MARCHモデルを特徴付けるのが、付属のオリジナルPCカバーだ。マーチのシートに実際に使われている生地(ジャージ/スエード調トリコット)を、そのまま使ったという凝ったものだ。
舟木 このカバーは当初、企画書には入れていたのですが、PC本体の開発に追われていてわたしたちの中では実現するつもりはなかったんです。でも、日産自動車さんから「アレはどうなったんですか?」と、強いリクエストがあって実現することになりました。
もう1つ、今回のMARCHモデルには購入者に対する特典がある。日産自動車の会員限定サイト「N-Link Shopping Street」にあるNEC Direct特設サイトでMARCHモデルを購入すると、MARCHロゴと“しましま”のデザインをあしらった特製マウスが全員にプレゼントされる。このマウスはMARCHモデルのために用意されたもので、NEC Directでも販売されていない特注品だ。
舟木 このマウスの企画も日産自動車さんからのリクエストによるものでした。そこで、マウスにも“しましま”の世界観に合うようにしたいと、当初はマウス全体を“しましま”にしてデザインや試作をしたのですが、それを日産自動車さんに見せたところ「卵にのりを巻いたお寿司のようだ」と指摘されました(笑)。もっとカッコいいマウスにしたいと、ああでもないこうでもないとやった結果、マーチの“ころん”としたかわいらしさを表現できたと思います。
今回のMARCHモデルはX-TRAILモデルと同様、ユーザーが仕様をカスタマイズできるようになっている。一方、同社が発売しているハローキティモデルはこういったBTOができない。主に同じ女性をターゲットにしたMARCHモデルとハローキティモデルで、カスタマイズの可否の違いについて、舟木氏は次のように語る。
舟木 PCは高いお金を払って買うものなのに、カスタマイズをするのに疲れる、とおっしゃる女性が多いことが調査の結果分かりました。カスタマイズできることがいいというユーザーばかりではないということです。そこで、ハローキティモデルのユーザー層は、そのデザインで買うという方が多いと思い、スペックはこちらでお勧めの構成1つに絞ることにしました。
その一方でMARCHモデルやX-TRAILモデルは、クルマを自分で選んで購入するような方がたに向けたものです。クルマの購入過程には選ぶ項目がたくさんあり、例えばマーチなら色を12色の中から選ぶところから始まります。そこで、これらのモデルはカスタマイズできるようにしました。
こういった選択は、自動車ブランドとのコラボレーションならではの判断だといえよう。PCメーカーであるNECと自動車メーカーの日産自動車という異業種のコラボレーションにより、PCを作るのとはまた違った見方を得られたという。
舟木 日産自動車さんと実際に話してみると、わたしたちとはまた違ったものの見方や考え方を持っていてとても興味深かったです。また、日産自動車さんは多彩なラインアップをそろえていますが、それぞれクルマごとに作り手が思いやこだわりが込められてできています。だからこそ、それぞれのクルマにファンが付くんだろうなと思いました。これからもそういう世界観を壊さずに、それぞれのクルマのファンがカッコいいと思うようなPCを出して行ければと考えています。
12色の“しましま”によってMARCHのかわいらしさを表現したMARCHモデル。マーチのオーナーでなくとも、PCとして新鮮なたたずまいを見せているPCを欲しくなるユーザーも多いことだろう。スペックや性能を抜きにして、その存在感だけで欲しくなるNEC Directのコラボレーションモデルの今後が楽しみだ。
最後にNEC Directのオリジナルモデルの方向性について、舟木氏の“夢”を聞いた。
舟木 わたしが、もともとこのオリジナルPCの担当になるときに上司に言ったのが、「ふだん自分が欲しいと思えるようなPCがない」ということでした。PCといえばとても無機質な感じだったため、女性がPCをファッションや家電の1つとしてとらえて、このデザインだったら欲しいというPCを作りたいと言ったのです。だからこれからもPCは、PCとしてではなく家具や家電の1つとして、欲しくなるようなものにしていきたいですね。そして、いつかはこのクルマとのコラボレーションモデルが出せれば……と、ひそかに思っていたりします。
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