「U2711」実力診断――5万円台で買える2560×1440ドット/広色域の27型ワイド液晶超高解像度IPSパネル、でも安い(1/3 ページ)

» 2010年08月24日 11時45分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]

デルの液晶ディスプレイで特に注目されているモデルとは?

デル「U2711」

 デルといえば、PCにワークステーション、サーバ、周辺機器と手広く扱っている大手直販ベンダーだが、液晶ディスプレイはPC本体と並ぶほど話題になりやすい人気のカテゴリーだ。日本市場においても18.5型から30型まで多数のワイド液晶ディスプレイをラインアップしている。

 人気の理由としては、価格の安さが大きなウェイトを占めるだろう。もともとの価格設定が安価なのだが、さらにデルの直販サイトではキャンペーンなどによる値下げがたびたび行われるため、ハイスペックの液晶ディスプレイが驚くほど安価で購入できることも少なくない。このため、ディスプレイ愛好家にとって、デルのオンラインショップはマメにチェックしておくべきサイトとして知られている。

 その多種多様なモデルの中でも最近、独自性と買い得感が特に高いと評判なのが「U2711」だ。何しろ、2560×1440ドットと超高解像度の27型ワイド液晶パネル(しかもIPS方式で広色域)に、多彩な入力端子を装備しており、豪華絢爛(けんらん)な仕様にもかかわらず、意外に安い。2010年の春先に登場した製品だが、今なお高い人気を誇る。

 2010年8月24日現在、デルのオンラインでの販売価格は9万6273円だが、ここから3万8273円の割引が行われているので、5万8000円と6万円を切る価格で購入できてしまう。注目されないほうが、おかしいというものだ。

ハイエンドシリーズにふさわしい表示仕様

 U2711は、デル製ディスプレイでは上位クラスの「デジタルハイエンドシリーズ」シリーズに位置付けられる。2560×1600ドット表示に対応した30型ワイド画面のハイエンド機「3008WFP」に次ぐ、大画面と高解像度を誇るモデルだ。

 まずは液晶パネルから見ていこう。前記の通り、パネルサイズは27型ワイド(対角596.74×335.66ミリ)と大きく、推奨解像度は2560×1440ドット(WQHD)と、1920×1080ドット(フルHD)の約1.78倍もの高解像度を確保している。画面のアスペクト比は16:9、パネルの表面処理はノングレア、つまり非光沢だ。

 これは「27インチiMac」と同じ画面サイズ/解像度であり、国内で売られている単体の液晶ディスプレイではNECディスプレイソリューションズのカラーマネジメント対応モデル「MultiSync LCD-PA271W」くらいしか採用例がなく、U2711の大きな特徴となっている。

 実際、フルHDやWUXGA(1920×1200ドット)を大きく超える広々とした作業領域が確保されており、Webブラウズをはじめ、静止画や動画の編集、オフィススイート、あるいはこれらを平行して行う作業など、さまざまなシーンで大画面・高解像度のメリットを享受できる。例えば、フルHDの動画を等倍でウィンドウ表示しながら、ほかの作業ができるだけの解像度をシングルディスプレイで確保できるのは爽快(そうかい)だ。

 輝度とコントラストはデルの液晶ディスプレイらしく高い。公称で輝度は350カンデラ/平方メートル(標準)、コントラスト比は1000:1(標準)となっており、ダイナミックコントラスト比は最大8万:1をうたう。輝度とコントラストはどちらも調整の幅が広く取られているので、環境に応じて適宜調整すれば、問題なく使用できるだろう。

 IPSパネルということで、視野角は上下/左右とも各178度と広く、画面を上下/左右から斜めに見ても、色度の変位が抑えられている。スペックの値だけではない「ホンモノ」の広視野角だ。応答速度はグレーからグレーの中間階調域で6ms、黒→白→黒で12msとなっており、最近の液晶ディスプレイにしては速くないほうだが、IPSパネルは応答速度を高速化しにくい構造なので、この値に不満はない。

 広色域の表示をこなすのも魅力だ。NTSC比はCIE1976で110%(CIE1931では102%)、Adobe RGBカバー率は96%、sRGBカバー率は100%とされている。画質モードとして広色域のAdobe RGBモードや、それより色域が狭いsRGBモードが用意されており、モードを切り替えるだけで、任意の色空間による表示が可能だ。バックライトは広色域タイプのCCFL(冷陰極蛍光ランプ)を採用する。

 RGB各色12ビットの内部ガンマ処理をサポートし、最大表示色はRGB各色10ビットの約10億7000万色となる。ただし、現時点で10ビット表示を行うには対応するグラフィックスカード(DisplayPort接続)や限定されたソフトウェア環境が必須で、まだまだ普及の段階には遠い。通常、WindowsやMacで画面表示を行う場合はほかのディスプレイと同様、各色8ビット表示の約1677万色だが、12ビットの内部ガンマ処理のおかげで階調の滑らかさには期待できる(実際の画質の評価は後述)。

広色域のIPSパネルを採用。画面を斜めに振っても、コントラストや色度が変化しにくいのは大画面パネル搭載機にとって有利に働く

 品質面へのこだわりも特筆したい。U2711では画質を高めつつ、個体差を抑えるため、工場内でAdobe RGBモードとsRGBモードを個別に調整しており、出荷時に色補正が完了済みであることを示す証明書が製品に添付される。こうした個別の色調整はカラーマネジメント対応の高級機によく見られる仕様だが、出荷時のコストがかかるため、汎用の液晶ディスプレイで採用される例は非常に少ない。また、1カ所でも輝点のドット抜けが発見された場合は、ディスプレイを無償で交換できる3年間の「プレミアムパネル保証」も標準で付与されている。

可動範囲の広いスタンドを装備

 次はボディデザインや操作性を見ていこう。ボディサイズは646.71(幅)×199.95(奥行き)×427.83(高さ)ミリ、重量は約7.72キロだ。横に長い27型ワイド液晶パネルを搭載するため、横幅は取るが、奥行きは20センチ以内に収まっており、直線的で無駄がないボディデザインと相まって、設置性に不満はない。

 スタンドはシンプルな外観ながら、上21度/下4度のチルト、左右で各40度のスイベル、約90ミリ範囲の昇降といった画面位置の柔軟な調整が可能だ。画面を90度回転させての縦位置表示はサポートしないが、スタンドを外せば、VESA規格(100ミリピッチ)準拠のフレキシブルアームなどを装着することもできる。

 スタンドの台座は角型で大振りだが、スイベル用のターンテーブルを裏面ではなく、ネック部分の付け根に配置しているため、液晶ディスプレイ部を左右に振っても台座部分が動かず、周囲のケーブルなどを巻き込む心配はない。最も画面を下げた状態では、設置面から約50ミリの位置に液晶ディスプレイ部の下端が位置する。画面サイズが大きいにも関わらず、昇降などの動作はスムーズで、なかなか使い勝手がよい。

直線的なボディデザインを採用し、側面と背面もシンプルな外観にまとめている。スタンドはチルト、スイベル、高さの調整が可能だ

豊富な入力端子にUSBハブ、カードリーダーまで搭載

 もう1つの特徴である豊富な入力端子は、液晶ディスプレイ部の背面に下向きで並んでいる。2系統のDVI-D(HDCP対応)やアナログD-Sub、HDMI 1.3、DisplayPort、コンポーネントビデオ、コンポジットビデオ、別売の増設スピーカー(サウンドバー)用電源と音声出力、USB 2.0アップストリームポート、2基のUSB 2.0ダウンストリームポートといった内容だ。さらに、手を伸ばしやすい左側面には2基のUSB 2.0ダウンストリームポートと、8in1メディアカードリーダーを備える。スピーカーは内蔵されていない。

 なお、液晶パネル解像度の2560×1440ドットで表示するにはデュアルリンクDVI-DもしくはDisplayPortでの接続が必要だ。アナログD-Sub接続時は最大2048×1152ドット、HDMI/コンポーネントビデオ接続時は最大1920×1080ドット(1080p)が表示できる解像度の上限となる。製品には電源、デュアルリンクDVI-D、DisplayPort、アナログD-Subの各ケーブルが付属する。

主要な端子類は液晶ディスプレイ部の背面に装備している。電源ユニットも内蔵する
左側面に2基のUSB 2.0ダウンストリームポートと8in1メディアカードリーダーを備える

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