Windows 10の公開1周年を記念した無料大型アップデート「Anniversary Update(1607)」の配信が、2016年8月2日(米国時間)にスタートした。
Anniversary Updateは、2015年11月公開の「November Update(1511)」と比較してユーザーインタフェースの見た目が大きく変化した。一般ユーザーにとっては、大幅に機能強化が施された「Edge」ブラウザや、手書き入力機能「Windows Ink」の新しいツール、ロック画面でも使えるようになった音声対応パーソナルアシスタント「Cortana」、セキュリティ強化などがアップデートの注目点だろう。
一方、MicrosoftからはAnniversary Updateとともに、開発者向けの新しい技術情報やトピックが出てきた。このアップデートでは、OSの内部的に2700以上と膨大な細かい機能の追加や変更が行われている。特にこれらの機能をサポートすべく、新しいバージョンを対象にした「Universal Windows Platform(UWP)」アプリの開発者は、変更に対応しなければならない。
既に「Visual Studio 2015」を使っている開発者には、「Tools for Universal Windows Apps(1.4.1)」と「Windows 10 Anniversary Update SDK(10.0.14393)」が8月2日に提供された。これは特にWindowsストアへのアプリ登録で重要だ。Mixed Reality対応ヘッドマウントディスプレイ(HMD)デバイスの「HoloLens」を含むAnniversary Update SDKを使ったアプリの登録は、8月2日以降に受付が始まった。
そしてWindows Developer担当コーポレートバイスプレジデントのケビン・ギャロ氏がブログで報告しているように、Anniversary Update提供のタイミングではAnniversary Update SDKのアップデートとともに、開発者向けの重要なトピックが3つほど存在している。
1つは開発者向けイベントの「Build 2016」でも大々的にアピールされた「Bash on Windows」だ。
「Windows Subsystem for Linux(WSL)」の仕組みを介して、UbuntuをWindowsストア経由でインストールすることで、Bashシェルのみならず、(開発中で機能制限はあるが)UbuntuバイナリをそのままWindows上で実行できる。
2つ目が今回のメイントピックである「Desktop Bridge」だ。かつては「Project Centennial」や「Windows Bridge for Classic Windows apps」の名称で呼ばれ、Build 2016でのデモ公開時には「Desktop App Converter」の名称で旧Windows OS向けのアプリを変換するツールが紹介されるなど、いまひとつ名前の安定しないツールだが、現在ではDesktop Bridgeの名称で落ち着いたようだ。
Desktop Bridgeの公式ページには登録用フォームが用意されている。旧Windows OS向けにアプリやゲームを提供していた開発者で、Windowsストアへの登録に興味がある場合には、その旨を登録用フォームに記述すればWindowsストアへのアプリ登録に向けてMicrosoft側のスタッフがコンタクトしてくるようだ。実質的に、Desktop Bridgeで変換されたアプリのWindowsストアへの登録の受付が8月2日に始まったとみていいだろう。
過去の記事でも解説した通り、Desktop Bridgeで変換されたデスクトップ向けアプリはあくまで「Windows 10 for PC」向けであり、Windows 10 MobileやXbox Oneで動作するUWPアプリにはならない。インストールに必要なファイルをまとめて「AppX」形式のパッケージに変換するだけだ。
もう1つの注意点は「Build 14342」以降のWindows 10が必要なこと。つまりDesktop Bridgeで変換されたアプリを実行する場合、ユーザー側のWindows 10がBuild 14342以降でなければならない(Build 14342が提供されたのは2016年5月18日)。
これは一般ユーザー(Microsoftのカテゴリー分けで「Current Branch」)の場合、Anniversary Updateが適用されている必要があることを意味する。これから少しずつDesktop Bridgeで変換されたアプリがWindowsストアに増えてくる見込みなので、Windows 10ユーザーはAnniversary Updateを適用して楽しみに待ちたいところだ。
トピックの3つ目は「Project Islandwood」こと「Bridge for iOS」だ。開発中止となった「Project Astoria(Bridge for Android)」を含む過去のWindows Bridgeの最新動向は本連載でも何度か取り上げているが、Bridge for iOSは初期版のリリース後も地味にアップデートを続けている。
つい最近の7月15日にも最新アップデートが発表された。翌週の22日には「App Analysis Tool」も発表されており、少しずつ開発環境が整備されつつあるようだ。
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