トラフィック対策からLTE対応の同報配信技術まで――MWCのQualcommブースMobile World Congress 2012

» 2012年03月02日 23時18分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 Mobile World Congress 2012のQualcommブースには、モバイル関連の最新技術や最新チップセットが展示されていた。

 LTE網を利用した同報配信技術からトラフィック対策として期待されるヘットネット技術、LTE時代の音声通話技術、クアッドコアのチップセットなどが披露され、発表されたばかりの次世代Wi-Fi規格「802.11ac」に対応するLSIもお目見えした。

LTE網で一斉同報配信を――eMBMS

 eMBMS(LTEブロードキャスト)は、特定の相手にデータを送るユニキャストと、多数の相手に一斉配信するマルチキャストをLTEネットワークの中で共存させる技術。いわばKDDIが採用しているBCMCSのLTE版といったものだ。

 QualcommがEricssonとともに開発を進めてきた技術で、最大のメリットは既存の周波数を利用して一斉配信ができること。マルチメディアコンテンツの配信はもちろん、ソフトウェアにバグがあった場合のアップデートや、緊急時のアラートなどにも利用できるという。オフロード対策としても期待できそうだ。

 ブースでは、スタジアムでデータを配信する際のトラフィックの比較を紹介。空のスタジアムにだんだん人が増えてきたとき、ユニキャストはネットワークへの負荷が高い割にスループットが低いが、マルチキャストはネットワークに多大な負荷をかけずに高スループットを実現していた。

Photo 空いているスタジアム(画面=左)に人が増えてくると、ユニキャストはパンク状態になるが、マルチキャストは安定している

3GからLTEへの過渡期の音声通話技術――SR-VCC

 VoLTEはVoice over LTEの略で、LTEネットワークで音声通話を行うための技術。ブースではEricssonと共同開発した3GPP標準のSingle Radio Voice Call Continuity(SR-VCC)のデモを行っていた。LTEと3Gとの間でスムーズな音声のハンドオーバーを実現するもので、LTEのエリアを出ても途切れずに通話できるという。

 LTEサービスを開始した通信キャリアが音声通話サービスを提供する際、現在は3Gの回線交換で実現するCircuit Switched FallBack(CSFB)という方法をとっている。いずれLTE網が完備したらVoLTEだけで音声通話に対応することになるが、SR-VCCはその過渡期の対策として開発された。

Photo VoLTEが普及期に入るのは2014年以降と予想されており、SR-VCCはそれまでの対応策(画面=左)。ブースには3G端末とLTE端末が用意され、中央にあるダイアルで3G/LTEを切り替えても違和感なく通話できた(画面=右)

トラフィック対策として期待されるヘットネット

 トラフィック対策として期待されるヘットネットとは、既存の周波数帯を最大活用する技術。マクロセルの中にピコセルを混在(ヘテロジニアス=異機種混在)させられるようにするもので、ネットワーク全体のキャパシティを上げられる。Qualcommは、米サンディエゴ本社で2011年夏にヘットネットのフィールド実験を開始しており、会場ではそのシュミレーションデータから作ったデモを紹介していた。

 3GPP Release-10に対応した端末がピコセルの圏内に入ると端末側が認識し、基地局間と協調しながらピコセルにつながる。3GPP Release-8端末は直接ヘットネットの恩恵を受けないが、Relase-10端末がピコセルにつながることでマクロセルがオフロードされてキャパシティが上がるため、結果として恩恵を受けられることになる。

Photo マクロセルだけにつながっている場合は各端末のスループットが2Mbps〜12Mbps程度だったのが、Release-10の端末がピコセルにつながったヘットネット環境では各端末とも11Mbps〜23Mbpsとなり、総スループット(画面右上)も2〜3倍に上がっている

IEEE 802.11ac対応のLSIも

 Qualcommは、最大通信速度1Gbps超の次世代Wi-Fi規格「IEEE 802.11ac」に対応するLSIも展示していた。Snapdragon MSM8960とペアにできるもので、802.11nとの互換性もあるという。今年第2四半期からサンプル出荷を開始する予定とのことだ。

 Snapdragonについては、性能にフォーカスした紹介を行っていた。Snapdragonの特徴は独自技術による非同期動作のマルチコア。それぞれのコアが独立して動作するためアプリによっては1つのコアだけで処理するようなことができ、結果として消費電力効率が改善されるという。会場では、デュアルコアとクアッドコアが独立して動いている様子を見せていた。

Photo 1.5GHzのデュアルコアSnapdragon(非同期)と同等の他社製品(同期)との比較。画面左上はコア1、コア2、それぞれの瞬間電力消費、左下は瞬間での省電力率、右上は各コアの周波数、右下は他社同等製品と比較した省電力率。他社と比較して約3割消費電力が削減されているのが分かる
Photo 初出展となったクアッドコアのSnapdragon。CPUコアはKrait。画面から4つのコアが独立した周波数で動いていることが分かる

 Snapdragonは「Scorpion」というCPUコアで登場したが、Qualcommは最新世代のKraitが入ったSnapdragonを出荷し始めており、搭載製品もまもなく登場する。Kraitでは製造プロセスが45ナノメートルから28ナノメートルに微細化されてCPUの性能が上がり、LTEのモデムも入ることになる。端末の性能や機能、消費電力がさらに改善されるとのことだ。

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