830Nはシャープ端末以外で初めて、ソフトバンクモバイルの新サービス「モバイルウィジェット」に対応したのも大きなポイントだ。2009年2月現在、「931SH」と「932SH」、「831SH」、そして830Nがモバイルウィジェットに対応する。
モバイルウィジェットは、待受画面に複数のミニツールを配置し、よく使うサイトやサービスの最新情報を即座に確認できるもの。時計やカレンダー、天気予報といった定番のツール以外に、若年層をターゲットにする830Nは音楽配信サイト(music.jp、TSUTAYA ONLINE、SonyMusic Mobile)とデコレメール素材配信サイト(デコトモDX)を展開するコンテンツプロバイダと共同開発した“N”オリジナルのウィジェットもプリセットする。
「2009年夏モデルの830N、821Nは多くのS!サービス(ソフトバンクモバイルのサービス)に対応していなかったこともありまして、次の機種は新サービス、特にモバイルウィジェットはきっちり対応しなければと常に思っていました」(ソフトウェア担当主任の森山祐助氏 以下、森山氏)
「モバイルウィジェットはかなりオープンで、自由度が高い仕様となっています。このため、コンテンツプロバイダさんも作りやすいというメリットがあります。待受画面という“一等地”に常に最新情報を表示できるのはユーザーさんの利便性が高いのはもちろんのこと、こういうことがさらに便利な携帯サービスを生み出すきっかけになりますので、コンテンツプロバイダさんとしても喜ばしいことです。画面が常に表を向く830Nのスライドスタイルともマッチしましたね」(ソフトウェア担当の藤井陽介氏 以下、藤井氏)
ウィジェットサービスは、ソフトバンクモバイル以外にもドコモの「iウィジェット」、auの「au one ガジェット」、ウィルコムの「ウィルコム ガジェット」など各キャリアの端末に備わるようになった、流行機能だ。
中でもソフトバンクのモバイルウィジェットはツール容量の制限が緩やか(最大500Kバイト)で、ある程度のWebの知識があれば作成できるといった「作り手が作りやすく、自由度が高い」メリットがあり、共同で開発したコンテンツプロバイダもすぐ乗り気になってくれたという。
「開発においては、小さいウィジェット画面に情報をどこまで出すかというバランス取りに苦労しました。フルワイドVGAの3インチディスプレイで何ポイントの文字ならこのくらいの大きさになる──などと、かなりの量のサンプルを作成して検証しましたね」(森山氏)
「また、許容アプリ容量に余裕があるので、最初はいろいろ欲張って機能をたくさん盛り込む計画もありました。ただ、この手のウィジェットは自分に必要なもの“だけ”を配置できるのがポイント。付箋なら付箋、時計なら時計だけといったシンプルなままが一番使いやすいことに気がつきました。時計の絵柄変更や時報のアクション、付箋をペリッとめくる動きなどのちょっとした遊び心は残しつつも、機能を欲張らずにミニマムで軽快に動くものに仕上げてあります」(藤井氏)
830Nの“顔”は待受画面とモバイルウィジェット。ウィジェットが前面に出て、画面が主役になるので、その背景画面や待受Flashは“ウィジェットがあってもうるさくない”デザインのものをプリセットする。まさに、壁にウィジェットが貼り付けてあるような、自然なイメージになるよう心がけたという。
「開発していて総じて感じたのが、PCのYahoo!ウィジェットをそのまま小さくしたような考え方で、ソフトバンクモバイルさんの考え方がかなりオープンであるということです。自由度が高いので端末メーカーもやりやすいし、コンテンツプロバイダさんも作りやすい。作る側に大きな負担があるとやはり増えて行かないでしょうし、結果、ユーザーさんに普及しにくくなると思います。ウィジェットがあることで、待受画面、ひいては端末そのものの使い勝手を向上させるアイデアも、今後、いろいろ出てきそうです」(藤井氏)
モバイルウィジェットは4種類のシートに別々のウィジェットを配置でき、逐次切り替えて使用できる。今後、日時や現在位置情報に応じて、“朝”用や“授業中”用に。さらに脈拍センサーや感情認識エンジンなども駆使して、自分にぴったりの適切なものに自動で切り替える──といったこともできるようになるかもしれない。
「弊社は、ソフトバンクモバイル向けの端末メーカーとしては後発組なので、少しでもユーザーフレンドリーな差別化をということで、今後もウィジェットを絡めながら“N”らしい独自性を出していきたいと思っています」(森山氏)
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