PHSの国際普及促進団体、PHS MoU Groupが、2007年12月12日から14日まで岩手県花巻市で「NWG & PWG-SWG4 Meeting」を開催した。NWGとはNext Generation PHS Ad-hoc Working Groupの略称で、次世代PHSの標準化作業を行うワーキンググループ(作業部会)のこと。またPWG-SWG4はプロモーションワーキンググループ内の第4部会、すなわち次世代PHSのプロモーションを行うグループを指す。一言で言ってしまえば、次世代PHSの今後について話し合うミーティングだ。
花巻といえば日本有数の温泉街。なぜ、そんなところでミーティングを、と思うかもしれないが、実はウィルコムの「nico.」やW-SIM「RX420IN」などでおなじみの、ネットインデックスのR&Dセンターおよび工場がこの地にあり、同社のホームグラウンドといってもいいロケーションなのである。また、“雪を見ながら温泉”という、日本の風情を海外メンバーにも味わってもらい、メンバー間の親睦を図るという目的もあって今回の開催地に指名されたようだ。
ちなみに、今回のミーティングは、初日がPWG(プロモーションワーキンググループ)、2日目がNWG(次世代PHSワーキンググループ)、3日目がBWG(ビジネスワーキンググループ)と、グループごとに分けられている。初日のミーティングでは、次世代PHSの規格がARIB標準に決定したという、重要な報告がなされている。
初日の基調講演では、ウィルコム副社長の近義起氏が、マクロセルを使う3Gや3.5G携帯に対して、半径の小さなマイクロセルを使うPHSの優位性をあらためて取り上げた。ワイヤレスブロードバンドの世界を実現する際に、国内16万の基地局が同社のアドバンテージになるという。
また近氏は、ウィルコムのこれまでの取り組みとして、4Gの技術の土台となるスマートアンテナやSDMA、マルチリンクなどを手がけてきたことを紹介。その上に、MIMOやOFDMAを重ねることで「XGP」を実現するとした。さらに同氏は、現在審査中の、2.5GHz帯を利用する高速無線通信技術への周波数割り当てについても言及。認定の取得に自信を見せスピーチを締めくくった。
基調講演に続く、「テクニカルレポート」と題されたコーナーでは、基地局メーカーでもある京セラが実証実験の模様を紹介した。XGPのフィールドテストのデータと、シミュレーターを通して検証したデータを交えての紹介であるが、かなり細かなデータが提供されており、参加メンバーの関心を集めていた。
また、三洋電機も、ウィルコムと共同で実証実験に着手しており、こちらは(発表はなかったものの)MIMOを組み合わせた実験を行っているようだ。
第2部でプレゼンテーションを行ったネットインデックス、ABIT、三洋電機は、自社の紹介と現在の製品ラインアップ、これまでの取り組みと今後の展開などを発表。技術的に踏み込んだ内容を交えてのものだけに、それらを細かく紹介することは難しいが、ウィルコムが2.5GHz帯での認定を受けた場合、次世代PHSの商用サービスを2009年に開始するとしていることから、2009年を目標に開発を進めているようだ。“日本発”の世界標準規格として、PHSがさらなる飛躍を遂げるための次世代PHS。その準備は着実に進んでいる。
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