低価格化と高性能化の2極化が進むタブレットだが、このうち高機能製品は、“Retina”に代表される高画素密度、高性能化を加速している。このトレンドは6月4日〜8日まで台湾・台北市で開催されたCOMPUTEX TAIPEI 2013でも確認することができた。そして、このトレンドが、Intelのモバイルプロセッサ戦略を大きく後押しすることになるかもしれない。
Intel製SoC(System on-a-Chip)は、競合するARMコアを採用するSoCと比べて省電力性に劣るというのが、一般的な市場の認識だ。しかし、その認識は誤りであると、同社は報道関係者に対して現行製品の消費電力を比較してみせた。
同社は、Intelの現行タブレット向けSoC「Atom Z2760」(1.8GHz/開発コード名:Clover Trail)を搭載した10.1型(1366×768ドット)IPSパネル採用のWindows 8タブレットであるAcerの「Iconia W510」と、ほぼ同等のスペックを持ち、QualcommのSnapdragon S4(1.5GHz)を採用したDellのWindows RTタブレット「XPS 10」の総消費電力や、CPUとGPUそれぞれの消費電力を比較。プラットフォーム全体の消費電力は、Windowsのアイドル状態ではどちらも約2.8ワットとほぼ同等ながら、AngryBirdプレイ時は、Qualcomm Snapdragon S4を搭載したXPS 10の消費電力が約4.7ワットとなるの対し、CloverTrailベースのIconia W510の消費電力は約3.7ワットと、Intelプラットフォームのほうが低くなることを示した。
ただし、これを細かく分析すると、
と、CPUコアとGPUコアの消費電力だけを見比べれば、ARMベースのほうが依然として省電力であることが分かる。しかし、プラットフォームレベルでは大きな差が生じたということは、それ以外の機能のパワーマネジメントで、CloverTrailプラットフォームにアドバンテージがあることが見て取れる。
ただし、これらのテストは、あくまでもアプリケーションベースのもので、CPUとGPUをフルパワーで動作させているわけではないことは理解しておく必要があるだろう。
同社はさらに最新ARMコアのCortex-A15をデュアルコア構成で搭載している「Nexus 10」の消費電力もモニタリングしてみせた。
Nexus 10では、同社はCPUベンチマークのCoreMarkと、グラフィックスベンチマークのGLBenchmarkの両方を走らせ、CPUとグラフィックスコアに最大限の負荷をかけ、その消費電力を計測。これによれば、Coretex A15コアはそれぞれ約2ワット、デュアルコアで4ワットを消費し、同SoCに搭載されているMali T604グラフィックスコアは約3.5ワットの電力を消費するなど、従来のARMベースSoCよりもパワフルになっていることが分かる。
しかし、CoreMarkとGLBenchmarkを同時実行させてみると、筐体設計の制約によってSoCの動作温度を一定レベルに保つことが難しく、SoCの温度が高くなりすぎ、CPUの消費電力が繰り返し大きく変動するようになり、10型タブレット筐体では、継続的にフルパフォーマンスを発揮できない可能性が大きいことが分かる。
Intelが、このような計測結果を公開したのは、同社の次期SoC「Bay Trail-T」に絶対の自信を持っているからだ。
同SoCではアーキテクチャを大きく変更し、最先端の22ナノメートルプロセスで製造する新CPUコア“Silvermont”(開発コード名)を採用する。同社によれば、Silvermontでは、現行のCPUコアの5分の1の消費電力、または3倍の性能向上を果たしており、同コアを採用するタブレット向けSoCでは、クアッドコア構成で2倍の性能とオールデイバッテリーライフ(8時間以上の駆動時間)を実現していると説明する。
さらにグラフィックスは第3世代Coreプロセッサ(開発コード名:Ivy Bridge)と同世代のIntelグラフィックスが採用され、2倍以上の性能アップを果たすとされる。同社は、Bay Trail-Tを搭載するタブレットのリファレンスモデルを披露し、2013年末には搭載製品が主要パートナーから投入できるよう、開発が順調に進んでいることをアピールした。
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