入社して1年ほどが経過すると、営業としての経験や実績を積み重ねていく。それと同時に仕事に対する疑問が浮かんでくる。大企業の新入社員は「イメージしていた仕事とは違う」、ベンチャー企業の新入社員は「成果も出せるようになったし、目標ばかり追いかけるのはどうか」といった具合だ。
その時に頭をよぎるのは「転職」という2文字だろう。だがここはぐっとこらえて欲しい。早期の転職は、仕事を通じて得られる醍醐味をみすみす逃してしまうようなものだ。
仕事に疑問を覚える大企業の新入社員は、まだ覚えるべきことがたくさんあり、本当にやりたいと思う事はその先にある。個人で数字を達成できるようになったベンチャー企業の新入社員は、「後輩育成」というマネジメント領域に仕事の幅を広げられるチャンスが待っている。
わたしがルート営業として大規模の顧客を担当していたころ、一番面白みを感じたのは「情報システムを駆使して企業の経営にどう影響を与えていくか」という点だった。こうした計画立案にかかわれるのは、多くの場合、主任以上の役職者に就任してからだ。
また新規開拓営業職としてパッケージ導入などの実績を積み上げた後、仕事の質をさらに高められるかは「チームをけん引できるか」という点にかかってくる。チームリーダーとして後輩の育成に努め、マネジャーになった時点で、新たな経験が始まる。
やりたい仕事を追求したり、広く一般に影響を与えられる仕事をしたりすることは、勤続3年という下積みを終えた先の世界に待っている。それを経験せずに別の場所に飛び出しても、次の企業でまた下積みを経験しなければならない。
新入社員として求められる行動を理解し、実践する。そうして3年が経過した頃に、改めて自分の目標や価値について考え直してみる。こうした堅実な判断が営業職の新入社員には不可欠だ。1つの企業で下積みを徹底すること、それがキャリアの階段を上るスタートラインに立つための条件になるはずだ。
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