激変するモバイル市場、ケータイキャリアが進む方向はワイヤレスジャパン2008

» 2008年07月24日 00時47分 公開
[石川温,ITmedia]

 ワイヤレスジャパン2008の2日目、「モバイル通信サービス事業の将来ビジョン」と題した基調講演が行われ、通信キャリアのキーパーソンがそれぞれの立場から今後の取り組みについて説明した。

 講演に登場したのはNTTドコモの山田隆持社長、KDDIの小野寺正社長、ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長、イー・モバイルのエリック・ガン社長、ウィルコムの喜久川政樹社長という豪華な顔ぶれだ。

エージェント機能に注目するドコモとKDDI

Photo ドコモの山田隆持社長

 6月20日に社長に就任し、ワイヤレスジャパンに社長として初めて登壇した山田隆持氏は、変革期にさしかかった日本の携帯電話市場について「たしかに契約台数は成熟期だが、携帯電話の使い方に関してはまだ成長期だといえる」と、市場のさらなる成長に期待を寄せた。

 その“新たな使い方”として、提案するのが「行動支援型」サービス、つまりエージェント機能を持った携帯電話だ。「いままでは『○○できる』という携帯電話だった。これからは『○○してくれる携帯電話』になっていく」(山田氏)。それは例えば、油絵の好きな人が銀座の歩行者天国を歩いていると、自動的に油絵の個展情報が送られてくる――といった具合に、個人の趣味嗜好や居場所に応じて最適な情報をレコメンドするようなイメージだ。

 「事前に興味のあることをプリセットする必要があるが、GPSと個人認証を組み合わせることで、その人に合った情報を携帯電話が探し、適切なタイミングと方法で通知するようになる」(山田氏)

 将来的には行動履歴や蓄積された情報を活用して、エージェントが自動的に動作するようにもしたいという。エージェント機能を搭載した端末は「今年の年末モデルから、一部機種が対応する」(山田氏)とのことだ。

 また、来年をめどに「ホームU」の発展系サービスとして、ホームエリア連携サービスの提供を想定していることを明かし、これにより“ユーザーが自宅に帰ると、デリバリー(出前)の割引情報が自動的に配信されたり、朝の出勤時に通勤路線の遅延情報などが手に入る”といった世界が実現するとした。


Photo KDDIの小野寺正社長

 ドコモと同様、「エージェント」という言葉を使って将来像をプレゼンテーションしたのがKDDIの小野寺正社長だ。「パーソナルゲートウェイはほぼ実現できている。これからはエージェントとして、ユーザーの行動履歴などから最適な形で情報を提供する」(小野寺氏)。こうしたサービスの提供に向けて同社では、ユーザーの映像視聴履歴や他のユーザーの推薦をベースに、見るべき映像コンテンツをレコメンドする技術を開発しているという。

 また、ユーザーに新たな映像の楽しみ方を提案すべく、「ウォークスルー自由視点映像」の開発に着手したことも明らかにした。これはスポーツ中継などの番組を、サッカー選手や相撲の行司の視点で見られるようにする技術で、IPTVのアドバンスドサービスとしての提供を目指す。

 ほかにも、1Gビット/秒の高速赤外線通信インタフェースを紹介し、必ずしも携帯電話のネットワークで、すべての情報をダウンロードするのではなく、さまざまなデバイスから高速赤外線通信を使って携帯電話に移す――といった環境もあり得るとした。

 ネットワークインフラについては「これからはCDMAから全く新しいOFDMの世界になる。OFDMはWiMAXやLTE、UMBで使われており、IMT-Advanceにも採用される」(小野寺社長)と次世代の技術に言及。「すでにIMT-Advancedを実験している。実用性を求めたときには、どのスピードがいいのか。ケータイというスタイルを考えたときにはどこの速度にすべきかを考えなくてはいけない。大切なのは『ビット単価のさらなる低減』。これが大きな要素になってくる」という見方を示した。


iPhone 3G、ネットワーク戦略、JILに言及――ソフトバンクモバイル

Photo ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長

 ソフトバンクモバイルを代表して登壇した松本徹三副社長は、7月11日から発売されたiPhone 3Gをさまざまな角度から分析した。

 「iPhone 3Gは海外の事業者にとって脅威だろう。欧州でもっとも影響力があったのは端末メーカーのNokia。彼らが今では、端末からサービスにも乗り出してきている。しかし、アップルはNokiaが10年かけてやってきたことを、わずか1つの製品で実現してしまった。同様にGoogleも同社のサービスが安心して使えるようにと、Androidというプラットフォームを作ろうとしている」(松本副社長)

 ソフトバンクモバイルのiPhone 3G導入については「ソフトバンクモバイルには利益をもたらさないのではないか」とも指摘されるが、松本氏は「利益がとれず、悔しかったら自分たちで作ればいい、ということ。だが、これを一番、最初につくったのがアップルだった。ソフトバンクモバイルとしては、ユーザーのことを考えれば、端末はアップルにまかせ、ネットワークと販売を支援する立場をとったほうがスムーズだと判断した」(松本氏)と説明する。

 また、「パケット定額制への強制加入」に対する批判には「iPhone 3Gを利用するユーザーはインターネットを使うのが前提。(定額制に加入しないと)知らないうちに10万もの請求が来たというトラブルになりかねない。iPhone 3Gを楽しんでもらうために定額制加入を設定した」(松本氏)と、端末の持つ特性に合わせて判断した結果だとした。

 また松本氏はiPhone 3Gの魅力の1つであるApp Storeを紹介。「App StoreのSDKは25万人がダウンロードしており、iPhone 3G向けのアプリケーションが次々と開発されようとしている。売り上げの30%をアップルが徴収するのは悔しいが、アップルが作った仕組みなので当然」と語った。

 ネットワーク戦略については、(2010年3月に終了する2Gで使っている)1.5GHz帯を、2010年には3.9GHzの基地局として改めて申請するとし、「会社として決定したことではない」と断った上で、「3.9Gの概念はいろいろあるが、ソフトバンクモバイルとしてはHSPA+(リリース7)として、将来的にLTEにアップグレードも可能なものを選択したい」と説明した。

 また、中China Mobile、英Vodafoneと共同で設立した「ジョイント・イノベーション・ラボ」(JIL)の第1弾としてWidget Engineを開発する計画であることを明らかにした。「SymbianでもLinuxでもAndroidでも動くものにしたい。JILの取り組みは通信事業者がつくるサービス基盤として、課金や認証と緊密に連携したものになるだろう」(松本氏)

“災害に強いマイクロセル”をアピール――ウィルコム

Photo ウィルコムの喜久川政樹社長

 ウィルコムの喜久川政樹社長は、PHSのメリットである「マイクロセル」の強みを、これまでとは違った切り口で紹介した。それはマイクロセルが、“災害時の通信手段”として評価されている点だ。

 「PHSは災害時にリスクを分散ができることが実証されてきた。一部の基地局が倒壊しても、周辺の基地局がカバーして通話ができる。また通話が集中しても、複数の基地局に分散されるので、輻輳リスクも軽減される」(喜久川社長)

 岩手・宮城内陸地震の際にも、携帯電話が使用不能になっても、PHSは問題なかったという事例をユーザーの声を通して紹介。海外でも中国・四川大地震が起こったときに、最重要移動通信手段としてPHSが評価されたという。

 また、課題となっているPHSの国際ローミング対応については、8月21日からベトナムへの国際ローミングがスタートすることや、GSM版のW-SIMインタフェースを開発中であることを発表し、「ウィルコム向け端末が世界で使えるようになる日もやってくる」(喜久川社長)と自信を見せた。

 次世代PHS「WILLCOM CORE」の紹介では「OFDMA、MIMOなどにおいては、他のモバイルブロードバンドとほとんど一緒。だが、マイクロセルと上下対称という点が、WILLCOM COREの違うところで、上りも高速」だとメリットを強調。WILLCOM COREでは、基地局にカメラを設置し、カーナビ向けに映像を配信するほか、テレビ中継システムの構築も視野に入れているとした。

 そのための試みとして、「BWAユビキタスネットワーク研究会」を発足すると発表。メンバーにはNTTコミュニケーションズやシャープ、京セラ、オムロンなどが参加するという。

Photo WILLCOM COREで新たな事業領域の拡大を目指す

 イー・モバイルのエリック・ガン社長は、同社のユーザー動向や料金プランなどを説明するとともに、同社のサービスや端末を改めてアピールした。


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