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» 2014年07月02日 15時15分 UPDATE

勝色で勝つ:PCはなくならない。240人で作る“本当のVAIO”の形――関取社長の記者会見・全文書き起こし

さまざまな話題を集めた7月1日のVAIO株式会社の発表会だが、関取社長が伝えたかったことは何か。同氏が語った会見の模様を全文書き起こしでお届けする。

[田中宏昌,ITmedia]

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「自由だ。変えよう。」の新聞広告

 みなさん、こんにちは。VAIO株式会社の関取高行でございます。

 本日は大変お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。ソニー株式会社がPC事業の譲渡を決定し、そしてVAIO株式会社の概要を皆さんにお知らせしてから、ほぼ2カ月がたちました。ようやく、この設立会見に臨むこととなります。

 先ほど、スクリーンに最初に出ていたかと思いますが、本日の新聞広告をご覧になった方もいらっしゃると思います。おかげさまで我々はようやくスタートラインに立てました。本日は私たちがどのような会社になっていきたいのか(小さな会社ですが)、そしてVAIOという商品をどんな哲学を持って皆さんにお届けしていくのか、少しでもご理解をいただければと思っています。短い時間ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。

ht_VAI00.jpg 関取高行代表取締役社長

 まず簡単に、私自身の略歴をお話ししたいと思います。私は1984年にソニー株式会社に入社して、さまざまなエレクトロニクスビジネス、エレクトロニクス商品、事業体に触れて参りました。VAIO事業に関しましては、2003年から2006年までVAIO事業本部の経営企画部門を担当していろいろな経営改革に当たって参りました。

 また、2009年から最近まではVAIO事業を含むコンスーマー&ネットワークサービスグループの企画戦略部門の責任者を勤めたり、最後の方はソニー本社の方でいろんな役職を勤めて参りました。そして、心機一転、この度VAIO株式会社の代表取締役に就任することになりました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

ht_VAI01.jpg 7月1日の新聞に掲載された広告

我々のフィロソフィーは「本質+α」だ

 さて、発足に当たり私たちが考えたコンセプトは、PCの本質を追求する、追求し続けるんだと言うことです。この具体的なお話をさせていただく前に、本質ということについて少し触れさせていただきたいと思います。

 ここ(会場のスクリーン)にも出ていますけれども、本質とは「ものごとの本来の性質や姿。それなしには、その物が存在し得ない性質、要素」(大辞林)とあります。まさにその意味の通り、私たちはPCの本質に正面から向き合う、真摯(しんし)に向き合うことだ、それを追求することが私たちの使命だと考えてスタートいたします。

ht_VAI03.jpg 三省堂が発行する大辞林からの引用

 ではなぜ、今PCの本質を追究することが重要なのでしょうかと考えてみました。ご存知のように今までPCで行ってきた作業のうち、Webを閲覧するですとか、メールのやりとりですとか、ちょっとしたコミュニケーションですとか、そういうやりとりはタブレットやスマートフォンで日常的に行うことが多くなってきていると思います。

 しかしながら、真剣に向き合う作業、生産性を上げていく作業、これから何かを生み出す作業、皆さんもその方たちだと思いますけれども、それはある意味PCの領域ではないかと我々は考えています。ここにいらっしゃる皆さんもご自分の手元からPCがなくなるということは考えづらいのではないかと思います。もっと強い言い方ですが、私はPCはなくならないだろうという強い信念を持っています。昔、私はWALKMANを担当していました。テープはなくなりましたけれども、今テープを使う人はまずいないと思いますが、PCはなくならない。PCは必要な道具であるという信念を持っています。

 PCを取り巻く環境は成熟期に入ったと思います。しかし、成熟した商品を冷静に見たとき、PCは道具としての真価が問われ始めている。もう一回見直さないといけないと思っています。道具に何を求めるか、それはその道具の本質的機能、性能だと思います。

 ちょっと例が違ってきますけど、包丁、包丁という言い方がいいか分かりませんが、やはり切れることが本質的機能であり性能でしょうし、掃除機であればやっぱりゴミをきちっと吸い取ること、これが本質的機能、性能だというふうに思います。

 VAIOはもう一度、今ユーザーが本当に求めているPCの本質を真剣に見極め突き詰めていきたいと考えています。ここに「本質+α」とありますが、PCの本質を追究するこの姿勢を貫いて商品作りを行うことによって、VAIOはお客さまに対して付加価値を見いだす商品となり得ます。

 その考え方を体現した会社のフィロソフィー、商品作りのフィロソフィー、行動のフィロソフィーが本質+αです。具体的にこの本質+αを紹介します。

ht_VAI04.jpg フィロソフィーは「本質+α」

 まず一つ目は、まさに本質を追究すると言うこと。長野県安曇野の技術と精神を土台に、本当に必要な性能と機能を持った製品を作ります。決して簡単な作業ではございません。でもやります。

 二つ目は制約に縛られないこと。小さなメーカーだからこそ、しがらみや思い込みや固定観念、PCの固定観念、ビジネスの固定観念に左右されないようにリセットしてやっていきたいと思っています。

 そして最後に、忘れてはならない培った養ったVAIOのDNAをきちっと継承すること。それは言い換えれば人の気持ちに突き刺さる一点突破の発想、VAIOならではの審美眼に基づいたお客さまに配慮した物作りをもっともっとさらに。そういった物作りを続けていきたいと思います。

 この3つのポイントをですね、本質+αという言葉に収れんさせて、我々の哲学として新会社をスタートさせて参ります。

まず、今やらないことを決めよう

 それでは、本日スタートを切ったVAIO株式会社について、組織、設計製造、商品、販路という4つに分けて順にどのように本質を追究していくか、+αを追求するかという話をさせていただきたいと思います。どのカテゴリーにおいても、本質+αは共通の立ち位置です。

ht_VAI05.jpg 本質+αはすべてに貫かれている

 では、組織についてご説明申し上げます。

 本質を追究する上で必要な組織、それは集中して物事が決められ、早くて変化に強い組織だと思います。今この時代、戦略をほしいと戦略を立てて、私も戦略を立てましたがそれでうまくいった試しはほぼなかったように思います。やはり戦略を立てるのも大事だが、そこが変わったときにどう変化に対応できるか、そのスピードと組織、マインドセットをそういうことを大事にしたいと思っています。

 先日、全社員を集めてワークショップを開催したのですが、まず今やらないことを決めよう、そこから見えたやることだけに集中していこう、そこに磨きをかけていこうという行動論を徹底していきます。それこそが実はスピードが上がって変化に対応できる、お客様に直にふれられる哲学だと方法論だと思っています。

 ソニー時代、1000人以上いやグローバルを入れたらもっとですね。その人間が携わっていた非常に大きなVAIO事業でした。我々は社員数240人という小さな会社になりました。だからこそ、今まであったしがらみや思い込みから解放されて、全ての面で思い切りの良い選択と集中ができると思います。やらなければいけない私の責任だと思っています。

 この規模なら、社員一人一人がコミュニケーションできますし、その思いを形にできると思っています。そして、よく起こりがちなんですが、組織と組織のコミュニケーションではなく人と人、それから現場と現場、それから現場とお客さま、市場など、建設的に意見を戦わせることで物事の本質が本当に見えてくるのではないかと思います。本質本質とただ騒いでいてもそれはなかなかできません。そして、それをみんなで考えることでアッと驚くようなそのとがった、本質の中からとがった+αが見えてくる、見つけ出していく、本当のVAIOの形にできると信じています。

ht_VAI06.jpg VAIO株式会社は240名の社員で構成される

我々の決意を示す「安曇野FINISH」

 次にオペレーション、設計製造についてご説明します。本社は長野県の安曇野市に置きます。長年にわたって、VAIOの特に皆さんがお使いの薄くて軽いとがった商品を作ってきた安曇野工場を本社に据えます。一方、東京オフィスにはマーケティング等の機能を持たせます。それからもう1つ大事なのは、この小さなオフィスですが東京オフィスを活用して、開発のメンバーもいわゆる製造のメンバーも積極的に市場に近いところに出てお客さまの声を拾っていきたいというふうにしたいと考えています。

ht_VAI07.jpg ソニー時代にVAIOの工場があった安曇野が本拠地だ

 さて、ここ(会場のスクリーン)にいくつかの写真、これは実はプロのカメラマンではなくて製造のある方が本当に何万枚というファイルを持っているのですけれども、プロよりもうまいと思っています。ご存じの方も多いと思いますが、安曇野は美しい日本の原風景を残した町でございます。そこには、改めて思いますがピュアでひたむきな開発者、技術者、生産メンバーが自分たちの意志で残ってくれています。ここに本拠を据えて物作りを行います。

ht_VAI08.jpg 製造メンバーが撮影した安曇野の風景

 我々が培ってきた安曇野での製造設計一体となった物作りについて、少しご説明させていただきたいと思います。この図にありますように、順番に物事を進めていくのではなく、実は一番最初の商品企画の段階から設計、製造、企画、営業まで含めた全メンバーが最初の段階から参加することで高度な物作り、すりあわせですよ。図面でやるのではなく、皆で話してすりあわせた高度な物作りができる。これを養っていきましょう、さらに磨きをかける。

ht_VAI09.jpg 設計製造が一体だからこそ実現できる「安曇野FINISH」

 また、ODMを活用させていただきますが、ODMを含めすべてのモデルを今回は安曇野工場で最終的に仕上げを行って完成させ品質確認を行う。これを「安曇野FINISH」という言葉に、標語にして徹底的に追求していきたいと思う。これも本気で物作りの本質を追求するという私たちの決意の表れと取っていただければと思います。

本質を突き詰めたPC、一点突破の発想と審美眼を併せ持つ

 続いて、商品についてご紹介したいと思います。

 まずVAIOが目指すのはお客さまの心に満足を与える配慮や美しさを加えた商品を作ることは変わりませんし追求して参ります。それに当たっては、従来の一般的にいう顧客視点の考え方を少し変える、変えようではないかと思います。従来の顧客視点の危うさは顧客が求めることを気にしすぎたり、真の目的を見極められず、場合によってはグローバルに広がっているときはもういろいろな地域の声が聞こえたまま、足して四で割るみたいな、こういうことになる傾向が実はあります。

 結果として、機能も性能もてんこ盛りになってしまう嫌いがあるということ。我々はきちんとした集中と選択をもう一度やりたいというふうに思います。

ht_VAI10.jpg 時間はかかるが、とことん突き詰めて考える

 本当に満足していただく商品を作るためには、お客様が困ってらっしゃること、これが必要なんだと思ったことをとことん突き詰めて考える。時間はかかりますが、ここに時間をかけないでどうするのだと思っています。

 これは一人一人のお客さま顧客のニーズという簡単な言葉ではなく、顧客のそれぞれの皆さんのお客さまの状況に注目する、どんな状況なのかどんな使われ方をされているのかというお客様の状況に注目するという考え方です。そこには選択と集中が必要です。選択と集中を繰り返すことで、必然的に徹底的に無駄な物がそぎ落とされ、機能や性能は本質に迫っていく、結果的にシンプルで単純なものになっていくものだと思います。

 そしてその本質を突き詰める過程で、本当に大事な物をもっととんがらせなければいけない、ここはもっと凝縮しなければならないというのが見えてくる。人の気持ちに突き刺さるデザインかもしれません。ある機能かもしれません。バッテリーの長さかもしれません。+αがおのずと価値なり、VAIOらしい付加価値がついた商品が出せるというふうに一同思っております。

 本質を突き詰めたPC、加えて一点突破の発想と審美眼を併せ持つ、それが愛着を持って長く使っていただけるVAIOだと思っています。

ht_VAI11.jpg 会場に展示されていたVAIO Pro 11/13、VAIO Fit 15E

 こういう物作りをしていきますが、まずはスタートに当たって販売していくのは、ここにご紹介しますVAIO Pro 11/13、VAIO Fit 15Eです。ご存じの方も多いと思いますが、ソニー時代のラインアップの中でお客さまと市場から高い評価をいただいている、実績のあるモデルであります。もちろん、ソニーロゴはございません。

 まずはこの2機種でビジネスをきっちり軌道に乗せたいと思っています。当然、これで終わってはいけません。会場にも何人かの商品部長が来ていますけれども、彼らも含めてVAIOのDNAを受け継いだこだわりの商品屋が残ってくれています。参加してくれています。今後は新しいモデルを世に問うていきたいというふうに思いますので、今日はありませんけれども、ぜひご期待していただければと思います。

ht_VAI14.jpg VAIO株式会社で扱うラインアップは2機種3モデルだ
ht_VAI12.jpg 天面はVAIOロゴのみに
ht_VAI13.jpg 液晶下部にあったSONYロゴもVAIOに置き換わっている

計画販売台数は30万〜35万台

 最後に、販売販路についてご説明いたします。

 販路においても、事業規模に合わせ当面国内市場に絞りと集中をかけます。そして、国内販路の中でも、我々の思いをきっちりと伝えるために、ユーザーとダイレクトにつながることができる販路を選択し、販売を開始させていただきます。

ht_VAI15.jpg

 販売に関しては、VAIOブランドとの関係が深く、新しいVAIOブランドにもご理解をいただいているソニーマーケティング株式会社と先ほど来、販売総代理店契約を結びました。ここときっちとしたタッグを組んで、皆さんとお客さまに向き合っていきたいと思います。

ht_VAI16.jpg なじみのあるソニーマーケティングと販売総代理店契約を結んだ

 少し細かくなりますが、一般のお客様向けにはインターネット通販サイトのソニーストア、直営店舗のソニーストア、銀座、名古屋、大阪。それからソニーストアと提携している、ソニー商品を取り扱う全国にある非常にユニークなe-ソニーショップ。先日もお会いしたのですが、本当に熱いVAIOファンの皆さんですが、そこでVAIOを購入できます。

 加えて、一部の量販店の店頭において、VAIOのご注文が可能なコーナーを順次展開していく予定でございます。これは予定より速いスピードで展開できると思っています。

 そして、これらの販売販路に加えて、もう1度安曇野工場を使って体制を見直して、CSやサポートに関してもスクラッチから今構築しておりますので、ご安心なさって買っていただきたいと思っています。

ht_VAI17.jpg 一般向けの販路は直販が中心だが、一部店舗でも取り扱う

 もう1つの販路、BtoBでございます。企業や教育関係など法人のお客さま向けにはSMOJの直販営業やここ(会場のスクリーン)でご紹介したディストリビューターさんですけれども、私どもお会いしていますけれども、ディストリビューターの皆さまを通じた形で取り扱います。

 ソニーマーケティング株式会社および販売パートナーの方々とともに法人需要にこれまで以上に力を入れて展開して参ります。そして、それにフィットした商品もきちんと開発していく予定でございます。

ht_VAI18.jpg 法人市場にはこれまで以上に力を入れるという

 一般のお客さまと法人のお客さまを合わせた年間の計画販売台数としては2015年度を目標に30万から35万台を予定しております。

 以上、我々の組織、設計製造、商品、販売販路の考え方についてご説明させていただきました。しっかりと地に足をつけてPCの本質を追究し続けることで、新たな+αを商品作りに加え、着実にチャレンジしていきたいと思います。

ht_VAI19.jpg 新しい組織が目指す「本質+α」

理性+感性のコーポレートカラーで「勝つ」

 さて、ここまでお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、スライドにいくつかの色を使っています。ここで、VAIO株式会社のコーポレートカラーを紹介させていただきたいと思います。

 この色にはこれまでお話ししてきた本質+αという考え方、我々のフィロソフィーを凝縮させております。本質は理性の青と言い換えることができます。そして+αは、感性の紫と言い換えることができると思います。もともと、VAIOの原点のカラーが紫でした。

 この新しいコーポレートカラーはその両極の融合を表現しています。これが新しい我々のカラーです。そしてまたこの色は、日本古来の伝統色でもあります。もともと中世や近世の日本で勝つの勝色と呼ばれ、同時に勝負に勝つということも掛け合わされて、武士に愛好されていた色でもあります。何を言っているのかと言われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この色に我々の「想い」を込めたいと思っています。

 VAIOは本質+αという思いと、日本発のブランドとしての誇りを持って、このコーポレートカラーとともに歩んで参ります。

ht_VAI20.jpg 理性の「青」と感性の「紫」を融合させる
ht_VAI21.jpg 「紫」はVAIOカラーでもあった

遠くを見ながら夢を持っているが、まずは足元から

 最後になりましたが、本日、我々とお客さまとの直接のとても重要な接点であるWebサイトをがんばって立ち上げました。ぜひアクセスしていただければ、我々の声をも伝わっていくのではと思います。ずばりvaio.comです。メールアドレスもvaio.comです。

ht_VAI22.jpg ドメインは「VAIO.COM」。このメールアドレスは欲しくなる

 私たちは今日、スタートを切ったばかりの会社です。もしかすると皆さんの中にはVAIOはきちんとやっていけるの? ソニーを離れちゃっていったいどうなの? と不安を感じていらっしゃる方がいるかもしれません。いや、だからこそ私たちは本質+αという物作りの原点に立ち返り、皆さんになるほどVAIOはこうするのか、この会社なら応援してみようかと思っていただける会社に一同、また愛されるブランドになっていきたいと思います。会社員一同努力して参りたいと思います。

 今日は本質ばかりのお話をしましたが、遠くを見ながら夢を持っています。でもしっかりと足元を見て一歩一歩進んで参りますので、どうか見守っていただければと思います。

 本日は本当にありがとうございました。

ht_VAI23.jpg 中央の関取社長、左に赤羽取締役副社長、右に花里取締役執行役員
ht_VAI24.jpg ついにスタートを切ったVAIO株式会社。道のりは険しいが、これだけ期待が集まるブランドはなかなかない。今後の行方が大いに気になるところだ

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