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» 2010年05月20日 18時30分 UPDATE

Google、企業向け「App Engine」とVMwareとの提携を発表

Googleは、開発者向けホスティングサービスを企業向けに強化するとともに、VMwareとの提携を発表し、エンタープライズ市場に注力する姿勢を鮮明にした。

[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 検索エンジン大手の米Googleは、年次開発者会議「Google I/O」において開発者向けホスティングプラットフォームの新バージョンや、米VMwareとの提携を通じてエンタープライズJava開発者のクラウド対応を支援する取り組みを発表するなど、エンタープライズ市場に注力する姿勢を鮮明にした。

 サンフランシスコで5月19日(現地時間)に開幕したGoogle I/Oカンファレンスの初日、GoogleはGoogle App Engineの新バージョンとなる「Google App Engine for Business」を発表した。

 GoogleのWebサイトのブログ記事で、同社の技術担当副社長ビック・ガンドトラ氏は次のように述べている。

 われわれは本日、Google App Engine for Businessを発表する。この製品は、われわれGoogleが社内アプリケーション用に使うのと同じインフラ、すなわち信頼性と拡張性に優れたセキュアなインフラ上で、企業が社内アプリケーションを構築することを可能にする。クラウドへの移植性の改善に向けてわれわれはVMwareと提携し、企業がリッチなWebアプリケーションを開発し、任意のクラウドあるいはオンプレミス(社内システム)に配備するのを容易にするつもりだ。SpringSource Tool SuiteとGoogle Web Toolkit(GWT)の新バージョンのユーザーは、Google App Engine for Business、VMwareの環境、あるいはAmazon EC2などのインフラにアプリケーションを1クリックで配備できる。

 Google App Engine for Businessでは、Googleのアプリケーションを支えているのと同じスケーラブルなインフラ上で、企業は社内アプリケーションを開発・運用でき、自社のニーズに合わせてカスタマイズした管理機能とサポートも用意される。企業向けの新しい機能や特徴としては、社内のすべてのアプリケーションを一元管理する機能、ユーザー数とアプリケーション数に基づくシンプルな価格設定、開発者向けのプレミアムサポート、99.9%のアップタイムを保証したSLA(サービス品質保証)、そして年内に提供されるプレミアム機能(クラウドベースのSQLとSSLなど)へのアクセスなどが含まれる。

 Google App Engineプロジェクトの技術責任者兼マネジャーを務めるケビン・ギブズ氏は、Google I/Oの5月19日のキーノートスピーチで、企業内のWeb開発者にとって共通の関心事の1つが「すべてのアプリケーションを自社で管理することだ」と語った。Googleでは、この問題に対処する手段としてホスティングプラットフォームのGoogle App Engineを位置付けようとしたが、企業のニーズをサポートするには、この製品を強化する必要があることが分かったという。

 「企業が直面している問題を解決することを目的として、Google App Engine for Businessはスクラッチから開発した」とギブズ氏は述べた。

 Googleで開発技術を担当する製品管理ディレクターのエリック・トーロム氏は米eWEEKの取材に対し、「Google App Engine for Businessでは、開発者はJava、Python、Eclipse IDE、Google Web Toolkitといった標準ベースの技術を利用して、同プラットフォーム上で動作するアプリケーションを作成できる」と説明した。動的な拡張性、一貫した可用性、定額方式の価格設定といった魅力も備えるという。

 ギブズ氏によると、GoogleではGoogle App Engine for Businessの各機能を年内に順次リリースする予定だとしている。Googleはカンファレンスで同プラットフォームのプレビューを行い、「Enterprise Administration Console」を披露した。これは企業向けのコンソールで、社内のすべてのアプリケーションのセキュリティポリシーを確認・設定・管理できるという。同社のロードマップによると、サポート、SLA、課金機能、ホステッドSQL、カスタムドメインSSLなどは今後提供されるようだ。

 ギブズ氏によると、Google App Engine for Businessの価格は、1ユーザー・1アプリケーションにつき月額8ドルで、1アプリケーション当たりの上限月額は1000ドルに設定されるという。

 またGoogleは、VMwareとの一連の技術提携も発表した。企業内ソフトウェア開発者が任意のクラウド環境(パブリック、プライベート、ハイブリッド)内でアプリケーションを効率的に開発・配備・管理するためのソリューションを提供するのが狙いだ。

 「企業はクラウドコンピューティングへの移行に前向きな姿勢を示している」とVMwareのポール・マリッツ社長兼CEOは語った。「企業がクラウドの経済的メリットに魅力を感じているのは確かだが、クラウドコンピューティングによって実現されるビジネスの俊敏性とイノベーションにも注目するようになってきた。VMwareとGoogleが最も重視しているのは選択可能性と移植性であることを、両社の顧客およびJavaコミュニティーに再確認してもらうために両社は手を結ぶのだ。企業のファイアウォールの内側でも社外のパブリッククラウド環境の中でも、最先端のアプリケーションがスムーズに動作できるようにするために両社は努力するつもりだ」

 Googleにとって、この提携はエンタープライズ市場での影響力の拡大につながる。企業内Java開発者の間では、VMwareのSpringSource部門から提供されているSpring Frameworkの人気が高いからだ。一方、VMwareは最近、この分野で米Salesforce.comと同様の提携を結んだ。

 「Javaで新たに記述されたコード行の半数以上は、Spring環境で作成されたものだ」とマリッツ氏はGoogle I/Oの聴衆に語った。「われわれが提供するバックエンドは、Googleがフロントエンドに提供する技術と連係する。われわれはエンドツーエンドの環境を提供するために、Spring FrameworkをGoogle Web Toolkitに連係した」

 VMwareとGoogleは、クラウドアプリケーションの生産性、移植性、柔軟性の改善に向けて複数の分野で協力する考えだ。これらの取り組みにより、Java開発者はリッチなWebアプリケーションを開発する、クラウドアプリケーションに対してGoogleとVMwareのパフォーマンスツールを利用する、Springで開発したJavaアプリケーションをGoogle App Engine上に配備する、といったことが可能になるという。

 「開発者は優れたWebアプリケーションを迅速に開発・運用する手段を探しており、企業はオープンで柔軟なプラットフォームを求めている」とGoogleのガンドトラ氏は語る。「VMwareと共同でクラウドの移植性を企業に提供することにより、開発者がリッチなJavaアプリケーションを任意の環境に容易に配備できるようにするつもりだ」

 Googleはさらに、Google App Engine上でSpring Javaアプリケーションをサポートすると発表した。これはクラウド向けアプリケーションの開発・運用・管理を容易にするとともに、異なるクラウド環境間でのアプリケーションの移植を可能にするという共同構想の一環だ。開発者はEclipseベースのSpringSource Tool Suiteを利用することにより、なじみのある効率的な方法でSpringアプリケーションを開発でき、そのアプリケーションを従来のプライベート型のVMware vSphere環境や、VMware vCloudパートナーのクラウドに配備するか、もしくはGoogle App Engineに直接配備するかを柔軟に選択できる。

 VMwareとGoogleは、次世代のRAD(Rapid Application Development)ツールである「Spring Roo」の高速開発機能をGoogle Web Toolkit(GWT)のパワーと組み合わせてリッチなアプリケーションを開発できるようにするという取り組みでも協力する。GWTを利用したアプリケーションは、AjaxやHTML5などの最新のブラウザ技術を活用することにより、スマートフォンとPCの両方で非常に魅力的なユーザーエクスペリエンスを実現できるという。

 さらに両社は、VMwareのアプリケーションサーバ「SpringSource tc Server」に含まれるパフォーマンス管理技術「Spring Insight」をGoogleの「Speed Tracer」に緊密に連係することにより、SpringとGoogle Web Toolkitを使って作成したクラウドアプリケーションのパフォーマンスに対するエンドツーエンドの可視性を実現する考えだ。

 米調査会社Nucleus Researchのレベッカ・ウェッテマン副社長は、GoogleとVMwareの提携について次のように説明した。

 簡単に言えば、これはGoogleがエンタープライズクラウド分野で生き残るために必要なステップだ。クラウドの採用をためらっている企業が口にしている不安の1つは、クラウドが“プロプライエタリプラットフォームに縛られつつある”というものだ。今回の提携は、開発者が既存のスキルを用いてクラウドアプリケーションを開発し、さらにクラウドの経済的メリットを生かすことを可能にする。これは明らかに、Salesforce.comが最近発表したVMwareとの提携に似た動きだ。企業がこれらの取り組みをどのように受け入れるのかが注目される。自社のクラウドプラットフォーム向けにビジネスアプリケーションを企業開発者に開発してもらうという競争では、今のところSalesforce.comがリードしている。

 一方、米Forrester Researchのアナリスト、フランク・ギレット氏は、GoogleとVMwareの取り組みが“革新的”であるのに対し、Salesforce.comとVMwareが提携して「VMforce」を開発するという取り組みは“漸進的”であるという。

 「今回のGoogleとVMwareの提携により、Java開発者は本格的なPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)環境を手に入れることになり、このプラットフォームを自前で用意しなくても済む」とギレット氏は指摘する。「しかしIBM、Oracle、SAPがそれぞれのJavaクラウドプラットフォームを出してこないのが不思議だ。VMwareはこれからも、1社か2社のサービスプロバイダーと同様の提携を結ぶのではないかと思う。またOracle、SAP、IBMからは、エンタープライズアプリケーションにフォーカスした多数のクラウド製品が登場するだろう」

 今回のGoogleの動きは、同社がエンタープライズ市場への進出拡大を狙っていることを示すものだ。同社はこの狙いを実現するために、企業がGoogle Apps Marketplace(そして新たに発表されたChrome Web Store)を通じて他社のアプリケーションを購入する、Google Apps for Businessを利用してGoogleから購入する、あるいはGoogle App Engine for Businessを用いて独自にエンタープライズアプリケーションを開発するという選択肢を用意しようとしているのだ。

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