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シャープ:VoIPとワイヤレスが携帯情報端末普及へのキー (2/2)

ZDNet 北米のPalm OS搭載機が携帯電話との複合型デバイスとして進化していますが、国内においてもPDAは携帯電話と融合していくと思いますか?

宇野 北米ではiモードのような携帯電話を使ったインターネット利用の仕組みがありませんから、PDAがそれに代わるものとして電話と複合化するような動きがあることは事実です。これに対して、第3世代(3G)携帯電話のインフラがどうなるのかという予測が現状では立てにくいという面もあるのですが、日本市場はあくまでもインターネットで行く、というのがわれわれのスタンスであり、おそらくそうなるだろうと考えています。つまり、国内ではデータもボイスもすべてIPを使ったやり取りが主流になっていくのではないかということです。そうなれば、PDAが携帯電話の市場を逆に食っていく、という状況も考えられます。

「PDAはコミュニケーションのためのツールとして、これからも進化していく」と通信システム事業本部 モバイルシステム事業部長の宇野裕史氏

 携帯電話における課題は料金の問題です。月に数万円もの通話料は、ユーザーに大きな負担を与えます。これを解決するのが、VoIPという技術です。インターネットを使って、音声伝達をIPで行えるようになれば、わずかな固定料金で長時間の通話も可能となります。これと、同じく2002年に爆発的な普及を遂げた無線LANを使えば、いまの携帯電話とまったく遜色のない使い勝手が実現できるわけです。

 これなら、たとえPDAの価格が4万円だとしても、携帯電話の料金を払い続けるのとどちらが得なのかということを判断してもらえると思います。今年は、こういったデバイスの発表も考えています。

ZDNet 企業が、ビジネスのツールとしてPDAを重要視するという状況にはいまだ遠いような気がします。PDAにはどのようなバリューが必要でしょう?

宇野 企業ユースという面では、シャープとしてはまだ次のビジネスの種をまいているという段階です。ビジネスのツールとしてPDAを考えたとき、どういった分野での成功が一番望めるか。それは、常時接続やVoIPによって実現されるIM(インスタントメッセージング)の市場ではないでしょうか。そうすれば、ボイスに加えて電子メールやそのほかのビジネスツールも利用できるPDAが、携帯電話にも代わる強力なツールになっていくのではないでしょうか。

ZDNet 同じくPDA市場で健闘している、ソニーのCLIEについてはどのようにご覧になっていますか?

宇野 国内でのライバルはやはりソニーですが、戦略としてはわれわれと同じような考え方に沿ったところもあるのでは、と思っています。ソニーもプラットフォームは世界共通のPalm OSという選択をされていますが、独自性のあるハードウェア作りへ非常に真剣に取り組んで、多くのユーザーニーズに応えようとしています。実は私自身、ソニーの吉田さん(ソニー ハンドヘルドコンピュータカンパニーの吉田雅信プレジデント)ともよく話をします。残念ながらまだ2002年には結果が出ていませんが、シャープとソニーで、国内のPDA市場を引っ張っていこうという気概でいます。

ZDNet PDAに音楽再生機能は必須なのでしょうか?

宇野 PDAの使われ方がより多角的になってきた現在、もはや必要不可欠でしょう。デバイスを何個も持ち歩く必要がなくなりますし、実際に私も出張などの際にはこれで音楽を聴いています。

ZDNet 2003年、日本の企業にはどのような努力が必要だとお考えですか?

宇野 この不況をどうすれば打破できるのか、それはなかなか難しい問題ですが、そんな不況の中で、どのようなものづくりをすればお客様に喜んで買っていただけるか、これはメーカーとして心得ておかなければいけないところです。

 日本人はいま、無駄なものにはお金を払いません。徹底した節約モードに入っています。ただし、節約のための出費は厭いません。それとともに、自分が認めた贅沢に対してはお金を使うという面も持っています。いま、PDAを買ってくださっているのは、最新機器に興味を持っているユーザーです。まずこういった既存のユーザーに対して、常に最新のテクノロジーを取り入れた刺激のある製品を作らなければなりません。一方で、一般のお客様に対しても、コスト意識を刺激する製品を作っていくことが大切だと思います。

2003年、今年のお正月は?
「個人的には映画を見るのが趣味なんです。普段はあまり映画を見るという時間も取れませんから、この正月休みは自宅でゆっくり映画を見ようと思います」という宇野氏。その一方、ソフトとハードを手がけていた技術屋出身ということもあり、「Zaurusのソフト作りにもトライしたいですね。いつもまとまった休みのときには挑戦するのですが、あれこれ勉強して開発環境をインストールしたところで、休みの期間が終わってしまうんですよねぇ……(笑)」とのこと。この休みにはぜひゆっくりとプログラミングに挑戦していただきたい。

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[聞き手:柿沼雄一郎,ITmedia]


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