのデータはカテゴリー別に種類があり、一部の情報はエンドユーザーソフトウェア使用許諾契約に明示しなくてもいいことになっています。ですから、英語版にはこれに関連した記述がありませんでした。実際、弊社の個人情報の使用と収集に関しては、Huaweiプライバシーポリシーと起動時のガイドで説明しています。

 ただ、翻訳の関係で実態とは異なり、誤解を招くところがあったので、法律を守る大前提のもと、内容が一致するように、日本版のエンドユーザーソフトウェア使用許諾の6.1は改定しています。これは、Huaweiプライバシーポリシーと起動時のガイドで説明をしています。

―― 以前確認したときと内容が変わっていますが、変更は最近でしょうか。

呉氏 はい。最近です。

ファーウェイ Huawei端末のエンドユーザーソフトウェア使用許諾契約では、以前は「6.1」に連絡先情報やSMSなどのデータを収集する旨が記載されていたが、現在は削除されており、英語版と同様の内容になっている。なおファーウェイ・ジャパンによると、「過去にも現在も、SMSや連絡先などの情報は収集していない」とのこと

ネガティブな影響はあまり出ていない

―― 一連の報道で、何かネガティブな影響は販売に出ていないのでしょうか。

呉氏 一部のメディアによって意図的に中傷記事が出ているので、中には影響を受けた消費者もいると思います。しかし、今のところ、どんなにネガティブな報道があっても、実質的な証拠は今でも出ていません。こういった悪意のある事実無根の報道に対しては法的措置を取っています。

 改めて強調しておきたいのは、Huaweiは、事業を展開している全ての国や地域の法令や、国際的な電気通信事業規則には全て準拠しているということです。

 販売に与えた影響に関しては、BCNさんのデータを見ると、消費者の方々は実際の行動で弊社を支持してくださっていることが分かります。ただ、本来、ああいった報道がなければもっと売れていたのではと思いますが(笑)。

―― それは、今のところ、あまり影響が出ていないということですね。一方で、SIMフリー市場全体が縮小しているというデータもあります。この影響はいかがですか。

呉氏 まず、何をSIMフリー市場と呼ぶのかという見解が統一されていません。統計によってはY!mobile、UQ mobile、MVNOが含まれていなかったり、MVNOやUQ mobileは含んでいてもY!mobileが除かれていたりと、データによってSIMフリー市場が指しているものがまちまちです。しかし、弊社としては、ドコモ、au、ソフトバンクの3事業者以外は、全てオープンマーケットと見ています。

 社内データによると、確かにオープンマーケットの市場はあまり伸びていません。ただ、それが下降傾向にあり、縮小しているということもありません。われわれから見えているデータに基づくと、日本のオープンマーケットはまだまだ成長する余地があるといえます。確かに過去には、docomo withがSIMフリーの障壁になるといわれていたこともありましたが、1年を振り返ると、ウィンウィンの状態で、どちらも大幅な成長を遂げています。

 MM総研さんの4月から9月のデータを見ると、初めて日本の全ての販路が含まれるランキングで、Huaweiが5位に入ることができました。Appleが40%以上と依然として大きく、2位はシャープで、3位はソニーでした。2位と3位は大きく離れていて、4位がサムスン、そして、5位がHuaweiの106万台です。

これもMM総研のデータですが、5位のHuaweiは、106万台売れた中で、そのうちの54万台はオープンマーケットのもので、メーカーの中で唯一伸びているのもHuaweiです。ですので、われわれはオープンマーケットに支えられているといっていいと思います。日本市場では、生き残ることができれば、それはすなわち勝利といえます。

―― 逆風もある中で着実に販売を伸ばしていますが、2019年はどうしていきたいのでしょうか。目標などを教えてください。

呉氏 これまでと変わらず消費者第一を掲げ、プレミアム戦略の下で、最も優れた製品をお届けしていきたいと思います。来年はスマホを中心にしながら、その周りにタブレット、PC、スマートホームとヘルスケア製品があるという、スマートライフを提供していきたいと考えています。

 これから5Gの時代もやってきますが、AI、AR、VRといった分野でも継続的に革新を起こしていき、消費者のニーズを満たし、本当の価値を創出していきたいと考えています。

 ただし、19年のHuawei端末の目標は変わらず、生き残ることです。19年は市場の多様化がさらに進むと考えています。売り場を見ているとそれが分かります。これまでは一番いい場所がスマホでしたが、最近では徐々に他の製品も展示されるようになってきました。19年は、より多様化された端末市場になると信じています。

取材を終えて:技術革新を受けられなくなるのはマイナス

 呉氏のコメントからは、Mate 20 Proが、ハイエンドのSIMロックフリーモデルとしては、異例の売れ行きを示していることがうかがえる。トリプルカメラを搭載し、画質を大幅に向上させたP20 Proがドコモ独占になったことで、SIMロックフリーモデルを待ちわびていたユーザーが飛びついた可能性もありそうだ。冒頭でも述べたように、確かにMate 20 Proは完成度が高く、価格は高いが長く使える1台に仕上がっているため、ある意味納得の結果といえる。

 一方で、年末にかけ、“Huawei排除”の動きが一気に顕在化したことに対しては、苦慮している様子がうかがえる。呉氏によると、現時点では端末の販売面にはあまり大きな変化は出ていないようだが、風評被害の影響はボディーブローのようにじわじわと効いてくる恐れもあり、予断を許さない。

 政治や国際情勢が絡んでくる話なだけに、今後、事態がどう転ぶかは未知数の部分も多いが、仮に販売が縮小し、日本で販売する端末のバリエーションが減ってしまったりすれば、技術革新を享受できなくなるという点で、消費者にとってもマイナスだ。部材を提供する日本メーカーへの影響も気になるポイントといえる。Huawei自身が打てる手は、今まで以上に情報公開を積極的にしていく程度しかないが、一連の問題が、軟着陸する方向に向かうことを期待したい。

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