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» 2007年07月18日 23時55分 公開

2.5GHz帯のWiMAXは水平分業で展開したい──アッカ・ネットワークスの戦略ワイヤレスジャパン2007

アッカ・ネットワークス 最高経営責任者(CEO)の木村正治氏が、ワイヤレスジャパン2007の基調講演で、同社が考えるモバイルWiMAX戦略について説明した。

[園部修,ITmedia]

 総務省が5月15日に明らかにした、「2.5GHz帯の周波数を使用する特定基地局の開設に関する指針案」(5月15日の記事参照)は、携帯電話業界にさまざまな議論を呼んだ。同指針案には、「3G移動通信事業者や、3G移動通信事業者が3分の1以上の議決権を保有するグループ会社以外のものに割り当てる」方針が明記されており、2.5GHz帯を利用してモバイルWiMAXのサービス提供を検討していたNTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスらが、事実上免許の割り当て対象から除外されてしまったからだ。

 3G移動通信事業者以外となると、2.5GHz帯での免許を申請すると目されているのは、ウィルコムとアッカ・ネットワークスの2社だけ。特にモバイルWiMAXを用いた無線ブロードバンドサービスの提供を目指すアッカ・ネットワークスの動向には注目が集まっている。

 アッカ・ネットワークスは、WiMAX事業を実施するための総合的な調査・検討を行い、さらに事業免許取得に必要な準備を行う事業企画会社「アッカ・ワイヤレス」を設立しており(6月21日の記事参照)、免許取得に向けて、今まさに奔走している状況だ。そんな同社が、公の場で改めてモバイルWiMAX戦略を説明した。

Photo アッカ・ネットワークス 最高経営責任者(CEO)の木村正治氏

モバイルWiMAXは水平分業で展開したい

 アッカ・ネットワークス 最高経営責任者(CEO)の木村正治氏は「我々はモバイルWiMAXを使って、新しい、データ通信を中心としたネットワーク市場を開拓しようと考えている」という。

 モバイルWiMAXのメリットは、現在利用可能な無線の伝送方式に比べて高速かつ大容量であり、さらに上りと下りの通信速度が対称なサービスを提供可能な点にある。今後はユーザーが動画をアップロードするなど、参加型のコンテンツが増えてくることは容易に予想でき、上り方向のトラフィックが下りと同程度確保できる点を大きな強みと見る。

 さらに木村氏は、WiMAXがオープンでスタンダードな技術なので、コスト効率のよい、競争力のあるネットワークが容易に構築できることも利点に挙げた。またそれによって透明度の高い競争環境に移行でき、グローバルに機器を展開しているような端末メーカーを含めた新しい市場環境が日本に作れるという。

 「アッカの武器は、品質に対するあくなき追求により培ってきた高品質なオペレーション体制と、携帯ビジネスを手がけていなかった中立性の2点。高品質なネットワークというアッカの強さを継続させながら、モバイル事業へ新たに参入することで、新しい形の市場を開拓したい」(木村氏)

 なおアッカ自身は無線ブロードバンドネットワークのインフラ部分を担い、そのほかの部分はMVNOなどを通じ、水平分業のモデルで展開したい考えだ。MVNOは既存の通信事業者、端末メーカー、他業種などであっても分け隔てなく対応する予定で、MVNOには、基地局から課金システム、認証システムなどまで、あらゆるものを提供していく。

Photo アッカはMVNOに対し、基地局からアクセス網、課金や認証のプラットフォームまでを提供する

グローバルスタンダードとオープンプラットフォームで実現

 アッカがモバイルWiMAX事業を展開するにあたって重要になるキーポイントは、木村氏によれば3つある。それは

Photo アッカが考えるWiMAX事業戦略の3本柱
  • グローバルスタンダードの採用
  • オープンプラットフォームの実現
  • 地方から都市部への全国展開

という3点だ。

 グローバルスタンダードの採用とは、世界で標準化されているWiMAXをそのまま採用することを意味する。世界的に見ても、日本は大きな市場の1つであり、その市場に製品を供給できることは、グローバルに展開している機器ベンダーにとっては大きなメリットとなる。こうした端末メーカーのサポートも受けつつ、日本でサービスを提供したい考えだ。

 標準化された技術を採用することにより、スケールメリットを生かして設備投資に必要な金額を圧縮でき、運用コストも独自の運用や専門家を必要としない仕組みが作れるため低減できる。さらに、携帯電話キャリア各社と連携し、すでに設置されている携帯の基地局用地などを有効活用することで基地局の展開スピードを速め、短期間でネットワークを構築する構想も披露した。

 オープンプラットフォームの実現は、インフラ提供に徹するアッカとして特に重要なポイントになる。「端末ベンダーやコンテンツプロバイダ、アプリケーションソフトベンダーは、そのままWiMAX経由でサービスを提供していただくこともできるし、MVNOとしてWiMAXのインフラを使い、付加価値を付けて2次的にエンドユーザーにサービスすることもできる。水平型の連合体にして、新しいビジネス構造を作っていきたい」と木村氏は言う。

 端末も、通信事業者のブランド名で流通させるのではなく、端末メーカーが自社のブランドでエンドユーザーに直接販売できるようにしたい考えだ。「免許が取得でき、サービスを開始することになったら、まずはアッカ・ワイヤレスの名を付けてデータ通信カードを販売するつもりだが、その後は端末メーカーが独自に機器を発売できるようにする。ハードウェアメーカーとは幅広く連携して製品を市場にお届けしたい。また通販や直販での販売など、新たな販売経路も含め水平展開できるように考えている」(木村氏)

 エリア展開については、まず2008年早々から、今までデジタルデバイドの解消などで協力してきた地方を中心にスタートすることを明らかにした。本格展開は2008年末から2009年にかけて行う予定で、都市部を中心に人口カバー率を上げていく。

PhotoPhoto 3本柱の1本目はグローバルスタンダードを採用すること。そして2本目はオープンプラットフォームを実現すること
Photo 3本目は地方のブロードバンドからから始め、次に都市部へとエリアを拡大していくことだ

1ユーザーに1 IDでのサービス提供を計画

 WiMAXサービスを提供する際には、1ユーザーに1つのIDを割り当て、さまざまなデバイスで共有して使えるようにしたい考えだ。IDによるユーザー単位のサービスを展開することで、ユーザーが好きな機器を好きなときに利用できるようにする。

 WiMAXサービスの初期のターゲットユーザーは、当然のことながらPCでのデータ通信ユーザーになるが、インテルがWiMAXをチップセットに組み込む意向であることから、WiMAX搭載ノートPCなども将来は増えることが予想される。さらに2011年ころからは、WiMAXによる通信機能がカーナビやゲーム機、エンタテインメントデバイスなどのデジタル機器にも広がっていく可能性があるため、このモデルを採用するという。

PhotoPhoto 2.5GHz帯の周波数割り当てに伴う想定スケジュール(左)とアッカが考えるモバイルWiMAXを活用した世界(右)

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