コラム
» 2016年11月13日 06時00分 UPDATE

ITはみ出しコラム:トランプ勝利で浮かび上がるSNSの問題点

ドナルド・トランプ氏が米次期大統領に決定した背景に、SNSの影響はどれくらいあったのでしょうか。

[佐藤由紀子,ITmedia]

 米次期大統領が共和党のドナルド・トランプ氏に決まりました。メディアは民主党のヒラリー・クリントン候補が優勢と伝えていて、3回の候補同士のディベートではトランプ氏の数々の暴言や不遜な態度を見ていたので、開票速報でアメリカの地図がどんどん赤(共和党のカラー)に染まっていくのを信じられない気持ちで見ていました。

 vote 1 ドナルド・トランプ氏。Twitterより
 vote 1 選挙結果。Google検索より

 トランプ氏が大統領になることがいいか悪いかは未知数です。それは置いておいて、メディアの予想がここまで外れたのはなぜでしょうか。

 トランプ氏が選ばれたのには、FacebookをはじめとするSNSの影響が大きいという説があります。New York Magazineの「Donald Trump Won Because of Facebook」というコラムが話題になりました。

 このコラムでは、Facebookのいわゆる「エコーチェンバー」のせいにしています(この用語を使ってはいませんが)。SNS世界でのエコーチェンバー(反響室)という言葉の意味をざっくり説明すると、SNSは気の合う仲間だけと交流できるので、1つの考え方が、たとえ一般には間違っているとされるものでも、閉ざされた部屋の中でお互いに「そうだよね」「その通り」と言い合うことで反響・増幅し、「これが正しい!」ということになっていく現象です。

 これを今回の大統領選に当てはめると、トランプ氏支持者のグループは、同氏が人種差別的な発言をしても女性蔑視的な発言をしても、そういう報道は見ず、Facebookが誤って流した虚偽のクリントン氏のスキャンダルには注目し、「トランプ氏こそがわれらの大統領!」となっていった、ということです。

 メディアがトランプ氏の失態をどんなに報じても、それは支持者には届いておらず、むしろ危機感を煽って支持を強めてしまっていたと考えられます。

 一方、メディア側は「これだけトランプ氏の失態を報じれば、いくらなんでも支持者が減るだろう」と思っていたので、予測を誤ったのではないでしょうか。

 つまり、メディアもメディアで、「フィルターバブル」に入っていたから予測を外したんだ、という意見がFortuneに載っていました。

 フィルターバブルというのは、アクティビストのイーライ・パリサー氏が『閉じこもるインターネット』(邦題です。2012年早川書房刊)という著書で作った用語です。これもざっくり説明すると、アルゴリズムの発達でユーザーは自分が見たいものだけにフィルタリングされた情報に囲まれて、いわば居心地のいいバブル(シャボン玉)の中にいる、ということです。

 vote 2 イーライ・パリサー氏がTEDで説明したフィルターバブルの図

 高学歴高所得の人が多いメディア側は、トランプ氏に支持者がいっぱいいることを見たくなかったから見えなかったのではないでしょうか。

 米Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは11月10日にカリフォルニアで開催されたテクノロジー/経済カンファレンス「Techonomy 2016」に登壇し、トランプ氏の当選はFacebookが虚偽のニュースを流したせいだとする非難に対し、「誰かが誰かに投票した唯一の理由が虚偽のニュースを見たことだと主張するなんて、エンパシー(共感能力)がないんじゃないですか? 本当にそう思うなら、今回の選挙でトランプ氏の支持者が届けようとしたメッセージを読み取れないでしょう」と語りました。

 vote 3 TechonomyでFacebookの影響力について語るマーク・ザッカーバーグ氏(左)

 それでもザッカーバーグ氏はFacebookにフィルターバブル問題があることは認めました。とはいえ、「Facebook上の最大のフィルターは、ユーザーが意に沿わないコンテンツをクリックしないことだ。ニュースフィードには、意に沿わないコンテンツも流れるし、自分とは異なる考えや宗教を持つ友達もいる」、つまりフィルターバブルの中にも対立する考え方が入ってくるが、それをユーザーはクリックしないのだと主張しました。

 このクリックしない率は相当高くてびっくりするぐらいで、「それをどうしたらいいか私にもまだ分からないが、何とかしなければならないと強く思っている」とのことです。

 Facebookはアルゴリズムでニュースフィードに表示するコンテンツを調整できます。ユーザーが「いいね!」した意見と対立するものを表示することだって簡単にできるでしょう。でも、それを読むかどうかは、ユーザー次第です。

 一人一人の心掛け次第という、当たり前な話になってしまいましたが、エコーチェンバーとフィルターバブルについては、いつも頭の隅っこに置いておきたいと思います。


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