法規制がなくなった補助金制度――韓国キャリアは「縛り」で対応韓国携帯事情

» 2008年05月22日 00時00分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 最新の携帯電話の、ある程度安価な購入を可能にしていた条件付き補助金支給制度。しかし、この制度を規定していた法律上の期限が3月末で切れ、補助金支給制度はなくなってしまった。通信キャリア各社は、それに代わる独自の制度を用意し、利用者の増加に努めている。

消耗戦から、質・内容で勝負

 2006年3月、電気通信事業法に基づき、18カ月以上の携帯電話加入者を対象に、補助金支給を許可する規定が施行された(2006年4月の記事参照)。これは2年後の2008年3月26日までと定められていた。加入期間と毎月使う料金とを総合して補助金を算出する方法はキャリアごとに額が異なり、その額も頻繁に変更されたものだが、少なくとも5万ウォン(約4970円)程度、多ければ20万ウォン(約1万9900円)以上の補助金を支給することが可能だった。

 もともと補助金の導入は、1990年台後半の携帯電話加入者誘致競争から端を発している。あまりに競争が加熱しすぎた結果、一度は政府が補助金の支給を禁止したが、その後条件付きで許可することになった。

 補助金制度が再開した後、韓国ではHSDPAを始めとした3Gサービスが本格化し、ユーザーを確保しようとさらにキャリア間の競争が激しくなった。法定上限額を超えた補助金を出し、その結果政府から課徴金を課せられるなど、悪循環も起きた。条件付き補助金制度の意味とは何か――。市場関係者の頭には、そんな問いかけが常にあった。

 おりしも2007年から、通信商品同士を安価にセット売りできる「結合販売」やMVNOサービスが許可されるようになり、ユーザーは端末の機能だけでなくサービス内容や料金も重視するようになった。キャリアも、身銭を切り続ける終わりなき消耗戦より、品質での勝負を望んでいる。

 そして3月26日、条件付き補助金制度は姿を消し、今後はキャリアが独自に設計した補助金制度が次々と提供されるようになった。

3段階割引のKTF

 各キャリアが4月から提供する新料金制度には、ある共通点がある。それは、“一定期間解約しない代わりに端末価格を割引く”という、いわゆる「縛り」を設けているのだ。

 KTFは「SHOW King スポンサー」というプログラムを他社に先駆けて打ち出した。このプログラムには3つのコースがあり、「高級型」は最高36万ウォン(約3万5500円)まで端末購入金を割り引くというもの。割り引きを受けるには、24カ月間の回線契約を結び、補助金を差し引かれた端末代を分割払いする。

KTFの高級型プログラムの契約別端末割引額
契約形態/契約期間 12カ月 18カ月 24カ月
W-CDMA新規 20万ウォン 28万ウォン 36万ウォン
CDMA新規/CDMA・W-CDMA機種変更 15万ウォン 23万ウォン 31万ウォン
高級型プログラムの対象となる携帯電話は、Samsung電子のHapticフォンやSKYのBladeなど、最新・高機能機種中の7種類程度に限定されている

 2つ目の「倹約型」は、同社が用意する専用の倹約割引料金プランと合わせて契約するコース。この料金プランは通話料が多い人向けのもので、基本料が1万3000ウォン(約1280円)から8万6000ウォン(約8500円)までの4種類があり、これに比例して無料通話分も多く与えられている。割引額はサービス使用料(基本料+国内の音声通話料金)に応じて変化し、サービス使用料が3万〜4万ウォン(約2950円〜3950円)の場合は1万ウォン(約990円)を割り引く。4万ウォンを超過した場合は、さらに超過料金の10%が割り引かれる。例えばW-CDMA端末を新規加入で2年契約した場合、毎月のサービス使用料が3万〜4万ウォンの間であれば、2年間で44万ウォン(約43400円)もの補助金を受けられる。

KTFの倹約型プログラムの契約別端末割引額
契約形態/契約期間 12カ月 18カ月 24カ月
W-CDMA新規 20万ウォン 28万ウォン 36万ウォン
CDMA新規/CDMA・W-CDMA機種変更 15万ウォン 23万ウォン 31万ウォン

倹約型プログラムの割引料金(基本料+国内音声通話額で追加割引)
区分 12カ月 18カ月 24カ月
3万ウォン〜4万ウォン 100%割引(最大1万ウォン)
4万ウォン超過 超過額の10%を追加割引
倹約型プログラムも対象となる携帯電話が限られているものの、高級型よりも選択肢は多く、高・中程度の機能を搭載した23機種となっている

 最後の「基本型」は、倹約型以外の料金プランと組み合わせるコースだ。24カ月契約時の端末割引分は最高18万ウォン(約1万7800円)。さらに、契約期間に合わせて料金プランごとの割引を用意している。

KTFの基本型プログラムの契約別端末割引額
契約形態/契約期間 12カ月 18カ月 24カ月
W-CDMA新規 12万ウォン 15万ウォン 18万ウォン
CDMA新規/CDMA・W-CDMA機種変更 8万ウォン 11万ウォン 14万ウォン

基本型プログラムの割引料金(基本料+国内音声通話およびテレビ電話通話額)
契約期間/基本料プラス国内通話料 3万ウォン〜4万ウォン 4万ウォン超過
12カ月 最大3000ウォンまで割引 超過金の10%追加割引
18カ月 最大5000ウォンまで割引
24カ月 100%割引(最大1万ウォン)
基本型は倹約割引料金制以外の料金制において割引適用となり、すべてのKTF端末が対象となる、選択幅の広いプログラムだ

 以上3つを総合して考えると、特定の最新機種をとにかく安く購入したいなら高級型、最新機種をお得な料金プランで使うなら節約型、好きな端末を自分に合わせた料金プランで使うなら基本型という選択になる。ただし、後者2つのプログラムはサービス利用料が3万ウォン以下だと恩恵が少なくなってしまう。

 以前紹介した「Hapticフォン」も高級型の対象に含まれるのだが、70万ウォン台後半(約7万台後半)という高額端末を、もっとも安く購入できるとしてSHOW King スポンサーは話題になった。そのおかげか、このプログラムの契約者数は3万人以上にのぼっているという。

SKTは月々1万ウォンの補助金を支給

 SK Telecom(以下、SKT)では、「T 割賦払い支援プログラム」を提供している。

 これは新規加入もしくは機種変更した際、端末代を分割払いすることで一定の補助金が得られる制度だ。18カ月か24カ月の契約で補助金を受けられ、新規加入/機種変更ともに月額1万ウォン(約990円)の補助金を受けることができる。つまり契約期間が長いほど、その積み重ねで多くの補助金が受けられるということだ。

SKTの「T 割賦払い支援プログラム」
割引期間 18カ月 24カ月 備考
金額 18万ウォン 24万ウォン 新規/機種変更、すべて適用対象
SKTの「T 割賦払い支援プログラム」の内容。単純明快なプランだが、対象となる携帯電話はW-CDMA機が6種類、CDMA機が2種類と限定されている

 SKTには「T 基本約定制度」という制度もあり、こちらも携帯電話を割引額で購入できる。例えば12カ月間の加入契約を行えば、“あ群”“か群”に分けられている機種ごとに、3万(約2970円)〜12万ウォン(約1万1850円)の補助金を得られる。“あ群”の場合は、最新・高機能のW-CDMA9機種およびCDMA端末4機種、“か群”の場合は“あ群”を除外したすべての端末だ。同じ群の中でも機能などが異なるので、こうした違いによって補助金額も異なるようだ。

 また韓国には「補償」といって、これまで使っていた端末を下取りに出し、その差額で端末を購入できる制度がある。この制度で機種変更を行った場合、メンバーシップカードの会員等級に従って、補助金額も異なってくる。メンバーシップカードの等級は、SKTへの加入機関や月々の利用額によって1年に1回ずつ、等級分けされる仕組みだ。“VIP”や“GOLD”といった等級の会員は、より多くの恩恵を受けられる。

SKT「T 基本約定制度」の補償金額(12カ月基準の金額)
区分 “あ”群端末を新規契約 “か”群端末を新規契約
補助金額 7万ウォン〜12万ウォン 3万ウォン〜8万ウォン

メンバーシップ会員等級と補助金
区分 年間の利用金額 補助金 備考
VIP 90万ウォン以上 13万〜18万ウォン 利用金額は、基本料、通話料、SMS利用料(国際電話や携帯電話購入費、税金などは除外)
GOLD 60万ウォン以上90万ウォン未満 10万〜15万ウォン
SILVER 30万ウォン以上60万ウォン未満 7万〜12万ウォン
一般 30万ウォン未満
SKTの基本約定制度の内容とメンバーシップ等級ごとの補償額

 SKTの割引制度はKTFに比べ大変シンプルであると同時に、SKTへの忠誠度が高ければ高いほど恩恵が多いという面もある。もっとも多くの補助金を得られるのは、長期間ユーザーのVIP会員が補償制度を利用し、SKTが指定した機種を2年契約で購入するケース。しかし、VIP会員自体が少なく、同一端末を2年契約で利用する人も少ない。それだけにSKTにとって、より多くの顧客を確保したい制度であるともいえる。

LGTは月々1万ウォン+αの割り引き

 5月に入り、LG Telecom(以下、LGT)は「OZ実利割引」というサービスを発表した。もっとも遅く登場した割引制度だが、18カ月と24カ月の縛り(契約期間)が設定されているなど、基本的な仕組みは他社と大きく変わらない。

 割引額は1万ウォンを“100%”として、通話料金が3万〜4万ウォンの場合に適用。さらに4万ウォンを超過した場合、段階ごとの割引額を“100%”に加算してくれる。その合計金額を、下の表に示した。

LGTの「OZ実利割引」
区分 支援金額
利用金額 1カ月 18カ月 24カ月
3万〜4万ウォン 1万ウォン 18万ウォン 24万ウォン
5万ウォン 1万2500ウォン 22万5000ウォン 30万ウォン
7万ウォン 1万7500ウォン 31万5000ウォン 42万ウォン
9万ウォン 2万2500ウォン 40万5000ウォン 54万ウォン
4万ウォンを超過した場合、3万〜4万ウォンの1万ウォンにプラスして超過分の金額の25%分を加算して割り引く

 例えば通話料が月額5万ウォン(約4930円)の場合、4万ウォン以上の超過分である1万ウォン中、25%に該当する2500ウォン(約250円)と、3万〜4万ウォン分の1万ウォンを合わせた料金が契約期間分割り引かれるという仕組み。18カ月であれば22万5000ウォン(約2万2200円)、24カ月であればトータルで30万ウォン(約2万9600円)が割り引かれる。

 基本的にこうした制度は、通話などのサービス利用料が多ければ多いほど、多くの補助金が出る。LGTのプログラムではサービス利用料を、4万ウォン以上超過した時にKTFよりも多く割り引かれるものの、最低3万ウォン以上使わなければ意味がなく通話が少ない場合は不利だ。

 また、24カ月で54万ウォンという最大補助金を受けるには、毎月9万ウォン(約8880円)以上の通話利用が必要だ。54万ウォンといえば携帯電話を1台買えるほどの金額であり、割り引きを受けるためにその負担を負うことには疑問の声も出ている。そのため、月々の通話料が少ないユーザー向けの補助金も用意された。

今後も変わる可能性ある補助金制度

 これまで見てきた3社の補助金制度はいずれも、一定期間契約することが条件になっている。従来の条件付補助金制度では、加入者に対し契約期間の義務(縛り)を設けることが禁止されていたが、規制が撤廃された結果、キャリアの本音が露骨に出てしまった格好だ。

 さらに、再開された補助金制度は恩恵に対して「代償」が大きい。24カ月契約を長く感じる人も多く、対象端末が決められている点や割り引きをインセンティブとして通話時間を延ばそうという仕組みでもある。

 しかし逆に見れば、同一キャリアの契約期間と月額料金を基準とした補助金ではなく、より幅広い人に開かれた制度であるともいえる。結局は選択の問題ではあるが、最新機種で大幅な割引額を得たい人はKTFの高級型プログラム、補助金額は多少他社より低くとも1つのキャリアを使い続けるならSKT、基本料金と通話料とで4万ウォン以上を超える人ならLGTといった選択肢が考えられそうだ。

 ところで一定期間契約したことによる割引制度は、日本にもさまざまあるが、韓国の場合は、長く使えば使うほど割引額も高くなっていくといったこはない。あくまで割引の積み重ねで、割引額も膨らんでいくといった仕組みになっている。24カ月より長いプログラムはなく、プログラムそのものをあくまで24カ月の期間でみているように思える。

 ではその後はどうなるのかといえば、それは現時点では“分からない”というしかない。以前の条件付補助金制度下でも、キャリア各社がお互いの補助金額を見ながら、変更を重ねた。今回の補助金も、今後変更されることが十分に考えられる。また、料金制度やメンバーシップ等級、その他サービスなどと組み合わさることで、割引の幅が広がったり、プログラムの選択肢が多くなっていくことも考えられる。

 法的な規制もない今、韓国の携帯電話補助金制度はキャリアの裁量でさまざまな姿に変貌していくと予想できる。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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