NHKメディアテクノロジーは、11月の国際放送機器展(InterBEE)開催に合わせ、同社の「創立30周年記念技術展」を幕張メッセで開催する。世界初の実写8K 3D作品「WISH」をはじめ、医療現場向けの「4K 3D外科手術撮影システム」、東日本大震災の3Dドキュメンタリー作品「大津波 3.11 未来への記憶」(予告編)など、3D映像の価値を再確認できる展示をそろえる。
NHKメディアテクノロジーは、放送技術を開発していたNHKテクニカルサービスと情報システム技術のNHKコンピューターサービスが統合され、2008年に発足。30周年というのは前身であるNHKテクニカルサービスの設立年(1984年)による。近年では8Kや4Kに関する技術開発やコンテンツ制作に力を入れているが、一方で過去25年以上にわたって継続しているのが3D映像制作だ。
世界初の実写8K 3D作品となる「WISH」は、ピエロと少女の不思議な世界を描いた短編(4分間)ファンタジー。高精細映像に関わる部分は8K制作の経験が豊富なスタッフ、また立体調整は過去25年間にわたって3D技術を研究してきたステレオグラファーが担当する。撮影には自社開発のビームスプリッター3Dリグ(撮影機材)を8K用に改造し、アストロデザイン製8Kカメラを用いた。音響はアンブレラマイクによる多チャンネル収録を行っており、展示会での上映時では22.2ch再生を楽しめるという。
一方の「4K 3D外科手術撮影システム」は、JVCケンウッドとカールツァイスメディテックと共同で撮影したもの。手術用顕微鏡を使った脳神経外科手術では、術者と助手が顕微鏡の立体像を見ながら細かい手術を行うが、ほかの手術チームは視認性の低い2Kディスプレイでモニタリングしている状況だった。そこで同社では、手術用顕微鏡に小型4Kカメラヘッド(CCU分離型)2台を装着し、左目用/右目用にそれぞれ4K/60p映像を撮影、リアルタイムでライン・バイ・ライン変換を行い、4Kディスプレイで鮮明かつ立体的なモニタリングを可能にした。
「術者の外科医が見ている手術顕微鏡とぼ同じ画角、立体感で看護師や医学生もモニタリングできて、非常に喜ばれた。医療、教育用として提案していきたい」(担当者)。手術は4Kで6例、8Kでも3例の撮影を行っており、10月の日本脳神経外科学会第73回学術総会でも公開される予定だ。
「大津波 3.11未来への記憶」は、東日本大震災の発生直後から3年間にわたって撮影している大型ドキュメンタリーの最新版だ。これまでに7本の3D作品を制作しており、2Dでは感じとれない圧倒的な実体感と説得力を持って被災地の現実を捉え続けてきた(→関連記事)。
担当プロデューサーの智片通博氏は、「被災地は今、驚くべき速さで変容している。最初はがれきだらけだった場所が広大な野原になり、今では随所で“かさ上げ工事”が行われている」と話す。「震災から3年が経過し、ふと気がつくと、あの年に生まれた子ども達が話をするほどに育っている。記憶を風化させないため、“次の世代”にどう伝えていくかを考えなければならない」(同氏)。
同社では、「大津波3.11未来への記憶」の予告編(5分間)を技術展で上映するほか、本編を2015年3月に仙台で行われる「国連防災世界会議」の会場、および神戸にある「人と防災未来センター」で公開する予定だ。さらに智片氏によると、国内外の3Dシアターでの公開も検討しているという。「一般の映画館で上映することが難しいのは承知しているが、ぜひ実現させたい」(智片氏)。
NHKメディアテクノロジー「創立30周年記念技術展」の会期は、「国際放送機器展」(InterBEE)と同じ11月19日(水)から21日(金)の3日間。会場は千葉・幕張メッセの国際会議場2階コンベンションホールA。3D以外にも98インチの8Kモニター3台を連動させた「超ワイド高精細画面」、4Kデジタルサイネージ技術など、30点の展示が予定されている。
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