“Walkman Phone”シリーズの第2弾として登場したソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「Walkman Phone, Premier3(プレミアキューブ、以下Premier3)」は、「ミュージックスタイル」「シアタースタイル」「ケータイスタイル」という3つのスタイルにより、音楽や映像サービスの“聴く/観る/拡がる”を満喫できる。
一足先に発売された「Walkman Phone, Xmini」は、“ウォークマンありき”というコンセプトのもと、音楽機能に絞ったモデル。一方、Premier3は音楽機能はもちろん、ワンセグやEZ・FM、おサイフケータイ、GPS、Bluetooth、FMトランスミッター、グローバルパスポートCDMA、319万画素カメラなど、トレンド機能やauの新サービスにももれなく対応する。
Premier3はどのようなコンセプトのもと、どんなターゲット層を想定して開発されたのか。ソニー・エリクソンの開発陣に聞いた。
ソニー・エリクソンはPremier3やXmini以前も、「ウォークマンケータイ W42S」「ウォークマンケータイ W52S」といった“ウォークマン”の冠を付けたケータイを開発してきた経緯がある。
「ソニー・エリクソンは音楽については認知度のあるメーカーだと自負しています。それに加え、KDDIさんは着うたの文化を立ち上げたので、KDDIさんとソニー・エリクソンでがっぷり四つに組むことで、新しい音楽のユーザー体験を具現化するモデルを作りたいという話をしてきました」と商品企画担当の宮澤氏は話す。その1つとして開発されたのがXminiだ。
Xminiはケータイではなく“ウォークマンとして使えること”を前提として開発されたが、Premier3は逆のアプローチを採り、「ケータイで音楽を楽しむにはどうすべきか」を改めて深く考えたという。その答は「Premier3」という製品名に集約された。
Premier3の「3(キューブ)」は3乗を意味し、3つのスタイルで音楽や映像サービスを楽しむというコンセプトが込められている。当初は「トライフォルムウォークマン」という名称にする案もあったという。
「閉じた状態では音楽プレーヤーとしてすべての音楽操作ができ、横に開くと音楽や映像を観て楽しめます。縦に開くと、(専用の)音楽プレーヤーにはないケータイならではの音楽体験を得られます。つまりその場で着うたフルや着うたフルプラスなどの音楽コンテンツをダウンロードできるわけです。これは本家ウォークマンとの大きな差別化になると考えています」(宮澤氏)
また、W52Sの反省も踏まえ、本体のスピーカーはモノラルを採用し、小型化を優先した。そして「スピーカーを使うのは自宅が多い」(宮澤氏)との考えから、付属の卓上ホルダにステレオスピーカーを搭載した。このほか、2GバイトのmicroSDやリモコンも付属し、BluetoothやFMトランスミッターにも対応する。
「音楽を聴くのは家と外出先、車の中が多い。Premier3なら、この3カ所で音楽を十分楽しめます。付属品を充実させたのも、Premier3でもれなく音楽生活を楽しんでほしいと考えたからです」(宮澤氏)
「Premier」には「デザインの上質感」と「機能の充実」という2つの意味がある。
「Premier3は“ケータイありきのWalkman Phone”なので、ケータイとして高級感のある上質なデザインを目指しました。また、今までケータイでは音楽を聴かなかった人にも音楽を楽しんでほしいという想いがあったので、いかにもミュージックプレーヤーというデザインではなく、ぱっと見て『すごくかっこいい』と思ってもらい、そこから音楽に入ってもらうようアプローチしました。機能も、足りないものはほとんどないと言えるくらい充実させました」(宮澤氏)
製品名をこれまでの「ウォークマンケータイ」から「Walkman Phone」に変えたのは、「高級感のあるデザイン+音楽に特化するため」だという。「W42SとW52Sも音楽機能を訴求しましたが、Walkman Phoneではさらに音楽に特化し、ケータイとしても昇華させたかったから」と宮澤氏は説明する。
また、W42SやW52S、そしてXminiと、これまでのウォークマン系の機種はすべてスライドボディを採用したが、Premier3では「デュアルオープンスタイルの方が今回のコンセプトにふさわしい」(宮澤氏)との考えから、スタイルを変更した。海外向けのウォークマンケータイも含め、ウォークマン系の携帯でデュアルオープンスタイルを採用するのはPremier3が初となる。
Premier3が採用した、ディスプレイが横にも開くシアタースタイルは、2006年に発売された「W44S」を継承したものだ。W44Sは大きく突起したヒンジのインパクトが強烈だったが、Premier3ではヒンジの出っ張りはほとんどなくなり、すっきりした印象になった。機構設計担当の青野氏は、「Premier3のヒンジはぱっと見てもW44Sとは相当違いますが、この形に至るまでには相当苦労しました」と話す。
「W44Sではキー側とディスプレイ側をフレキシブルケーブルでつないでおり、フレキシブルケーブルがヒンジの軸に巻き付く形になります。するとその分だけ軸の直径が増すので、ヒンジ部分が太くなってしまいました。そこでPremier3は、ヒンジの軸の中心に穴を空けて、細線同軸ケーブルを通す仕様にしました」(青野氏)
「のり巻きののり(巻き付いたフレキシブルケーブル)だと太くなるので、かんぴょう(細線同軸ケーブル)を通したと考えると分かりやすいですね(笑)」とデザイナーの鈴木氏は説明する。
「そのほかに、バネの構造を変えることでヒンジ機構自体も小型化しました。ただ、本体内部にヒンジを潜り込ませたので、本体の実装面積と部品を置くスペースが削られます。ここは基板サイズをうまく調整してなんとか収めました」(青野氏)
大幅な小型化に成功したヒンジだが、右側面はわずかに突起している。この出っ張りを完全になくすのは、やはり難しいのだろうか。「ヒンジ自体をものすごく細くすれば可能だとは思います」と青野氏は言うが、見た目を優先してあえてこの形にしたという。
「W44Sのヒンジを見て『何これ、ケータイ?』という(いい意味での)声もあったと思います。そこはデザイン上のアクセントとして残しました」(鈴木氏)
Premier3の形状には、同じく横開きスタイルを採用するドコモの「P-01A」やauの「H001」にはない特徴がある。それは、ダイヤルキーの先端に“逃げ”のスペースを作ったことだ。
「他社さんの(横開き対応)モデルは先端部に(縦開き用ヒンジの)壁がありますが、W44Sと同じくPremier3にはディスプレイ側に縦開き用のヒンジがあるため、この壁がありません。横に開いた状態でキー操作をするときの握りやすさを考えると、ここに逃げのスペースがある方がいいと思います」(鈴木氏)
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