Androidタブレットで業務を変える――個性派ぞろいの「Tablet Solution Award」受賞ソリューション

» 2012年02月29日 12時35分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 業務にタブレット端末を使う流れが加速している。使いたいときにすぐ使える機動性の高さ、PCなみの大画面と高い表現力、操作の分かりやすさが評価され、ビジネスの現場に急速に普及し始めている。

 また、PCなどの既存端末との置き換えではなく、新たな市場の創出につながる新しい使い方が出てきている点も見逃せない。徳島上勝町の葉っぱビジネスでのタブレット活用は、その好例といえるだろう。

 こうしたタブレットの普及を受け、インプレスビジネスメディアとNTTドコモが優秀なタブレット端末向けソリューションを表彰する「Tablet Solution Award 2012」を開催。142のソリューションの中から、グランプリと協賛企業賞、特別賞が選ばれた。

 授賞式で挨拶に立ったNTTドコモの神代氏は、「タブレット端末の販売には苦労している面もある。その一番の原因は、お客さんにタブレット端末の便利さや自由さを伝えられていないこと」と本音をのぞかせる。しかし、Android向けソリューションが充実してきたことで、タブレットならではの使いやすさや見やすさ、便利さを提案しやすくなってきたといい、「(2012年は)弾みがつくのではないか」と期待を寄せた。

タクシー配車をタブレットとクラウドで――「smarttaxi」

Photo 日本ユニシスはグランプリを獲得

 グランプリを獲得した日本ユニシスのsmarttaxiは、タクシーの配車に必要な仕組みを7インチ画面のタブレット端末とクラウドサービスの組み合わせで実現したソリューション。タクシー無線の代わりに携帯電話回線を活用し、車載端末にはGALAXY Tabを採用した。

 システムをクラウドで提供しているため、配車機能だけでなく、新たなオプションサービスを提供できるのも特徴の1つ。また、アナログ無線の停波が迫る中、デジタル無線への投資をためらうタクシー会社に新たな選択肢を提供しているのもポイントだ。

 審査員からは、タブレットならではの特徴を生かしている点や市場性、開発の着眼点で総合的に高い評価を得て、グランプリを獲得した。

 日本ユニシスの斎藤氏によると、このプロジェクトは会社からの指示で始まったものではなく、新たなビジネスモデルを作りたいという社員が自発的に集まって始まったものだという。今後は、「タクシーの利用者から“便利になった”と感じてもらえるような機能を拡充していきたい」と意気込んだ。

Photo smarttaxiのシステムイメージ

1つの画面に動画とスライドを同時配信――「SMASSh」

 Samsung電子の協賛企業賞を獲得したのは、シエロアスールの「SMASSh」。タブレットの画面上に、動画とスライドを同時に配信するシステムだ。タブレット端末向け情報配信ツールとして社内研修やセミナー配信、マニュアル/カタログ管理、デジタルサイネージなどのさまざまなビジネスシーンで活用できるという。

Photo シエロアスールの「SMASSh」

 画面デザインや操作性をタブレット端末に最適化するなど、使いやすさにも配慮している。コンテンツの配信をコントロールするための管理ツールも用意され、容易に運用管理や分析を行えるのも特徴だ。

 審査員から高い評価を得たのは、Androidならではの特徴を生かしている点と、管理ツールや解析ツールを用意するなど管理者側のニーズを満たしている点。シエロアスールはデザインクリエイティブ事業を展開してきた企業で、SMASShの開発にあたっては「(動画とスライドの2画面を)どれだけスタイリッシュに見せられるか、UIに集中して開発した」と話している。

その場所にいるような臨場感をタブレット端末で――「PanoPlaza」

Photo PanoPlazaを活用したバーチャルショップ

 タブレット端末で臨場感あふれるバーチャルツアーを――。ソニーマーケティングの協賛企業賞を獲得したのは、360度のパノラマ写真を使ったバーチャルツアーを構築できるカディンチェのソリューション「PanoPlaza」だ。

 カディンチェは空間表現技術を開発するITベンチャー企業。同社のパノラマバーチャルショップ構築ツールを利用すれば、パノラマ写真を使って“あたかもその場にいるような”感覚の仮想店舗やツアーを作成できるという。タブレットのタッチアクションでよりリアリティが高まるといい、既に大丸松坂屋百貨店やプラザスタイル、松丸本舗、ブータン観光局などでの採用実績がある。

 現場の様子をリアルに再現する高い技術力と、新たな市場を生み出す提案ができる製品であることを評価したと審査員。「不動産紹介やブライダルサロン、外食、駅、空港、博物館などの分野でも利用でき、ガイドやコンシエルジュとしての活用も期待できる。既存デバイスの置きかえではなく、新たな市場を創出するタブレットの使い方を提案できるソリューションという意味で期待が大きい」(同)

 カディンチェは社員6人のベンチャー企業で、うち3人がソニーの研究所出身。ソニー時代から撮影技術や画像処理技術、UIの作り込みに興味があったといい、現在も臨場感や室内の表現技術にフォーカスした開発を行っている。今後はステレオカメラの活用や、3Dモデリングの採用、音声への対応など、さまざまな可能性を検討しながら機能を拡張していく計画だ。

34カ国語で問診を――ヘルスライフパスポート

 タブレットの活用で医療機関の問診をスムーズに――。こんなコンセプトで開発されたのが、富士通の協賛企業賞を獲得したアイエスゲートの「ヘルスライフパスポート」だ。34カ国語、174項目の問診に対応し、インフォームドコンセント機能も装備。急病で運び込まれた外国人患者を受け入れる場合などにも役立つという。

 テレビ電話機能を使ったコールセンター連携も想定しており、遠隔サポートやテレワークなどにつながるソリューションになりうることや、海外でも通用する点などが評価された。アイエスゲートによると、そもそも視覚障害者をサポートするためのシステムとして開発しており、“コミュニケーションが難しいのは聴覚障害者も外国の人も一緒”であることから、多言語対応させたそうだ。


 タブレット市場は“iPadの一人勝ち”といわれているが、業務現場のニーズが多様になってくればくるほど、カスタマイズ性に優れ、端末ラインアップが豊富なAndroid端末が強みを発揮できるようになる。

 良質なAndroid向けソリューションが出そろい始めた2012年、AndroidタブレットがiPadの牙城をどこまで崩せるかに注目だ。

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