エプソンはフォト複合機の流れを作り出したメーカーだけあって、今年も複合機に注力している。複合機のラインアップは多士済済の様相だが、それに比べてA4ダイレクト/単機能プリンタはシンプルな製品展開だ。A4単機能プリンタの新顔は「PM-G850」のみで、ダイレクト機の「PM-D870」と合わせても2モデルだけとなっている。しかも、この2モデルはプリントエンジンが同一だ。今年2月に投入された顔料8色インクのプロ仕様モデル「PX-G930」はもちろん、昨年発売された顔料4色インクのエントリーモデル「PX-V630」も続投となった。
エンジンが同一なのは、A4プリンタばかりではない。複合機にせよ、A3ノビの新モデル「PM-G4500」にせよ、エンジンの仕様はほぼ共通している。したがって、今冬の新モデルを購入するのであれば、複合機も含め、どの製品を選んでも画質や速度は大きく変わらない。例外として、複合機のPM-A970とPM-T990がさらに高速なエンジンを搭載しているが、ダイレクト/単機能プリンタを選ぶ限りは関係ないことだ。
今冬のエプソン機を検討する場合、ダイレクトプリント機能の有無で選べるのですんなりと決まるだろう。用途や予算に応じて、継続モデルもチェックしてほしい。ただ、顔料インク搭載機の今後の動向は悩みの種といったところか。
エプソンのA4ダイレクト/単機能プリンタラインアップ | ||
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モデル名 | PM-D870 | PM-G850 |
Epson Color | ○ | ○ |
REALOID | ○ | × |
インク | 染料6色 | 染料6色 |
最小インク滴 | 1.5ピコ | 1.5ピコ |
L判最速印刷 | 25秒 | 25秒 |
L判1枚コスト | 21.6円 | 21.6円 |
最大印刷解像度 | 5760×1440dpi | 5760×1440dpi |
液晶モニタ | 3.5インチ | × |
メモリカードリーダ | ○ | × |
PictBridge | ○ | ○ |
赤外線通信 | ○ | × |
CD/DVDレーベル印刷 | ○ | ○ |
2系統給紙 | × | × |
自動両面印刷 | × | × |
価格 | 2万3000円前後 | 1万8000円前後 |
キヤノンのPIXUSプリンタはラインアップに幅を持たせており、4モデルが新規投入されている。ラインアップの内訳は、単機能プリンタがミドルハイの「iP4300」、ミドルローの「iP3300」、エントリーの「iP1700」で構成され、ダイレクトプリンタはハイスペックな「iP6700D」が用意されている。単機能プリンタのハイエンドモデルは昨年の「iP7500」がスライドする格好だ。今では稀有となった7色インクのA4機なので、画質を求める層にはよいだろう。
まずは単機能機だが、ミドルハイのiP4300は顔料4色(CMYBk)+染料1色(Bk)の5色インク構成を採用しており、ビジネスとホビーに使える汎用機として利便性が高い。エンジンは解像度が9600×2400dpi、インク滴は1ピコ/5ピコリットルを打ち分けるタイプで、CD/DVDレーベル印刷もこなす。カラーノズルの長さを従来の2倍にあたる0.43インチにしたことで、一度に多くの面積が印刷可能になった。今年のスタンダードモデルと言えるだろう。
ミッドローのiP3300は、顔料3色(CMY)+染料1色(Bk)の4色インク構成で解像度は4800×2400dpiにとどまる。インク滴が2ピコ/5ピコリットルという旧世代のエンジンを採用しているため、画質はiP4300に少々劣る印象だ。CD/DVDレーベル印刷や自動両面印刷には対応せず、2Way給紙機構はA4/B5/レターサイズ普通紙用のフロントフィーダに簡略化されている。
エントリーモデルのiP1700は、エンジン仕様がまったく異なり、ヘッド一体型のインクカートリッジを採用している。また、2Way給紙やCD/DVDレーベル印刷機能も割愛されている。
ダイレクト機のiP6700Dは、写真画質での付加価値を出すためか、レギュラーインク4色(CMYBk)とフォトインク2色の染料6色構成を採用してきた。フォトシアン(Pc)とフォトマゼンタ(Pm)のインクに1ピコリットルと5ピコリットルのノズルを装備することにより、粒状感の低減と速度の両立を図っている。無論、CD/DVDレーベル印刷や2Way給紙機構も搭載する。
全体的にターゲットが被らず、無難にラインアップをまとめているのはさすがだ。性能と搭載する機能で取捨選択すれば、欲しいモデルが絞り込めるだろう。
キヤノンのA4ダイレクト/単機能プリンタラインアップ | ||||
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モデル名 | iP6700D | iP4300 | iP3300 | iP1700 |
インク | 染料6色 | 染料4色+顔料Bk | 染料4色+顔料Bk | 染料4色+顔料Bk |
最小インク滴 | 1ピコ | 1ピコ | 2ピコ | 2ピコ |
L判最速印刷 | 39秒 | 32秒 | 40秒 | 46秒 |
L判1枚コスト | 23.2円 | 17.5円 | 16.6円 | 25.5円 |
最大印刷解像度 | 9600×2400dpi | 9600×2400dpi | 4800×1200dpi | 4800×1200dpi |
液晶モニタ | 3.5インチ | × | × | × |
メモリカードリーダ | ○ | × | × | × |
PictBridge | ○ | ○ | ○ | × |
赤外線通信 | ○ | × | × | × |
CD/DVDレーベル印刷 | ○ | ○ | × | × |
2Way給紙 | ○ | ○ | △ | × |
自動両面印刷 | ○ | ○ | × | × |
価格 | 3万円前後 | 1万8000円前後 | 1万3000円前後 | 1万円前後 |
日本HPは今年も山のような新モデルを発売した。その総数は、複合機、ダイレクト/単機能プリンタ、コンパクトフォトプリンタを合わせて実に13モデルにも及ぶ。これはラインアップを量販店モデル(ヨドバシカメラとビックカメラで取り扱い)と、直販モデル(HP Directplus)に分けているためだ。A4ダイレクト/単機能プリンタのラインアップは、キヤノンと同じ4モデルを用意している。キヤノンと異なるのは、ダイレクトプリンタが3モデル、単機能プリンタが1モデルと、ダイレクトプリントを重視している点だ。もともと同社は付加機能が売りで、それを強調した製品展開と言える。
ダイレクトプリンタは、上位クラスとして量販店モデルの「D7360」と、直販モデルの「D7160」がある。いずれもSPTエンジンを採用するが、D7360は3.4インチのタッチパネル液晶モニタを搭載することで付加価値を高めている。タッチパネルにより、HP Photosmart Expressの使い勝手が向上している点に注目したい。
エントリーに位置する直販モデルのD5160は、日本HPのモデルでは唯一CD/DVDレーベル印刷機構を搭載した製品だ。プリントエンジンはSPTではなく、旧来の4色/6色インク交換式となる。本機に限らず、4色/6色インク交換式や3色インク機には、AAMが搭載されないので注意してほしい。液晶モニタがモノクロのラインタイプなので、新インタフェースの「HP Photosmart Express」についてはソフトウェアでの対応となる。
一方の単機能プリンタは、エントリークラスの直販専用モデル「D4160」を用意するのみだ。プリントエンジンはSPTではなく、旧来の4色/6色インク交換式を採用する。なお、今年の日本HPでは低価格プリンタのブランド名をHP Deskjetに統一しており、本機もそれに該当する。
日本HPのA4ダイレクト/単機能プリンタラインアップ | ||||
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モデル名 | D7360 | D7160 | D5160 | D4160 |
インク | 染料6色(SPT) | 染料6色(SPT) | 4色/6色交換 | 4色/6色交換 |
最小インク滴 | 5ピコ | 5ピコ | 5ピコ/15ピコ | 5ピコ/15ピコ |
最高印刷速度(モノクロ/カラー) | 32/31ppm | 32/31ppm | 31/24ppm | 30/23ppm |
L判最速印刷 | 11秒 | 11秒 | 22秒 | 21秒 |
L判1枚コスト | 19.5円 | 19.5円 | 23.5円 | 23.5円 |
最大印刷解像度 | 4800×1200dpi | 4800×1200dpi | 4800×1200dpi | 4800×1200dpi |
液晶モニタ | 3.4インチタッチパネル | 2.4インチ | 1ラインLCD(モノクロ) | × |
メモリカードリーダ | ○ | ○ | ○ | × |
PictBridge | ○ | ○ | ○ | × |
赤外線通信 | × | × | × | × |
DVD/CDレーベル印刷 | × | × | ○ | × |
iPod写真プリント | ○ | ○ | ○ | × |
2Way給紙 | ○ | ○ | ○ | × |
自動両面印刷 | 別売 | 別売 | × | × |
販売チャンネル | 量販店 | HP Directplus | HP Directplus | HP Directplus |
価格 | 2万3000円前後 | 1万4910円 | 9870円 | 8820円 |
次回より、エプソン、キヤノン、日本HPが投入したダイレクト/単機能プリンタの最新ラインアップから注目のモデルを取り上げて検証していく。
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