iPhone 5成功の影で泣く通信事業者――高額な販売奨励金が重荷に

» 2012年09月25日 19時17分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
Photo 3日間で500万台を販売するという、これまでにない売れ行きを見せたiPhone 5

 3日間で500万台を売り切ったと報告された米Appleの「iPhone 5」。しかしiPhoneが成功を収める陰で、世界中の通信事業者は複雑な思いを抱えているようだ。

 悩みの種は、1台あたり425ドルともいわれる高い販売奨励金。あまりに高額だが、iPhoneにはその条件を飲んででも提供する魅力があるというわけだ。Reutersなど複数のメディアが、通信事業者の複雑な胸の内をリポートしている。

 今や世界の通信事業者の多くが、モバイル端末と通信サービスの契約をセットで提供している。この事業モデルでは通信事業者が端末コストの一部を販売奨励金の形で負担するわけだが、この販売奨励金がiPhoneの場合、Androidなど他のスマートフォンと比較してかなり高いという。

 BarclaysのアナリストがReutersに語ったところによると、推定されるiPhoneの販売奨励金は約400ドル。Androidなど他の携帯電話はおおむね250ドル〜300ドルというから、iPhoneは他よりも最大60%高いことになる。DowJonesも、iPhone以外の最新機種が平均199ドルであるのに対し、iPhoneの販売奨励金は400ドル〜425ドルと報じている。

 販売奨励金が高ければ、通信事業者が負担分を取り戻すまでの期間が長くなる。Barclaysのアナリストの試算では、他のスマートフォンなら5〜6カ月後に収益に転じるところが、iPhoneの場合は収益発生まで9カ月はかかることになるという。

 それでなくても通信事業者には、次世代ネットワークの構築やトラフィック対策、新たなビジネスモデルの創出といった課題が山積しており、販売奨励金の負担は無視できない問題だ。Gigaomによると、Stifel Nicolausのアナリスト、クリストファー・キング(Christopher King)氏は2012年中に通信事業者が負担するiPhoneの販売奨励金が100億ドルに達すると予想し、これを理由にAT&TとVerizon Wirelessの株を格下げしている。

 通信事業者にとってiPhoneは、短期的には利益を生まない端末であり、利益を生むまで待つしかない。Deutsche Bankの証券アナリスト、ブレット・フェルドマン(Brett Feldman)氏によると、実際に収益をもたらすまでの期間は「唯一明らかにしているSprintの場合で、見通しは2015年」とDowJonesに語っている。

 だからといって、iPhoneを自社の端末ラインナップに入れないわけにはいかないのが難しいところだ。他社がiPhoneを売れば、顧客はそちらに流れてしまう。結果として、iPhone 5が人気を博すのは喜ばしいが、自社の収支を考えると手放しでは喜べず、iPhone所有者がデータ通信のヘビーユーザーになることを願うしかない――という心情のようだ。通信事業者の中には端末の買い替えサイクルを遅らせるような条件をプランに組み込む動きもあるようだ。

 AppleはiPhoneの販売当初から、端末を提供する通信事業者を自ら選ぶなど、これまでの端末メーカーとは異なる関係を通信事業者との間で築いてきた。通信事業者にとって、Appleとの複雑な関係はしばらくの間続きそうだ。

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