「WINの良さをなるべく多くの人に知ってもらいたい。広く、嫌われることなく受け入れられるために、デザインはスタンダードなスマートなものにした」
京セラ製の1X WIN端末「W21K」をデザインした、同社のデザイナー板野一郎氏は、コンセプトをこのように話す。
同時に発表されたハイエンド端末の陰に隠れがちではあるが、W21Kは“WINを普及させる”というKDDIの戦略上、重要な役割を担っている。
新サービスの普及には、いわゆるエントリーモデルの存在が必須だ。特に「WIN端末はいろいろな機能が入ってきて大きくなる傾向にある」(W21Kの企画を担当した田辺正昭氏)ため、サイズやデザインが重要になってくる。
W21Kでも「コンパクトなサイズに抑えるのが、重要なポイント」(田辺氏)だったという。そのために、CPU構成もQualcommのベースバンドチップ「MSM6500」のみとした。ハイエンドの「W21S」や「W21SA」が、動画専用チップ「T4」やアプリケーションプロセッサ「SH-Mobile」を搭載したのに対し、ワンチップにすることでコンパクトかつ低価格を実現した。
その結果、115グラムとほかのWINよりも10グラム以上軽く、幅も49ミリと握りやすいサイズを実現。角を落としたくさび形のフォルムの採用により、ポケットに入れたときなどに収まりがよく、25ミリというスペック値以上の薄さ感を達成した。
表に向いた液晶が回転してダイヤルキーが現れる「リボルバースタイル」など、新たな携帯の形状にも積極的な京セラだが、W21Kでは敢えてスタンダードな折りたたみ型を採用した。
スタンダード機だけにキャッチーな仕掛けが難しかったW21Kだが、その分「クオリティ面は底上げした」と板野氏。
例えば、表面の塗装は通常2層のところ、下地の上に色を載せてクリア層(UV)を重ねる厚膜の3層塗装としている。みずみずしい質感が得られるが、「1層目を塗って、乾いてから2層目を塗る。塗装中にゴミが入ったり、厚く塗るので気泡が入ったりと難しい」(板野氏)。
カラーのコンセプトは「普段身につけてもらうものだけに、カジュアルにアパレル感覚に」。例えば各色とも内側は色を変えているが、単なるシルバーではなく金色に輝く。「金属感を出さず、布のシルクの光沢を目指した」という。
ブルーの端末では、「スペクトラリング」という携帯電話で初めて使われる光輝材が使われている。「太陽光に当たると、七色に光る」というものだ。このあたりは、あえてコストをかけた部分だと板野氏は胸を張る。
十字キーの表面にも、中央から放射線状に細い線が無数に走る旭光模様を採用。高級時計の文字盤などに使われる模様だ。職人が1本1本引いたラインを、転写して作っているという。
KDDIは6月末時点で57万契約を数えるWIN契約者数を、2005年3月には300万契約まで増やす計画だ(7月29日の記事参照)。
W21Kのようなエントリーモデルへの期待は大きいが、現状のau商品ラインアップの中では、販売に苦しむ面もある。「1Xの高機能機と勝負しないといけない。上にはWINの高機能機もある。難しいゾーンにいる」(商品企画係副責任者の矢島孝之氏)。
現在のところ、ハイエンドのWIN端末「W21S」「W21SA」は発表当初の想定価格よりも安価に販売されており、「W21K」の価格差はそれほど大きくないことも理由の1つだ。
とはいえ、「店頭で持って、いいサイズ感だな、と思ってもらえること」を重視しただけに、“WIN目当て”ではないユーザーが携帯を買いに行ったときに、W21Kの実力が表れる。
「キャッチーな部分はないかもしれないが、買った後の満足度は高い」と、板野氏はW21Kの魅力を表現した。
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