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シマンテック:トータルセキュリティを武器に複合型脅威へ立ち向かう (2/2)

ZDNet セキュリティに対するユーザーの意識はどのように変化しているでしょう。以前から国内のセキュリティ意識は低いと言われていますが?

成田 確かに遅れている部分があるということは事実です。例えば米国と日本でITに投資する金額の比率が100対25なのに対して、セキュリティへの投資は100対10という数字が出ています。大企業の場合はそれでもアンチウイルスやファイアウォールなどはかなり整備が進んでいますが、最近大きな問題になってきているIDS、すなわち不正侵入検知・対策に関しては残念ながらまだまだ遅れていると言わざるを得ません。しかしながら、先にもお話したとおり売上から言えば平均50%もの数字で伸びており、これはすなわち皆さんのセキュリティに対する意識の高まりの表れととらえてよいのではないでしょうか。

「安全なインターネット環境を顧客へ提供することがわれわれの使命」と成田明彦代表取締役社長

 セキュリティへの投資は、業務効率を上げるわけでもなく、コスト削減をするわけでもありません。この不況下で、企業がセキュリティにかけることのできる金額はごくわずかなものです。また、その専門家を雇うあるいは育てるといったことも困難です。そのような場合でも、できる限り顧客のニーズに応えられることが重要です。特に中小の企業やSOHOなどでは、運用や費用の面からも、ワンパッケージのアプライアンスのような製品が有効になってくると思います。

ZDNet 前向きにセキュリティを考えれば、インターネットを戦略的に利用するための必要な投資、ということもできるのではないでしょうか?

成田 まさしくその通りです。インターネットを使ったビジネスモデルはいまや不可欠とも言え、それに対する安心感は立派なビジネスの武器になります。国内では昨年から情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)適合性評価制度なども立ち上がり、そのようなセキュリティに関する認証取得は一種のブランドになるという時代がやってくるでしょう。

ZDNet 2002年はISPとの協業もこのジャンルにおける定番サービスになってきましたが、この流れを説明していただけますか?

成田 ひと口にセキュリティ対策と言っても、さまざまな場所においてさまざまな方法が考えられます。特にコンシューマ市場では、ここ数年でユーザー層の裾野が広がってきました。インターネットでWebアクセスや電子メールを使いたいという目的で、パソコンを購入するユーザーが増えています。その中には家庭の主婦などさまざまな層の方々がいらっしゃいます。そのような方々が、パッケージを購入してインストールしてという作業を行うには、非常な苦労を伴う場合もあります。そこで、こういった煩雑さを省くためにISPに接続した段階で自動的にウイルスチェックが行えるサービスが注目されてきています。このように、ユーザーの知識レベルに応じてセキュリティ対策を提示していくこともこの業界では大切なことだと考えています。

ZDNet 2003年、より大きな脅威に備えるためにはどうしたらよいでしょうか?

成田 従来のウイルスなどは個人が発信元というケースが多かったのですが、今後、例えばサイバーテロなどのように社会不安を巻き起こすプロフェッショナルによる複合型の脅威の可能性が高まっていくと考えられます。

 企業においては、所持している情報資産が企業活動に対してどういう価値があるのか、それを認識しておくことが重要です。それによって企業ごとのセキュリティ・ポリシーを設定し、対策を講じていく必要があると考えます。シマンテックではAlert、Protect、Response、Manageという4つのステージで考えていますが、こういったセキュリティ・ライフサイクルをトータルに考えていくことが、これからより重要になっていくでしょう。

 それから、セキュリティに関しての教育も大きな課題の1つだと思います。小中学校の授業におけるパソコン教育でも、インターネットの問題点を認識させたり、誤った使い方を防ぐといった指導が必要なのではないでしょうか。つまり、自動車で言えば交通安全教育みたいなものです。

ZDNet 2003年の日本経済に一番必要なものは何でしょう?

成田 いまの日本の経済はお金が回っていないというか、個人の貯蓄が動いていないというのが現状ではないでしょうか。将来に不安があるから貯蓄をしよう、その結果景気が回復しない、という図式があると思います。そのため国の政策として、国民全体が安心してお金を使えるという状況づくりと、減税をはじめとする、個人が使えるお金を増やすという手法が必要なのではないでしょうか。

 それからセキュリティの分野で見れば、国によるe-Japan構想を前倒しして、大きく予算化をすることが望まれます。そうすれば、地方自治体を中心にしてITの市場が活性化され、ひいては経済全体の活性化に寄与するのではないかと思います。

2003年、今年のお正月は?
「私は基本的に、お正月とお盆休みは自宅にいる、というポリシーを持っています。その理由は、端的に言えばどこへ行っても人がたくさんいて、お店は高くてサービスが悪いからです(笑)」と成田社長。ところが、「それから私はまた、雷と雪の日以外はゴルフをやるというポリシーも持っています。今回のお正月は暦の上では9連休ということですから、そのうち5回ほどゴルフに行く予定です。あくまで健康のためですが」と見事に切り返した。ちなみにハンディを公表すると差しさわりがあるとのことなのでここでも秘密にしておくが、プレイした回数だけはセミプロ級とのこと。

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[聞き手:柿沼雄一郎、高橋睦美,ITmedia]


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