イー・アクセスは3月13日、スウェーデンのEricssonをネットワークサプライヤーに選ぶことを発表した(3月13日の記事参照)。この記者会見で、同社の千本倖生会長が通信業界全体を展望。NTTドコモは分割すべきとの見方を披露した。
千本氏は、ソフトバンクのボーダフォン買収交渉をどう思うかを問われて「1つは孫さん(ソフトバンクの孫正義社長)はすごいなと。ともかく、何兆円というリスクをとってやる経営者は、日本で孫さんしかいないと思う」。千本氏は続けて、自分が孫氏の立場だったら……という仮定に立ち「私は孫さんほどのガッツがないから買収を行うか分からないが、孫さんにはガッツがある。その点は、尊敬している」と話す。
ただし、買収が成立すればソフトバンクが1.7GHzを持ち続けることを認めるわけにはいかない(3月6日の記事参照)。イー・アクセスとして、この主張は会場でも繰り返された。
「1.7GHz帯は“新規”に割り当てられたもの。そこのところはきっちりしないといけない。ソフトバンクが既存事業者になったら、2GHz帯で使っていない膨大な周波数帯もあるのだから、それについては(ソフトバンクに返上させるよう)総務省もしかるべきデシジョン(決定)をしてほしい」
千本氏が「いろいろな大きな動きが報じられている」と話すように、移動体業界は激動している。今後NTT、KDDI、ソフトバンクの“3強”体勢に移行するとの見方もあるが、イー・アクセスはどのようなポジションを狙うのか。会場からは、「5年後の通信業界がどうなっているのか、千本氏の見方を教えてほしい」と問う声も上がった。
千本氏は「5年後のことは、私は予言者ではないからよく分からない」としつつも、「今の日本のオペレーターのマーケットシェアの状況は異常だ。これははっきりしている」と断言する。今後はこの“異常”な状態を正常にもどしていく必要があるという見方だ。
「英国などでは、4社がだいたい20〜30%のシェアを競っている。日本では『横綱』が1人いて、あとは『前頭』と『幕下』という状態で、8兆円の市場で1社が56%以上のシェアをとっている(3月7日の記事参照)。この独禁法に触れるかもしれないような中で、ドコモは1兆円の利益を出しているわけで、世界の携帯事業の競争状況からみてもいびつだ」
この状況を打破するためにも新規参入事業者が努力する必要があるが、千本氏はさらに過激な提案をする。「1つの案として、ドコモは分割すべきだと思う。NTTグループの中で、ドコモだけが大きな利益を生み出している。現在、総務省で『竹中委員会』がNTT、NHKを問題にしているが、私がその議論に参加する機会があれば『ドコモを分割すべきだ』といいたい」
同氏はまた、イー・アクセスが3強にはさまれながらニッチ市場を目指すような事業者にはならないと強調。新規参入だからといって、常にニッチマーケットでしか勝負できないことはないとした。
「海外では、Orangeなども後から市場にやってきて大きなマーケットシェアをとっている(2004年5月26日の記事参照)。日本でも、(千本氏が創業時に活躍した)KDDIがゼロからやって今のマーケットシェアになっている。技術を持ったアグレッシブな会社が、モバイルマーケットをドラスティックに変えなくては意味がない」
5年後の通信業界はどうなるか――という問いの答えは、「4社が20〜30%のシェアで拮抗する」というのがあるべき姿。その4社の中には、当然イー・アクセスも入っているというのが千本氏の主張だ。
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