これだけEVシフトへの潮流が世界的なものとなると、ガソリンを燃やして動く内燃機関の運命はどうなるのだろうか。
「EVの普及にはインフラ整備や電力の再生エネルギー化など社会基盤を含めた長期的な投資が必要となるため、日産はカーボンニュートラルを進めるもう一つの柱としてe-POWERを位置付けています。e-POWERの良さは燃費の良い定点でエンジンを回し続けられるところです。そして、世界最高レベルの熱効率50%を実現する次世代のe-POWER向け発電専用エンジンの開発に取り組んでいます」
実際にアクセルを踏むと内燃機関とEVでは感覚が全く違う。
「GT-R R35の高性能エンジンの開発に携わったエンジニアがリーフのパワーユニットに携わり、EVでも内燃機関のようなリニア感のある、楽しい走りの実現に取り組みました。カーボンニュートラルが大変重要なのはもちろんですが、運転のワクワク感も大切にしていきたいです」
これまでわれわれが慣れ親しんできたガソリン自動車の感覚をEVでも再現できるよう努力している。
EVシフトと同時に自動車業界の大きなカギとなるのが自動運転技術だ。しかし、ここのところCOP26が開催されたこともあり、CO2削減の観点からEVのトピックばかりで自動運転の話が少々埋もれてしまった感がある。
今回のNissan Ambition 2030の中でも自動運転についてはEVと比べると少ない。人工知能(AI)とも密接にからむ自動運転への取り組みについて尋ねた。
「日産は運転支援技術『プロパイロット』の拡大にも力を入れています。プロパイロットはドライバーの意思を尊重しながら、車両コントロールと安全性の向上を図る技術です。既に100万台以上の車に搭載されていますが、26年までに250万台に搭載したいと計画しています。
日産はゼロ・エミッションだけではなく、運転支援技術や車両を知能化する技術を通じてゼロ・フェイタリティ、交通事故による死亡者を出さない社会の実現を目指しています。今後も認知、判断、操作などの運転行動を支援する技術は大きく進歩していきます。なかでも、認知技術を次のレベルに高めることが重要です。そのために日産は高性能な次世代LiDAR(離れた場所にある物体の形や距離を、レーザー光を使って測定する技術のこと)の技術開発に取り組んでいます。
次世代のカメラ、レーダーなどと組み合わせることで、車両周囲のリスクを遠方まで高い解像度で検出することにより、リアルワールドの事故のさらなる軽減に寄与します。この技術は20年代半ばまでに開発を終え、順次新型車に搭載を開始し、30年度までにほぼ全ての新型車に搭載することを目指しています」
都市部を中心に若者の車離れが進んでいると言われ、人口減少も進む日本。このままでは自動車会社にとってまさに死活問題だ。以前は車の所有はステータスだった一方、Z世代の「欲しいものリスト、大事なものリスト」に入っているのはスマートフォンであり、車ではない。
一方でZ世代は環境問題に敏感であることから、日産は投資に力を入れている。若者を引き付ける車を作れるかどうかが最終的には生き延びるポイントとなりそうだ。
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