「Core i7-5775C」が“C”である理由を検証する(後編)なんて悩ましいタイミングなの(2/2 ページ)

» 2015年07月24日 11時04分 公開
[石川ひさよしITmedia]
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ついにAPUのRadeonを超えるときがきた……か

 3D描画処理能力を測定するベンチマークテストでは総じてCore i7-5775Cが優秀なるスコアを出している。3DMarkでは、特にFire Strike以降でCore i7-4790Kに対して2倍前後のスコアとなった。GPU性能を見るGraphicsスコアでも、すべてののテストでCore i7-4790K比1.8倍以上に達している。Fire Strike Ultraでは、Core i7-4790KのIntel HD 4600が途中で止まってしまった一方で、Core i7-5775CのIris Pro 6200は完走している。

 A10-7870Kと比べると、OverallではFire Strikeでほぼ互角、Fire Strike ExtremeではA10-7870KがCore i7-5775Cを上回った。Graphicsスコアでは、Sky DiverからA10-7870Kが優勢になる。負荷の高い3Dグラフィックス描画処理において、Core i7-5775CはA10-7870Kに及ばない。

3DMark v1.3.708(Overall)

3DMark v1.3.708(Graphics)

 しかし、この傾向はゲームタイトルを用いたベンチマークテストで変わってくる。

 Ultra Street Fighter IVのテストでは、画質設定はエクストラタッチを除きすべて最大にしているが、この状態で1600×900ピクセルまでは平均60fpsを超えることができた。Core i7-4790K(Intel HD Graphics 4600)と比べると2倍以上の向上だ。A10-7870Kとの比較では、低解像度設定ではDDR3-1600のCore i7-5775C環境がDDR3-2400のA10-7870K環境を上回った。1920×1080ピクセルでは、A10-7870Kのフレームレートが優勢だが、オーバークロックメモリを組み合わせた環境ではCore i7-5775Cが逆転している。

Ultra Street Fighter IV(エクストラタッチ:無/ほかはすべて「高」)

 バイオハザード6は画質設定をすべて最大に設定しており、1600×900ピクセルまでは「B」判定が得た。1920×1080ピクセルに引き上げる場合は、画質設定を部分的に下げる必要がある。30fpsが目安となるゲームタイトルだが、Ultra Street Fighter IVと比べて負荷が高いため、フレームレートが低くになりやすい。A10-7870Kとの比較では、1920×1080ピクセル環境でもCore i7-5775Cが高いスコアを記録した。Ultra Street Fighter IVと比べてグラフィックス描画処理の負荷が高いベンチマークテストにも関わらず、インテルの統合グラフィックスコアがAMDの統合グラフィックスコアを上回ったというのは興味深い。

バイオハザード6(すべて「高」)

 ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族オンライン ベンチマークテストでは、最高品質、1920×1080ピクセルでも1万ポイントを超える「とても快適」という判定だ。A10-7870Kとの比較でもCore i7-5775Cが1.28倍のスコアだ。

 ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマークに関しては、Core i7-4790Kの場合、DirectX 9、標準品質の1920×1080ピクセルで2000ポイント台の「やや快適」という判定だが、Core i7-5775Cなら5000ポイント台の「とても快適」判定に向上する。フレームレートで見ると、Core i7-4790Kの23.175fpsに対して47.484fpsとなり、30fpsという“快適目安”を大きく上回るできる。A10-7870Kは、4000ポイント台で34.861fpsとなり、プレイ自体は快適だが、Core i7-5775Cを下回る。なお、Core i7-5775Cでも、高品質設定や、標準品質でDirectX 11に引き上げると1600×900ピクセルで「やや快適」といったレベルまで落ちる。

ドラゴンクエストX目覚めし五つの種族オンライン ベンチマークソフト(最高品質)

ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(Quality:標準品質 DX9 デスクトップPC)

 DirectCompute & OpenCL Benchmark v0.45では、DirectComputeはCore i7-4790K比で1.4倍程度、OpenCLでは2倍以上にスコアを伸ばした。ただし、CPUに関しては9割程度に収まる。また、A10-7870Kと比べるとDirectComputeもOpenCLも、Core i7-5775Cは大きく下回っている。

DirectCompute & OpenCL Benchmark v0.45(DirectCompute)

 Core i7-5775CはTDPを65ワットに設定している。インテルが「Kではない」と主張する主な理由も「TDPを65ワットにするために動作クロックを低めにしたCPU」だからだ。そこで、消費電力を測定して、インテルが訴求する省電力の実力を確認してみる。

 アイドル状態ではCore i7-4790Kとほぼ同じだが、CPUに負荷をかけたCINEBENCH R15実行状態では大きく差がでる。Core i7-4790KのTDPは88ワットで、Core i7-5775Cと23ワットの差だが、計測では29ワット程度低い結果となった。なお、グラフィックスコアの負荷が高い3DMark実行状態では、Core i7-4790Kに対し10ワットほど低い値だった。EUの増加、4次キャッシュメモリの追加などグラフィックスコア駆動における消費電力が増加する要因はいくつかあるが、一方でグラフィックスコアの動作クロックを低く設定したことで消費電力を抑えているためと考えられる。

消費電力(電力設定:バランス)

3D性能やQuick Sync Videoの性能向上がポイント

 Core i7-5775Cで3Dグラフィックス描画処理能力は大幅に向上した。Core i7-4790Kと比べて2倍以上にスコアを伸ばしたベンチマークテストもある。今回比較対象として用意したA10-7870Kをグラフィックスベンチマークテストの一部で上回ったことも注目に値する。

 ゲームにおけるグラフィックス性能の目安としては、MMORPGなどの比較的負荷の軽いタイトルを高画質の720pあるいは、標準画質の1080pで楽しめるラインだ。一方で、高画質と高解像度を両方追求してしまうとフレームレートが快適なレベルに達しない。自分が動かしたいゲームタイトルで快適なフレームレートを出すことができるのかがディスクリートGPUを検討する基準となるだろう。

 Core i7-5775CではQuick Sync Videoの性能にも注目したい。Core i7-4790KのQuick Sync Videoによるトランスコード処理と比べて7割前後の時間で終えるのは、トランスコードに速度を求めるユーザーにとって大きなポイントとなるだろう。一方で、高画質を求めるソフトウェアエンコードならCore i7-4790Kが速い。このあたり用途に合わせて選ぶことになる。

 Core i7-5775Cは価格がネックになる。Core i7-4790Kは2015年7月時点で4万2000円前後、Core i7-5775Cは5万円前後と8000円程度の開きがある。8000円というと、GeForce GT 730が購入できる。Core i7-4790K+GeForce GT 730なら、Core i7-5775Cのグラフィックス性能を上回る。一方で、A10-7870Kの価格は1万9000円前後だ。システムメモリにDDR3-2400を組み合わせたとしても、CPUと(同容量の)メモリでCore i7-5775Cの価格を上回ることはない。

 価格とともに問題なのが登場したタイミングだ。次世代の「Skylake」も控えているだけに、デスクトップPC向けBroadwellのインテルCPUのラインアップにおいてどのような位置づけになるのかは、Skylake世代の製品がが登場した後、価格が固まってきた段階で検討してもいいだろう。ただし、Skylakeではプラットフォームが変わるため移行コストは高い。コストという視点でCore i7-5775Cが多くの自作PCユーザーから支持を得る可能性も否定できないところだ。

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