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審査委員長直伝! 第9回「ブルーレイ大賞」レビュー(後編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(6/6 ページ)

» 2017年03月09日 06時00分 公開
[天野透ITmedia]
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グランプリ「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」

――さて、最後にグランプリです。2016年の“日本一のブルーレイ”は何でしょう?

麻倉氏:数々のブルーレイの中から2016年のベスト・オブ・ザ・ベストに輝いたのは、ベストBlu-ray 3D賞を受賞した「スター・ウォーズ フォースの覚醒」です。多数のシリーズが出ている大人気のスター・ウォーズシリーズですが、意外なことにブルーレイ大賞のグランプリは初受賞になります。

――第4回の因縁以来、でしょうか(苦笑)

麻倉氏:私が思うに、スター・ウォーズこそオーディオビジュアルにおけるブースターコンテンツです。試しにオーディオビジュアルの歴史を紐解いてみましょう。

 1981年9月に発売されたLDは一時伸びた後に低迷し、第2世代のLDプレーヤーが真空管からトランジスタになって安くなった時に、一緒に出てきたのがエピソード4のLDなのです。これが大ヒットして一緒にプレーヤーも大いに売れました。DVDは2001年のエピソード1からで、この時は「マトリックス」と同時期でした。BDは2011年に「コンプリート・サーガ」としてBOXが出ています。が、この時は“例の事件”がありました。あれから5年の今回、ようやく大賞と相成ったわけです。“BDシェア51%”という年に大賞を受賞したことに、何とも歴史的な符号を感じますね。

――「世界で最も贅沢なインディーズ映画」ともいわれるスター・ウォーズですが、ジョージ・ルーカスが初めにエピソード4から制作したのは映像を含めた製作技術が当時のものでは監督の望むレベルになかったからともいわれています。映像技術の発達史の節目にスター・ウォーズがあるのは、確かに必然性を感じます

麻倉氏:審査に関してですが、2D/3Dを含めて「フォースの覚醒」の世界がグランプリを獲得しました。最終審査は複数タイトルで競ることもままありますが、今回は圧倒的総合力により満場一致で選出されています。スター・ウォーズの撮影技術ですが、エピソード4、5、6はフィルム、1、2、3はCGとなっており、撮影時期の時代性を感じさせます。最初のエピソード4はフィルム的な自然の質感がありますが、5、6になるとフィルムの中でも鮮鋭感を重視するようになります。CGになったエピソード1はボケたようなのっぺり感があり、若干の未熟さも感じるのですが、3になると結構ディテールも出てきます。

 エピソード7にあたる今回はエピソード4のフィルム的自然な感じがコダワリだったらしく、極力CGではなく実写で行こうとなりました。画質もCG調ではなくエピソード4の画質的世界観が現代に蘇ったような実写的な感じで、解像感などは当然昔よりも良いですが、でも質感はバランスが良く、ミレニアム・ファルコン号や砂漠に佇む宇宙船、背景の隅々に至るまで、非常に緻密に描かれています。CGを使わずセット撮影された人物たちや、宇宙船の内部の質感や風景への溶け込みもたいへん見事ですね。音響も5.1chサラウンドの良さが出ていました。

――余談ですが、スター・ウォーズシリーズは黒澤明監督などの時代劇に強い影響を受けていることは有名ですよね。日本の文化である時代劇が姿カタチを変え時代を飛び越えて世界的な作品になるというのは、何とも面白い文化現象だと感じます

麻倉氏:今回受賞した「3D コレクターズ・エディション」には2Dディスクも同封されており、2Dの良さと3Dの良さのどちらもが世界最高峰ということで、圧倒的支持を受けました。原点のエピソード4のアナログライクな良さを尊重し、BDの特長を最大限に生かしてデジタルへ見事に昇華させたという意味でも、グランプリに値する大変素晴らしい作品です。ハリウッド映画の傑作として、また映像技術のマイルストーンとして、ブルーレイコレクションに加える価値が大いにある1本です。

授賞式に登壇したウォルト・ディズニー・ジャパンの田中さんと審査委員長の麻倉氏で、栗山さんを囲むフォトセッション
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