iPad/iPhoneに代表されるタブレットやスマートフォンの普及、それに伴う電子書籍市場の台頭により、電子化された文書をいつでもどこでも手軽に見られることは、もはや当たり前になった。こうしたスマートデバイスが日常に溶け込むことで、何年も前から叫ばれていた割にあまり受け入れられてこなかった「ペーパーレス化」が、ビジネスでもホームでも一気に進もうとしている。
当然、ペーパーレス化に欠かせないツールであるドキュメントスキャナの市場も急成長しており、個人で購入するような低価格帯のモデルも、ここ数年でかなり充実してきた。個人用のドキュメントスキャナといえば、いわゆる「自炊」に向いた卓上タイプが主流だが、場所を選ばず利用できる小型軽量のモバイルタイプも選択肢が増えつつある。
今回取り上げるエプソンの「DS-30」は、そんなモバイルスキャナの新顔だ。意外に思うかもしれないが、同社がモバイルスキャナを投入するのは、このDS-30が初めてとなる。デジタルフォト分野ではフラットベッド型の「カラリオスキャナ」が昔から高評価を得てきた同社だが、今後はドキュメントスキャナにも注力していくという。
DS-30は、主にクラウドや携帯端末でスキャンデータを活用するユーザーを想定した製品だ。約325グラムの軽量ボディが最大の特徴で、シートフィードスキャン対応のスキャナとしては非常に軽い。実際に重量を実測したところ、320グラムと公称値よりわずかに軽かった。
ちなみに2012年5月15日の発表時では、シートフィードスキャン対応のA4モバイルスキャナとしてクラス最軽量(エプソン調べ)をうたっていたが、ブラザーが7月4日に約315グラムの「MDS-600」を発表しており、最軽量の座は譲っている。とはいえ、わずか10グラムの差なので、持ち運びで重さの差を感じることはないだろう。
本体サイズは276(幅)×50(奥行き)×36.5(高さ)ミリとコンパクト。スティック型のボディは一般的な折りたたみ傘と同じくらいの大きさだ。横幅がA4の長辺(297ミリ)より短いため、さまざまなバッグに無理なく収まる。本体とUSBケーブルを収納できるキャリングポーチが付属するのはありがたい。また、高さも36.5ミリに抑えられており、デスクの引き出しやちょっとしたすき間にしまっておくにも好都合だ。
ボディカラーはブラックで統一されており、天面のみ光沢仕上げとなっている。光沢仕上げと聞くと、指紋が付きやすいと思うかもしれないが、表面に細かなドットを敷き詰めているので、指紋が付きにくく、ザラザラとした手触りで滑りにくい。この光沢+ドットという表面仕上げは、同社のインクジェット複合機にも採用されており、光沢感と扱いやすさの両立を図っている。
PCとはUSB(Hi-Speed USB)で接続し、USBバスパワー(DC 5ボルト)で電源も供給する仕組みだ。ACアダプタや電源補助用の二股USBケーブルなどは付属しない。電源ボタンはなく、PCとUSBで接続すると自動的に電源がオンになる。対応OSはWindows XP/Vista/7、Mac OS X 10.4.11以降だ。
セットアップは、付属のソフトウェアCD-ROMでドライバやアプリケーションをPCに導入してから、本体とPCをUSBで接続して利用するという流れになる。これはDS-30に限った話ではないが、昨今はMacBook AirやUltrabookなど、光学ドライブがないPCが増えているので、そろそろCD-ROM以外でソフトウェアを付属してほしいところだ。
ADFは手差しで1枚ずつ給紙する片面読み取りタイプを採用。原稿の読み取り面を下向きにして、前面の給紙口にセットすると、原稿の先端がローラーに少し引き込まれた状態で止まるので、後は天面のスキャンボタンを押せば、あらかじめソフトウェアで設定しておいた内容(詳しくは後述)でスキャンが行える。利用時には本体の前後にスキャンする原稿を移動させるためのスペースが必要だ。給紙や排紙のトレイはなく、手差しした原稿はスキャン後に本体後方へ自然落下する。
スキャン可能な最大原稿サイズはA4、USレターサイズ、リーガルで、有効領域は216×356ミリ。原稿を前面から背面にほぼ直線で移動させるストレートパスを採用しているため、厚さ1.2ミリ以下のプラスチックカードもスキャンできる。また、オプションのキャリアシート「DSCST1」を使えば、傷がつきやすい原稿や破けた原稿、切り抜き原稿などを読み取ることも可能だ(原稿は厚さ0.3ミリまで対応)。
一方、長尺の原稿には対応せず、A3原稿を真ん中から折ってスキャン後に画像合成するような機能は備えていない。ボディ内部にアクセスするための開閉機構はなく、紙詰まりの際には原稿を前後から抜き取って対応する。
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