「VAIO Duo 13」を“徹底解剖”したらPCの未来が見えてきたVAIO完全分解&開発秘話(後編)(2/7 ページ)

» 2013年10月04日 12時00分 公開

隠れたこだわりポイントのステレオスピーカー

 バッテリーを取り外すと、バッテリーの下に隠れていたステレオスピーカーが露出する。スピーカーの開口部は底面の手前側(パームレストの先端に向かって斜めにカットした部分)にあるが、薄いボックス型のスピーカーはバッテリーの手前だけでなく、左右の細いスペースも生かして可能な限り容積を取るようL字型に作り込まれているのが分かる。VAIO Duo 11も音質に配慮した設計だったが、それより大きなスピーカーだ。

取り外したステレオスピーカー(写真=左)。スピーカーは底面の手前側に内蔵されているが、先を絞って浮かせたデザインになっているので、設置面がスピーカーをふさいでしまうことはない(写真=右)

 ソニーのAV機器で定評のあるフルデジタルアンプ技術「S-Master」の専用回路を搭載し、ソニーおすすめの音質に設定できる「Clear Audio+」モード、各種音響効果(CLEAR PHASE、xLOUD、S-FORCE Front Surround 3D、VPT)に対応するなど、音質へのこだわりは健在だ。

 音質について笠井氏は「VAIO Duo 13の隠れたポイントが音質。VAIO Duo 11もサイズの割によい音だったが、VAIO Duo 13はそれを上回り、薄型ノートPCで苦手な低音もしっかり出る。S-MasterやClear Audio+の採用など、ハードウェアとソフトウェアの両面で全体的にオーディオに注力しているので、音楽コンテンツも是非聴いていただきたい」とアピールする。

 なお、VAIO Duo 11で用意していたノイズキャンセリングヘッドフォン(有線タイプ)は省かれているが、「ヘッドフォンの好みは人それぞれで、有線の純正ヘッドフォンが不要という方も少なくない。例えば、タブレットモードで使う場合はワイヤレスヘッドフォンと組み合わせる、騒音が気になる場所ではノイズキャンセリングを利用するなど、好みや用途に応じて選択していただくほうがベターだと考えた」(笠井氏)との回答だ。

ソニーの超高密度実装技術が可能にした複雑な基板部

 次はいよいよVAIO Duo 13の本丸である基板部を分解していく。基板部は複数のボードが組み合わされており、それぞれネジを外すことで分離できる。

 VAIO Duo 13に使われている基板は計17枚(ワイヤレスWANモデルの場合)と多く、笠井氏は「我々は他社に比べて2〜3倍の基板の種類を持ち、これがハイパフォーマンスモバイルを実現できる理由の1つになっている」と胸を張る。

 本体側に搭載されている主な基板だけでも、CPU、オンボードメモリ、2基のUSB 3.0、HDMI出力、電源端子を実装した「メインボード」、M.2ソケット(無線LAN/Bluetoothコンボモジュール用)とS-Masterの回路、音声入出力端子、センサー類(加速度、ジャイロ、地磁気)を備えた「サブボード」、M.2仕様の「SSDモジュール」(長さ80ミリ)と「無線LANモジュール」(長さ30ミリ)、メモリカードスロットを載せた「サブボート」、アウトカメラ用の「サブボード」、M.2ソケット(SSD用)の「サブボード」、その他インタフェースを中継する基板群などに分かれている。

 さらにワイヤレスWANモデルでは、液晶ディスプレイの裏側にMicro SIMスロットやM.2ソケットを装備した「サブボード」、M.2仕様の「ワイヤレスWANモジュール」(長さ30ミリ)も配置しており、全体的にかなり複雑な構造だ。

開発用のスケルトンモデル。本体側の上部にメインボードをはじめ、小さな基板類を敷き詰めているほか、液晶ディスプレイの裏側にワイヤレスWAN用のサブボードも内蔵している

 昨今のUltrabookはボディの底面積より薄さを優先し、実装密度がさほど高くない横長で大きなメインボード上に、CPUや主要チップ類、端子類を厚みが出ないよう無理なく並べて置いた、シンプルな内部構造のものが多い。しかし、VAIO Duo 13は細かく基板を分け、それらを複雑に組み合わせるという難度の高い設計を行っている。

 この内部構造について土田氏は、「VAIO Duo 13は中央にスライド機構のヒンジを配置したうえ、側面を大きく斜めにカットして薄型化しているため、基板部に割ける面積が同じ画面サイズの通常のPCに対して約60%しかない。そこで平面上に基板やパーツ類を敷き詰めるような2次元的な考え方では、必要な回路が全部載らないため、部分的に基板を重ねて配置するなど、高さ方向も無駄なく使い切る3次元的な考え方で作り上げた結果、このような特殊な構造になった」と説明する。

本体後方の厚みを生かし、メインボードと小さなサブボードを重ねて配置する「2階建て」の構造とした。2枚の基板はフレキシブルケーブルを折り曲げて接続している

 特に目を引くのは、M.2ソケットや音声入出力端子が備わったサブボードとメインボードを重ねた、「2階建て」の構造だ。これら2枚の基板はフレキシブルケーブルを折り曲げて接続しており、ヒートシンクの装着で厚みが出るCPUの横にできた隙間を活用したレイアウトになっている。また、USBやHDMI端子はメインボードの端をくり抜いて埋め込むことで実装面積と高さも抑えた。この2階建ての基板部は、実装したパーツも含めて厚さが最大9.15ミリとなる。

 小型のメインボードは、両面実装の2段ビルドアップ10層基板を採用。基板の小型化にはもちろん、CPUのダイとチップセットのダイを1つのパッケージにまとめて実装した第4世代Core Uシリーズの影響も大きい。VAIO Duo 11が採用する第3世代Core(開発コード名:Ivy Bridge)のUシリーズは2チップ構成だったため、これに比べて省スペース化が容易になっている。

 とはいえ、オンボードメモリや端子類を備えたメインボードでこの小ささは驚きだ。その秘密はやはりソニーならではの独自設計にあるという。

 笠井氏は「インテルが提供する基板のリファレンスデザインに頼らず、我々が培ってきた技術を生かし、インテルとコミュニケーションを取りながらスペックを厳しいレベルで突き詰めた。こうした部分は他社ではマネできないはず。私はもともと基板設計担当なので、ソニーが唯一イチから作れる基板には最もこだわっており、今回も超高密度設計を追求した。PC基板の小型化では、我々が世界一という自負がある」と、基板部に並々ならぬ自信を見せる。

メインボードを取り外して、フレキシブルケーブルでつながれたサブ基板を広げた状態。非常に小さなメインボードの表面には、CPUやオンボードメモリを搭載している。2基のUSB 3.0やHDMI端子はメインボードの端をくり抜いて埋め込むことで、実装面積と高さを抑えた
メインボードの裏面にもオンボードメモリを実装。サブボードには、M.2ソケット(無線LAN/Bluetoothコンボモジュール用)とS-Masterの回路、音声入出力端子、センサー類(加速度、ジャイロ、地磁気)を備えている

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