ユーザーの目に触れない部分で、携帯電話がどんどん“PC化”している。PCの“Wintel”のように、ハードウェアやOSの共通化が進み、メーカー間の差異が小さくなる傾向が加速しているのだ。
「OSの統一、CPUの統一などによって、携帯電話はPCと同じようになっていく。開発者としては面白くない部分です」
ある端末メーカーの開発者は、この状況をこう評す。これまでの端末開発は、ハードウェアからソフトウェアまで独自で作り込んできた。2004年は、端末開発のあり方の変化が始まった年だといえる。
“PC化”の引き金を引いたのは、3G携帯電話の開発負担の大きさだ。通信方式自体の複雑さに加え、高速な通信能力を生かしたアプリケーションが要求されるため、ハードウェア、ソフトウェアへの要求はこれまでになく厳しいものとなっている。
反面、端末開発コストの削減も通信キャリアから迫られており、“高性能なものを安く、そして早く”開発しなくてはいけないのが実情だ。
解決のために通信キャリアが取った施策が、ハードウェアやOS、アプリケーションの共通化。端末メーカー側も、協業を強化して開発負担を減らす動きに出ている。
携帯メーカー各社は、もはや単独での端末開発が難しくなっている。
2001年の、NECと松下通信工業(現パナソニックモバイル)の開発協業以後(2001年8月21日の記事参照)、各社が開発資源の共有を図ってきた。
2004年3月には、富士通と三菱電機がFOMA開発で協業を発表(3月24日の記事参照)。「F901iC」「D901i」という形で成果も出始めた。
11月には、シャープとソニー・エリクソンもFOMA開発での協業を発表(11月29日の記事参照)。単独でFOMAを開発する国内メーカーは、今や残っていない。
2003年に協業を発表したカシオ計算機と日立製作所も、2004年3月に新会社を発足(2月3日の記事参照)。冬の1X WINモデル「W22H」「W21CA」は、協業の成果だ。
協業の成果として開発された端末は、多くの場合、ソフトウェアのインタフェースが似通っている。例えば、パナソニックモバイル製FOMAは、NEC端末をベースとしたインタフェースを持っている。逆にいえば、パナソニックモバイル、三菱電機、日立製作所のユーザーインタフェースは消えていく方向にある。協業の結果、共通化が進んだ部分ともいえる。
開発負担の比率が大きいソフトウェア開発は、通信キャリアが音頭を取って共通化を進めている。
ドコモが推すのは、SymbianとLinuxだ(2003年12月3日の記事参照)。
2002年からSymbian搭載端末を手がける富士通は、完全にFOMAのプラットフォームをSymbian OSに移行。三菱電機も「D901i」からSymbianを採用した。従来から採用を明言していたシャープも、ソニー・エリクソンと共にSymbian OS搭載へと進む(11月29日の記事参照)。
NECとパナソニックモバイル コミュニケーションズはLinux OSを採用。法人向けの「N900iL」を皮切りに、「N901iC」「P901i」でLinuxへの移行を果たす(11月18日の記事参照)。
これにより、FOMAのプラットフォームはSymbianとLinuxに2分された格好だ。
KDDIは、QualcommのアプリケーションプラットフォームBREWを推進する。現在は他社のJavaのような位置づけで使われるBREWだが、今後、メールやWebブラウザなどもBREWアプリケーションとして開発し、各端末メーカーの開発負担を減らしていく計画だ(4月28日の記事参照)。
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