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「toio」をきっかけにソニーも変わる? 体感型おもちゃが示す本当の価値(3/3 ページ)

» 2017年06月21日 06時00分 公開
[山本敦ITmedia]
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toioはロボットプログラミングへの興味もかき立てる

 ソニーは今回、初めて「東京️おもちゃショー」にブースを構え、全4日間の期間にわたってtoioを紹介した。ブースのスタッフとして説明に立った田中氏は、来場者から予想を超えるほど良い反響があったと満足げな笑みを浮かべた。子供たちが熱中しながらtoioを遊ぶ様子に励まされただけでなく、会場に子供を連れてきた親の中にも、toioは子供の創造力を育むのに最適な遊び道具として太鼓判を押す声が多くあったという。

ハンドメイドの工作を無造作にキューブの上に乗せて遊んでもいい

 一方で「toioはプログラミング学習にも使えないのか」という質問や意見も多く投げかけられたという。日本では2020年から、小学校でプログラミング教育の必修化が検討されていることもあり、親世代のロボットプログラミングに対する関心がいま急速に高まっているからだろう。toioのプログラミングは外部に開放されておらず、それどころかスマホやPCにつなぐ必要もないデバイスだ。その理由は「おもちゃとしてシンプルに楽しんでほしいから」だと田中氏は説く。ただ一方で、toioが子供たちのロボットやプログラミングに対する興味を喚起するきっかけとなればうれしいと田中氏は言葉を付け足した。

 toio本体の販売価格はオープンだが、想定売価が2万円前後という価格設定は悪くないと筆者は思う。親が子供のために、ロボット学習のきっかけを作るため買い与えるおもちゃとしてはけっして高額すぎないし、5000円前後のカートリッジでコンテンツを買い足せば長く遊べる。

 toioの商品としての品質について、ソニーでは全てのSAPから誕生した商品と同様に「品質オフィサー」と呼ばれる社内で認定されたエキスパートチームの厳しい監督を受け、完成度と安全性を細部まで検証しながら作り込んでいる。田中氏は「ぜひ安心して楽しんでほしい」と呼びかける。

toioをきっかけにソニーが変わる?

 最後に田中氏へ、今後のスマート・トイの可能性について尋ねてみた。今回ソニーが開発したtoioはインターネットにつながらないので、いわゆる「IoT」そのものを形にしたデバイスではないかもしれないが、これはおもちゃとしての使いやすさを優先したためであるという。ただ一方で田中氏は「おもちゃショーに出展されていた各社のおもちゃを見渡すと、インターネットにつながって新しい遊びが体験できるスマート・トイも増えていると感じました。おもちゃとIoTが結びついて大きな進化を遂げる時代はすぐそこまで来ていると思います。当然、ソニーもその分野はしっかりと研究開発を進めています」と語り、スマート・トイの開発に向けて積極的に取り組む姿勢をアピールしている。

 ただtoioそのものも、商品の中で完結してはいるものの、先端にあるデジタル技術を生かした機器同士のネットワークをベースにしているスマート・トイと捉えることができる。toioコンソールを司令塔として中軸に据え、無線通信やセンサーの技術が媒介となってキューブとリングコントローラーが連携して、新しい遊びを生み出しているからだ。

 toioにはパワフルな処理能力と通信機能が搭載されているので、今後さまざまなアイデアと結びついて新しいエンターテインメントを作り出せる方向性が見えてきたという田中氏。もともとtoioは「技術者の頭だけで作らないこと」も1つの目標だったそうだ。「今後は人々を楽しませる術を熟知されているおもちゃメーカーのパートナーや、クリエイターの方々とコラボしながら、新しいエンターテインメントを育てていきたい」と田中氏が意気込む。今回、「First Flight」ではtoioとLEGOのブロックをセットにしたパッケージ販売が行われている。また新製品発表の際には玩具メーカーのバンダイとのコラボレーションが実現することも明らかになった。

 これまでSAPのプロジェクトからは数々のユニークな製品が発表されてきたが、いずれもオトナ向けのガジェットが中心だった。プロジェクト初の子供向けおもちゃであるtoioは、来る新しいエレクトロニクスの時代に向け、いよいよ変貌を遂げるソニーの第一歩なのかもしれない。

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