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「VAIO Pro 13 | mk2」徹底検証――“タフモバイル”への路線変更は英断か?VAIOが強くて何が悪い(1/7 ページ)

» 2015年05月27日 18時30分 公開
ココが「○」
・薄型軽量タフネスボディに進化
・ビジネスに便利な端子を追加
・キーボード・タッチパッド改善
・第5世代Coreで性能・放熱を改善
ココが「×」
・先代よりわずかに厚く重くなった
・駆動時間が若干短くなった
・外観の美しさは先代のほうが上

人気モデル「VAIO Pro 13」が最新世代にリニューアル

 かつてソニーが発売した「VAIO Pro 13」は、薄型軽量を追求したボディ、優れたパフォーマンス、そして長時間のバッテリー駆動時間も兼ね備えた完成度の高い13.3型モバイルノートPCだった。2013年6月の発売当時、13型クラスのタッチパネル搭載Ultrabookにおいて世界最軽量を誇り、高い人気を博したことは記憶に新しい。

 翌2014年7月にソニーから分離したVAIOが新会社となり、製品ラインアップを最小限に絞り込んだときも、VAIO Pro 13はSONYロゴを省いてマイナーチェンジしたモデルが継続販売され、新生VAIOの主力製品に位置付けられている。

 そんなVAIO Pro 13がVAIO新会社のもと、約2年ぶりのフルモデルチェンジを行い、「VAIO Pro 13 | mk2」に生まれ変わった。最新のBroadwellプラットフォーム(第5世代Coreプロセッサ)を採用するとともに、ボディの堅牢性向上、キーボードとタッチパッドの改良、無線LANアンテナの感度向上など、細部のブラッシュアップを加えている。

VAIOの13.3型モバイルノートPC「VAIO Pro 13 | mk2」。シルバーの新色も用意されているが、今回入手したのは定番のブラックモデルだ

 今回は6月11日の発売に先駆け、購入時に仕様を選べる直販VAIO OWNER MADE(VOM)モデル「VJP1321」の試作機を入手した(受注開始は6月3日の予定)。早速、進化した性能や使い勝手を検証していこう。

堅牢な「タフモバイルPC」へ方向転換

 VAIO新会社が2015年春にフラッグシップの「VAIO Z」を復活させたことに伴い、「VAIO Pro」はビジネスプロフェッショナルのためのスタンダードモバイルという特徴がより明確化された。初代と2代目の間には、ソニーからの独立という大きな出来事があり、VAIO新会社は法人向けのPC拡販を狙っていることからも、よりビジネスを意識した仕様変更が目立つ。

 VAIO Pro 13 | mk2が最も強くアピールする要素が堅牢性だ。同社はその堅牢性を示す要素として、開発段階で過酷な耐久テストをクリアしたことを明らかにしている。

 詳細は別表にまとめたが、机の上に(乱暴に)置く状況を想定した「角衝撃試験」、満員電車での負荷を再現した「加圧振動試験」、不意の転落を考慮した高さ90センチからの「落下試験」、1点のみに負荷がかかる「本体ひねり試験」、トップカバーでペンを挟んでしまうトラブルに対する「ペンはさみ試験」など、実際のビジネスシーンで要望を聞いて設定した実に過酷なテスト内容だ。

実際の利用シーンを想定し、「本体ひねり試験」(写真=左)や「ペンはさみ試験」(写真=右)も実施
VAIO Pro 13 | mk2の開発時に行われた主な品質試験
試験項目 試験内容
角衝撃試験 片手で机などにPCを置いたときの衝撃を想定した角からの落下試験。5センチの高さから5000回落下させる試験を4角すべてに対して行う
90センチ落下試験 移動時における不意の転落を考慮した落下試験。身長170センチの人が腰に抱えた位置を想定した90センチの高さから、天面、底面、側面の合計6方向で落下テストを実施する
加圧振動試験 満員電車内での押圧負荷などを想定した加圧振動試験。150kgf(重量キログラム)の加圧、およびさまざまな振動パターンを1時間かけるテストを、動作、非動作、梱包(こんぽう)の各状態で実施
液晶ハウジング加圧試験 踏まれたり、押されたりといった状況を想定した液晶ハウジング(トップカバー)に対する加圧試験
本来ひねり試験 本体の角3点を固定し、1点のみに加圧するという「ひねり」に対する試験を実施
ペンはさみ試験 液晶ディスプレイを閉じる際にキーボードの上に置いたペンを挟んでしまうといったトラブルを想定。実際にトップカバーとベースボディの間にペンを挟んだ状態で加圧する試験

 この堅牢性を実現するため、ボディの素材、構造とも変更されている。ボディの素材は、トップカバーがマグネシウム合金、パームレスト部がアルミニウム、ベースボディは高剛性樹脂だ。トップカバーは、マグネシウムダイキャストをCNC(コンピュータ数値制御)加工することで、側面部まで一体成型し、特にヒンジ部の強度を向上させた。

 また、高剛性樹脂製のボトムカバーは、キーボード部を含めて補強リブを立てて剛性を高めるとともに、底面部の表面にネジを露出しない、いわゆる「クリーンボトム」もやめた。これにより、ボディ内部にアクセスしやすくなって保守サポートが容易化されるだけでなく、ネジの位置を最適化することで剛性の強化にもつながっている。

 なお、先代機で利用していたカーボン素材は省かれたが、最も大きな要因はコストにある。カーボンが軽量化と強度の両立に有利な素材であると認めつつ、どうしても「スタンダード」という位置付けに見合わない価格になってしまうため、採用を見送ったという。もっとも、カーボンを使わずとも、素材と構造の工夫によって、堅牢性と耐久性に関しては、目指していた水準を実現できている。

トップカバーはマグネシウムのダイキャストで一体成形した後、CNC加工で細部を仕上げている。背面にはシルバーのオーナメント(液晶ディスプレイのヒンジとスタンドを兼ねる)があるが、トップカバーはこの部分まですべて一体成型となっており、箱型形状で剛性を強化した
底面は高剛性樹脂を採用。ネジ穴を露出しない「クリーンボトム」をやめ、底面の「VAIO」ロゴも省いている。ネジ穴を隠すことにこだわらず、剛性、メンテナンス性を優先した変更だ

 このように剛性強化に注力したVAIO Pro 13 | mk2だが、見た目のイメージは先代機とほとんど変わっていない。手前側に向かってシャープに絞ったくさび側のフォルム、ヒンジ部の六角形を特徴とする「Hexa-shell(ヘキサシェル)」デザインを継承している。これはボディの断面が六角形になるよう成形して耐衝撃性を高めたもので、デザインと剛性の両立を図った構造だ。

 実際に手で持ってみると、確かにその感覚は先代機とかなり異なる。剛性感の高さが確かに伝わってくるのだ。あえて意識して、ボディに強めの力を加えても、へこんだりきしんだりせず、指の関節でコツコツとただいて反応を確かめたくなるような、ソリッドな感触がある。

 先代機を含め、ソニー時代のVAIOノートに対して「薄型軽量でデザインもよいが、剛性はそれほどでもない」というイメージ(実際は従来機もかなり高度な品質試験をクリアしているのだが)を抱いていた方は少なくないだろうが、それを覆すだけの高い剛性感が得られており、特にビジネスシーンでの機種選定で説得力が上がりそうだ。

上が新モデルのVAIO Pro 13 | mk2、下が先代機のVAIO Pro 13。見た目は先代機とほとんど変わらないが、手で持ったときのソリッドな剛性感、安心感は格段に向上している
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