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» 2013年05月14日 12時00分 UPDATE

本田雅一のクロスオーバーデジタル:「dynabook KIRA V832」は“8”以降のWindowsを変えるか? (1/3)

今最も旬なノートPCといえば、東芝のUltrabook「dynabook KIRA V832」だろう。2560×1440ドットの13.3型ワイド液晶を搭載し、ついにWindows PCで“Retina級”の超高精細ディスプレイを実現した。しかし、Windows 8はその魅力を最大限に引き出しているのだろうか。

[本田雅一,ITmedia]

ようやく登場した“Retina級”のWindows PC

tm_1305_kira_01.jpg 東芝のUltrabook「dynabook KIRA V832」は、2560×1440ドットという高解像度の13.3型ワイド液晶ディスプレイが特長だ

 このところ「dynabook KIRA V832」のレビューが、PC系メディアを席巻しており、少しばかり食傷気味という方もいるのではないだろうか。

 それもそのはずで、2560×1440ドットの13.3型ワイド液晶ディスプレイは、“Windows PCとしては”異例の高画素密度である。エクスキューズが必要な理由は、もちろん高解像度ディスプレイを搭載したパソコンとして、誰もがアップルの「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」を真っ先に想起するほど、Mac OS Xのほうが高解像度対応が進んでいることである。

 実際、13.3型モデルで比較すると、横方向の画素数は同じ。縦方向だけ(画面のアスペクト比が異なる関係上)V832が低くなっているぐらいしか、ディスプレイのスペックは違わない(MacBook Pro RetinaディスプレイモデルはIPS液晶、V832はVA液晶という違いがある)。しかし、似ているのはそこまでで、高精細ディスプレイの生かし方は異なる。

 なぜWindows PCに、MacのようなRetinaディスプレイのラインアップがこれまで登場しなかったのかを復習しつつ、V832がWindowsの問題に対してどのように向き合っているのか。マイクロソフトが次期Windowsで対応を検討すべき問題なども考えていきたい。

まずはV832のインプレッションから

 東芝は「KIRA」というブランドを下位モデルの「dynabook KIRA V632」でも使うそうで、そうなると「V832」と型名で呼ばねばならない。どうせなら、V832のディスプレイ面でのユニークさを生かし、KIRAという名をdynabookの中でも特別な製品だけに付けるビジネスブランドとして定着させればいいのに……という筆者の考えは、余計なお世話かもしれない。

 それはともかく、まずは簡単にV832のインプレッションについて触れておきたい。

 大まかに言えば、V632とV832は、同じ設計プラットフォームを使った兄弟機種で、大容量バッテリーを生かして長時間駆動をこなせるのがV632、同じバッテリーを搭載することで高精細ディスプレイを装備してもUltrabookらしい駆動時間を確保しているのがV832と考えればいい……と思うが、さらにV832には10ポイント対応のマルチタッチ対応タッチパネルが搭載されている点も異なる。なお、両者の厚みがちょっとばかり違うのは、主にタッチパネルの搭載によるものだ。

tm_1305_kira_02.jpg 左がV832で厚さ9.5〜19.8ミリ、重さ約1.35キロ。右がV632で厚さ7.6〜17.9ミリ、重さ約1.21キロ。V832はタッチパネル付きの高解像度ディスプレイを搭載するぶん、厚さと重量が少し増している

tm_1305_kira_03.jpg 液晶ディスプレイは高解像度に目を奪われがちだが、発色が適切でホワイトバランスに統一感があることも評価できる

 もちろん、高精細に違いないが、パッと見て最初に感じたのは、発色が適切なこと。ユニフォミティ(画面の均一性)に関しては、やや画面端の方での乱れはある。これは組み立て工程上、若干、パネルを抑える形になっているためだろう。しかし、白やグレー、黒の単色を表示しているとき以外、ムラはほとんど気にならない。

 それよりも、発色の派手さにとらわれることなく適切な色域で写真が表示され、ホワイトバランスに統一感があることのほうがより重要だ。聞けばきちんと出荷時に検査を行い、RGBの各ガンマカーブを近づけるよう調整を行っているという。セルフキャリブレーションなどの機能が入っているわけではないが、これだけまともな発色をしてくれるならば満足だ(と思ったら、この辺りはフォトグラファーの矢野氏がリポートしているので、そちらを参照していただきたい)。

 矢野氏も指摘しているように、この高精細さと発色の“まともさ”(言い換えれば、派手な表示のPCは少なくないが、まともな発色のPCは実はそう多くない)は、デジタル写真を楽しむのにピッタリである。

tm_1305_kira_04.jpg 天板はヘアライン加工のアルミニウムを思わせるが、実はマグネシウム合金のプレス加工で剛性と質感を両立している

 筐体は東芝が得意とするバスタブ構造だが、質感、剛性の高さとともに、美しさにも注目したい。質感の高い仕上げにすることが難しいマグネシウム合金で、まるでアルミヘアラインのような美しさを出しているのだから驚く。V632と共通のキーボードも、ストローク、タッチともに秀逸だ。

 意外にもスピーカーの設計(および音響補正)がよく、薄型のモバイルノートにもかかわらず、人の声を含めた音が聴き取りやすいことも特筆しておきたい。本機の内蔵スピーカーで音楽を楽しむことが少なかったとしても、今どき何らかの動画を見ることはあるだろう。歪み(ひずみ)感が少なく中域がしっかりと表現できているので、聴き疲れしないきちんとした音だ。

 筆者がやや気になったのは、液晶ディスプレイの前面ガラスに低反射コートがされていない(あるいは効果が低い)ことと、キーボードの縦方向が相変わらず詰まっていること、この2点ぐらいだ。後はスペックで自分向きか否かを判断できる範囲内である。

 せっかくここまでキータッチをよくしているのだから、もう少し縦方向のキーピッチを確保できないものかと思うが、液晶ディスプレイのヒンジ近くにはヒートシンクがあり、手前はタッチパッドで占領されている。キーボードの縦方向を確保するには、アスペクト比16:9の液晶を16:10にするほかないのかもしれない(が、Windows 8は16:9の液晶を前提に画面設計がなされている)。

tm_1305_kira_05.jpgtm_1305_kira_06.jpg キーボードは横方向のキーピッチが約19ミリあるのに対して、縦方向がわずかに狭い(写真=左)。底面の左右にはハーマン・インターナショナルと共同開発した「harman/kardonスピーカー」を内蔵し、音質調整ソフトウェア「dts Studio Sound」も用意している

 とはいえ、どちらかというと仕事道具に徹しているイメージのあるdynabookが、ここまで色気のある商品を出してきたというのだから、その点は大いに評価したい。それにV832の最大の売りである高解像度液晶に関しては、東芝側でできる限りその精細度を生かせるよう工夫が施されている。

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