もっとも、パフォーマンスさえ向上すれば、iPad miniのサイズがベストだと思ってきた読者は多いだろう。フォームファクターは変更されていないのだから、ここで書いてきたことは、新モデルが出てきたことで再認識したにすぎない。
復活したといっても、また来年、最新プロセッサを搭載したiPad miniが追加される保証などどこにもないわけだが、今回の改良のポイントはiPad mini、Air、Pro、すなわち無印iPad以外のSoC(System on a Chip)アーキテクチャ(特に「Neural Engine」は全てにおいて共通)と、ディスプレイの質(ディスプレイP3、True Tone対応、最大500nitsのHDR表示対応)が統一されたことにある。
こうした特徴はiPhoneの最新モデルとも整合性が取られており、例えばカメラについても新フォーマットのHEIFではディスプレイP3での記録が行われる。さらには標準化でHDRの記録も定義される見込みで、こちらもディスプレイ側のHDR対応とともに映像表現の質を統一する意味合いがある。
ディスプレイの質を、広色域、HDRなどのキーワードで統一できたことで、Appleが発表した新しい動画定額サービスの「Apple TV+」などコンテンツ再生面での素地がそろえられた点も興味深い。
実際、現行のiPadシリーズに同じ映像を表示しているところを見る機会があったが、無印iPad以外の映像の印象は統一されていた。「印象」が統一されていることは重要だ。
全く異なる要素だが、Neural Engineの搭載も同じ。同じエンジンが搭載されることで、今後、機械学習を用いたアプリの数、応用ジャンルの広がりが期待できる。機械学習を用いたフォトレタッチアプリの「Pixelmator Photo for iPad」のβテストに参加してきたが、こうしたアプリが今後増えてくる下地となっていくことを期待したい。
ところで、筆者の場合は、Android端末であるNuAns NEO [Reloaded]とiPad miniの組み合わせでも使ってみたのだが、やはりテザリング時のネットワーク共有連携が行えないのは厄介だった。端末を持ち替えた際、同じアプリなら継続した作業をiOS同士では行えるが、AndroidとiOSの間ではスムーズな連携ともならない。
また、Appleは加入者型サービスに関し、家族で同じサービスを共有できる「ファミリー共有」を導入している。こうした長所も活用できない。
もちろん、これは「逆も真なり」なのだが、Android端末+iPad miniという運用を考慮に入れるならば、容赦せねばならないところだろう。
さて、もう結論は見えているだろうが、iPad miniは日本の都市生活におけるコンテンツビュワー、コミュニケーションツールとして、バランスのいいサイズ感と使いやすさを持っている。
特にiPhoneとの連携は極めてスムーズであるため、特に現在使っているiPhoneに不満がないのであれば、iPad miniを加えてみることを検討してもいいだろう。あるいは、今後の端末選びにおいて選択肢を変更するきっかけにしてもいいかもしれない。
ディスプレイの質やSoCの世代が大きくジャンプアップした第5世代のiPad miniであれば(このサイズ感の端末を求める人にとって)、長い間、愛用できるだけの潜在力を備えていると思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.