Microsoftは2018年後半に400ドルの「低価格Surface」を投入する計画だ――米Bloombergが5月16日(現地時間)に報じた。
同記事によれば、この低価格Surfaceは「Surface Pro」の12型よりやや小さい10型で、四方の角を取った丸みのあるデザインを採用し、SurfaceとしてはUSB Type-Cを初めて搭載する。Surface Proと比較して2割ほど軽量なものの、バッテリー駆動時間は短め。10型のタブレットで市場シェアを占有しているAppleの「iPad」対抗が狙いという。
Microsoftの低価格タブレットといえば、500ドルの価格で2012年10月に発売された元祖「Surface」が発端だ。同日発売された「Windows 8/RT」のプロモーション的な役割を担っており、同OSで新しく導入された「WinRT API」と「ARM対応」をアピールすべくNVIDIAのTegra 3プロセッサを搭載し、「Surface RT(Surface with Windows RT)」の名称で製品が投入された。
筆者も米ニューヨークまで行って発売直後のSurfaceを購入してしばらくレビューしてみたが、「Type Cover」は長文の入力も可能と評価した一方、UIがこなれていなかったり、Windowsストアアプリの充実度や機能面でも不満を抱えていたりと、改良の余地がある印象が強かった。
OSのWindows 8(RT)も問題を抱えており、後にWindows 8.1(Windows RT 8.1)がリリースされるのに合わせて、プロセッサをTegra 4に載せ替えてパフォーマンスを強化した「Surface 2」が2013年10月に発売された。
「Windowsストアアプリ以外の導入ができず、セキュリティ的に安心」という理由から日本国内では一部教育機関への導入が進んだものの、世界的に見て「Windows RTを搭載したSurface」はまだ受け入れられておらず、ビジネス的には厳しいものだった(在庫整理だけで9億ドル以上の損失が出ている)。
実際、Surface 2が投入された後の2014年においても、Microsoftは在庫整理で同ビジネスの赤字が続いていたのだ。それまで開発に投入したコストも含めて考慮すれば、ビジネス的損失は大きかったといえる。
こうした中で2015年5月に登場した3代目の「Surface 3」は方針を一転し、IntelのAtomプロセッサおよび通常の(RTではない)Windows 8.1を搭載したモデルとなり、それまで一般ユーザーの評判が芳しくなかった「デスクトップアプリケーションを利用できない」という制限をなくした。価格は従来の「500ドル」のラインを維持することで、「手軽に購入できるPCタブレット」としてのポジションを確立したといえる。
また同製品はSurfaceシリーズとしては初の「LTE」対応が行われ、今日の「Windows on Snapdragon」や「Always Connected PC」につながる道を切り開いている。
だが薄幸なオリジナルSurfaceシリーズの旧機種同様、Surface 3もまた多分に漏れず、登場から1年半で生産終了となり、現在まで後継機種はリリースされていない。
Surface 3が終了となった理由は幾つかあり、1つはIntelの戦略変更でAtomの後継プロセッサがリリースされなかったこと、そしてMicrosoft自身がSurfaceでのローエンド市場開拓にそれほど熱心でなくなったことが挙げられる。実際、「Surface Mini」と呼ばれるARMプロセッサを搭載した小型タブレットが計画されていたが、最終的にキャンセルとなった。
これ以降にリリースされたSurfaceブランドの製品が「Surface Book」「Surface Studio」「Surface Laptop」といった具合に、プレミアムかそれに比較的近いミッドレンジのモデルであることを考えれば、現在の同社がプレミアム市場にSurfaceの価値を見いだしていることも容易に想像できる。
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