「放送波でたくさんのコンテンツを降らせ、人それぞれのプロファイルに合ったものを自動的に届けるサービスを提供したい」――。マルチメディア放送は3月8日、アナログテレビ停波後の周波数帯を使った次世代マルチメディア放送の有力規格「ISDB-Tmm」のサービスイメージをデモンストレーションを交えて公開した。
携帯端末向けマルチメディア放送の規格としては、NTTドコモやソフトバンクモバイル陣営が推進するISDB-Tmmに加え、KDDI陣営が推進する「MediaFLO」が名乗りを挙げている。総務省は携帯向けに14.5MHzの帯域幅を用意し、これを1事業者に割り当てる方針で、採用される規格も1つとなる。2011年のアナログテレビ停波がせまる中、ISDB-Tmmサイドは「なかなか今まで話をしてこなかった」(マルチメディア放送 代表取締役社長 石川昌行氏)というサービス像を公開し、同社の取り組みをアピールした。
ISDB-Tmmは、ワンセグにも採用されている地上デジタル放送方式「ISDB-T」から派生したもので、ワンセグよりも高画質なストリーミング放送に加え、放送波を介して端末にファイルをダウンロードさせる「ファイルキャスティングサービス」が可能になる。周波数ごとにチャンネルが区切られているワンセグとは異なり、スポーツイベントの開催時などにはストリーミング放送を増やし、深夜などはファイル配信のみ行うなど、限られた周波数を柔軟に利用できるのが特徴だ。
ファイルキャスティングサービスではコンテンツが端末に自動的にダウンロードされ、ダウンロード後は電波状況に関係なく好きなタイミングでコンテンツを楽しめる。映像だけでなく電子書籍などさまざまなコンテンツの配信を想定しており、サービスの「軸足」になると石川社長は話す。
配信されるファイル数は、1週間で300程度を見込む。すべてが端末にダウンロードされるわけではなく、ユーザーのプロファイルや、コンテンツに対するレーティングから興味を割り出し、それに合ったものを配信するレコメンド型サービスを目指す。基本的にはレコメンドされたコンテンツが知らず知らずのうちに端末に蓄積されるイメージだが、「テレビ番組表から選ぶような感覚で、ユーザー自身が選択することも想定している」(マルチメディア放送 サービス・コンテンツ企画部 藤岡晋課長)。また、コンテンツをダウンロードし損なうケースに備え、コンテンツは何回も配信されるという。
サービスは、300円〜500円程度の月額課金での提供を想定しており、基本料金の枠の中で視聴できる無料コンテンツに加え、別途料金を支払う有料コンテンツを用意する見込みだ。
今回の発表では、端末を傾けたりすることで操作できるAndroid端末向けのユーザーインタフェース(UI)も公開された。このUIは研究途中の成果であり、採用されるかは未定。
このUIでは、タッチパネルの一部を押しながら画面を傾けることでコンテンツを選択できたり、シェイクすることで視聴を開始したりと、ユーザーの“動き”を使った操作性を実現していた。また、テレビと端末とを無線でつなぎ、端末で視聴していたコンテンツをテレビの大画面でも視聴できるようにすることも検討されており、デモでは無線LANを使ったテレビと端末の連携が披露された。
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