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SAPジャパン:2003年、ERPをベースにピカピカなシステムを提供するSAP (2/2)

ZDNet ERPではトップダウンの導入が必要なのに対し、日本の大企業にはボトムアップ的な組織が多いことが原因の1つという指摘もあります。

藤井 社長がトップダウン型経営を行っていることが多い日本の中堅企業に、SAPを理想的な形で導入している事例が多いことからも、その指摘は当たっているかもしれません。ただし、本質的にERPは必ずしもトップダウンである必要はありません。ERPの要件は、データ整備、組織編成の定義、業務プロセスの確立の3点にあります。このアーキテクチャをしっかり設計していれば、データが集まる人イコール経営者である必要はないのです。ポータルなどを構築して、集まってきたデータを処理する担当者を置くような、アメーバ型の組織でも機能するわけです。

ZDNet 営業データから需要予測、生産計画を立て、販売、決済といった一連のプロセスをITで電子的に回していくようなシステムを構築する場合に、課題となることはありますか?

情報ツールが発達する中、「経営者は必要な情報を取捨選択できなくてはいけない」と話す藤井社長

藤井 特に大企業では、レガシーシステムが残ってしまうことが多い。このような異環境のシステムをつなげていく場合には、ミドルウェアの整備がカギになってきます。もう1つは、ある意味で自己否定になるかもしれませんが、ERPは正しい情報を早く提供することはできても、それを基に何かを判断するのは人がやること。その意味で、「判断する人」が必要以上にソフトウェアに頼ろうとするのは問題があります。実際の市場動向をつかむ感覚は持たなくてはいけません。

ZDNet 2003年はどんな年になりますか?

藤井 2003年は、中堅企業へのSAPの浸透を図ります。2つ目は、既にERPを導入している大企業顧客に、CRMやSCMなどを提供して、既存の投資をもっとピカピカにしていくことです。3つ目は、SAPが今まであまり関わってこなかった、金融機関や公共機関の市場に本格的に進出することを考えています。

ZDNet SAPの製品を導入するエンジニアにメッセージはありますか?

藤井 システムの需要側はカスタマイズを求め、供給側はノンカスタマイズの標準品を導入しようとするもの。一般に、現場ではそのせめぎあいが起こっています。そこで重要なのは、こだわってカスタマイズするところと、割り切って標準化するところをはっきりさせることです。こだわる部分は、顧客企業にとって付加価値創出の源泉になっているかどうかで判断してほしい。

ZDNet カスタマイズにこだわる顧客にパッケージを勧める上での「殺し文句」は何でしょう?

藤井 パッケージを利用することは、多くの企業の情報システムにとって自己否定になります。しかし、世の中は確実に標準化の流れにある。「必要なところは標準化できる企業でなければ滅びる」これが殺し文句です。

2003年、今年のお正月は?
「正月は何もしません」と笑う藤井氏だが、子どもとスキーをしに八方尾根には出かけるという。最近はゴルフに凝っているが、場所や時間に縛られるのが好きではないため会員券は持たない。同じ理由でバーでボトルキープをしたりもしない。「好きなときに好きな場所にこだわりなく出かけたい」という同氏の言葉は、標準パッケージを提供するSAPの社長として象徴的だ。

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[聞き手:怒賀新也,ITmedia]


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