Wi-Fi Alliance、近接情報利用技術「Wi-Fi Aware」を日本で紹介ニンテンドーDS「すれ違い通信」を無線LAN搭載タブレットでも

» 2015年07月14日 15時46分 公開
[長浜和也ITmedia]

極小メッセージの送受信でつながる相手を発見する

 Wi-Fi Allianceは、7月14日に日本で「Wi-Fi Aware」の概要を紹介する説明会を行った。「Wi-Fi Aware」では、無線LANに対応するデバイスの間で無線LANによる接続(Wi-Fi Direct)を確立する前に、近接情報に基づいて利用できるサービスを検出する。2014年9月に「Wi-Fi Direct」の拡張として発表した4つの機能のうち、DNLA対応のデバイス同士をお互いに発見させる「Wi-Fi Direct for DLNA」を汎用利用できるように拡張したものに近い。

 Wi-Fi Allianceは、Wi-Fi Awareによってユーザーの趣向に合い、かつ、近くで利用可能になっているネットワークサービスを見つけることが可能になると説明している。具体的な利用場面としては、オンラインゲームの対戦相手やメディアコンテンツの共有、ローカライズした情報へのアクセスなどが、無線LAN接続を確立する前から検出できることを挙げている。

 セキュリティ技術にはWPAを利用するほか、無線LAN規格ではIEEE802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LANで利用できる。新しいコントローラなどのハードウェア変更は必要としない。検出できるデバイスの距離は無線LANと同様に100メートル程度としている。

 日本の関係者にWi-Fi Awareの概要を説明するために来日した、Wi-Fi Alliance マーケティング担当上級副社長のケリー・デイヴィス・フェルナー氏は、世界で19億人いるソーシャルネットワークサービス(SNS)のアクティブユーザーは、1日2時間以上SNSを使っているというニールセンが2014年に行った調査結果を示しながら、これらのユーザーは、主にタブレットやスマートフォンやタブレットなどを使って常に移動しながらSNSを利用しているため、近接情報を使った技術や近接情報の活用によって生まれる付加価値に興味を持っていると説明する。

無線LAN対応デバイスの主流はかつてのPCからモバイルOS導入デバイス、そして、車両にシフトし、常に移動しながら無線LANを使うようになってきた。こういう状況において、近接情報の取得とその活用は大きな付加価値を生み出すようになっている

 近接情報によって生まれる付加価値については、小売業者や会場運営団体、地方自治体などが近接情報を活用して収益や付加価値の向上に取り組んでいるほか、近接情報を検索するアプリの大規模導入、旧式なデバイスでも近接情報検索機能を持たせるなど対応デバイスやアプリの増加によって、モバイルコンテキストと位置情報サービスの利益は2019年までに433億ドルまで成長するというJuniper Reaearchの予測を紹介している。

 一方で、フェルナー氏は、現在位置情報を利用するデバイスやアプリの問題として、GPSやチェックイン機能の位置データに依存しており、近接情報のように実態を反映しておらず、屋内やデバイスが密集しているエリアでは機能が低下するほか、データの送受信や保存にクラウドサービスを利用するために、実際にいる場所と保存している位置データにタイムラグが発生すること、そして、大容量データの扱いでネットワーク接続が難しいことを指摘している。

常時稼働でタイムラグのない近接情報取得を可能に

 Wi-Fi Awareは、この問題を解決するために、常時稼働とすることで近接情報を利用可能なサービスをリアルタイムで検出してユーザーに通知することを目指した。Wi-Fi Awareの処理手順では、常時稼働中にデバイス固有の識別名をメッセージにしてデバイス同士で送受信することで近接サービスを検出する。常時稼働となるため消費電力の抑制が必須となり、高い電力効率を実現するために、起動したアイドル状態でもスリープした状態でも共通の動作通知機能でデバイスのクラスタを形成し、ほかのデバイスが入ってくると一部のデバイスをクラスタから外すなどの処理をしている。

Wi-Fi Awareの動作フロー

 識別するためのメッセージは短いデータなので、短時間で多くのデバイスと通信できる。そのため、利用できるサービスを速やかに検出できる。また、利用したいサービスや得たいデータを検出したらアプリ側で無線LANの接続処理を開始して、大容量データによる通信ではより高速(その代り消費電力大)な無線LANを利用できるようになる。

 このように、Wi-Fi Awareを利用することで、GPSや移動体通信基地局、無線LANホットスポットなどに接続していなくてもデバイスの間で継続的な情報検索が可能で、屋内でもデバイス集中エリアでも安定した接続が確保でき、大容量データ通信の必要が出ればアプリ側でより高速な無線LANに移行できるようになるとフォリナー氏は訴求した。

 複数のネットワークコントローラベンダーでWi-Fi Aware対応コントローラが登場しており、2015年後半からは利用できるデバイスが登場する見込みだ。ただし、OSによるサポートについては、現在表明しているOSベンダーはなく、コンシューマー向けデバイスでWi-Fi Awareに対応する時期は「それほど長く待たなくてもいい」(フォリナー氏)としつつも具体的な時期は対応デバイスは来年(2016年)に出てくる」と発言するにとどまった。

Wi-Fi Awareによる近接情報活用で、ゲームの対戦相手や展示会のブースで商談内でのマッチングをしたりデータをタイムラグなしで共有できたりといったことが無線LAN対応デバイス“でも”可能になる

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