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日産が提案する次世代のEVとは? 5年間で2兆円を投資若者の車離れに一石(1/4 ページ)

» 2022年01月06日 13時44分 公開
[武田信晃ITmedia]

 これまでハイブリッド車や燃料電池車(FCV)などとの組み合わせが求められると主張し続けていたトヨタ自動車が2021年、電気自動車(EV)の世界販売台数を2030年に350万台とする目標を発表した。EVへの慎重姿勢を一気に払拭(ふっしょく)したい狙いが垣間見える。

 米テスラをはじめとして世界の自動車メーカーは一気に「EVシフト」を進めている。10年にEVの先駆けである日産リーフを発売した日産自動車。未来の自動車産業をどう見ているのかを取材した。

NISSAN CHILL-OUT(左)とクロスオーバーSUVのアリア

日産の過去、現在、未来

 日産は21年12月に、日産グローバル本社ギャラリーで、リアルとバーチャルを駆使して同社が描く最先端の電動化技術を体験できるイベント「Nissan Futures」を開催した。会場では、日産の電動化の歴史がよく分かるように展示されていた。

 過去のゾーンでは、1947年に製造された「たま電気自動車」の展示があった。これは戦後、GHQが飛行機の製造を禁じたことにより、後のプリンス自動車である立川飛行機が、多摩にあった工場を借りて製造したものだ。当時はGHQの統制下であり石油が市場に出回らなかったことから製造された。後にプリンス自動車は日産と合併するのだが、日産のEVのDNAがここにあったことが分かるようになっていた。

たま電気自動車(右)を含めた日産の電動車の変遷

 イベントではその後、EVがどのような構造になっているのか説明があった。日産リーフは、高性能の蓄電池機能を生かして電源としても活用できるという。特に地震などの災害により停電が発生した際にも、パソコンや携帯電話の充電、エアコン、照明などに使える非常用電源として3〜4日間は機能することを紹介した。

 そして、現在売られている2021‐22年の「カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した「ノート」「ノートオーラ」のほか、e-POWER搭載予定車両として中国で販売されているエクストレイル、欧州で売られているキャシュカイといった海外車両を展示。JAXAと日産が共同研究をしている「月面ローバ(月面探査機)」(試作機)も展示されていた。 

ノートオーラ

 未来の車の形を提案するコンセプトカーとしては、新開発したEVプラットフォームを採用した軽自動車のEV「ニッサンIMkコンセプト」を紹介。これは「水引」模様をデサインに取り入れるなど和を意識したモノにもなっている。また、次世代のクロスオーバーEVである「NISSAN CHILL-OUT(チルアウト)」というコンセプトカーが舞台の上に展示された。これは「日産が提案するこれからの時代のEV」だという。

ニッサンIMkコンセプト

 「Concept Car Virtual Stage」では、モーションキャプチャーとCGを駆使して2030年の車が目の前に現れるような体験型の企画もあった。その他「ARIYA Single Seater Concept」という未来のEVレーシングカーのスタイリングを考慮したモデルの展示などさまざまな仕掛けがいくつもある。

ARIYA Single Seater Concept

 イベントを開催した狙いについて、日産のグローバルブランドエグゼキュ―ション&エンゲージメント本部の青山真理子主担は「長期ビジョンとして『Nissan Ambition 2030』を掲げました。その核となるのが電動化です。イベントを通して日産の挑戦の歴史を体感してもらいたいというのがポイントです」と話す。

 若者の車離れが進んでいるといわれて久しいが、EVを含めて車をいかにして若い世代に訴求していくのかを問うと「移動のための道具ではなく、移動時間と空間を楽しむ体験をしてもらうことが大事だと思っています」という。「インターネットにつながる車で、自分の体験をシェアできるようになっていくはずなので、お客さまのニーズに応えていきたい」とも話した。

電動車の仕組みを説明
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