iPhone版「Google マップ」の使い勝手/「203SH」IGZO搭載の理由/ドコモ純減の背景石野純也のMobile Eye(12月3日〜12月14日)(2/3 ページ)

» 2012年12月14日 20時10分 公開
[石野純也,ITmedia]

春モデルの「AQUOS PHONE Xx 203SH」が「IGZO」に仕様変更、その真相を聞いた

photo IGZOディスプレイに仕様が変更となった、シャープのAQUOS PHONE Xx。クアッドコアCPUや、1630万画素カメラを搭載する、フラッグシップモデルだ

 ソフトバンクモバイルとシャープは、11日、春モデルの「AQUOS PHONE Xx 203SH」(2013年3月上旬以降に発売予定)に「IGZO」を採用すると発表した。もともとは4.9インチの「S-CG Silicon液晶」の搭載を予定していたが、発売を前に異例の仕様変更となった。AQUOS PHONE Xxは、上記の液晶以外にも電子式、光学式の2つに対応した手ブレ補正や、2200mAhの大容量バッテリー、クアッドコアCPU&2GバイトのRAMを備えるフラッグシップモデル。AXGP方式を採用する「SoftBank 4G」に対応し、通信速度も下り最大76Mbpsと高速だ。さらに、省電力性でタッチに対する反応がよく、ドコモ向けの「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」でも好評を博しているIGZOという武器が加わった。

 IGZOとは、インジウム、ガリウム、亜鉛の化学記号の頭文字である「IGZ」を酸化させた(Oxidize)半導体のこと。これを液晶パネルに応用したのが、シャープのIGZO液晶だ。従来のアモルファスシリコンより開口率が上がり、明るくなるのが特徴。ノイズが少なく、タッチに対する反応も正確だ。また、“オフ特性”が高く、通常、静止時でも1秒回に60回繰り返していた画像の書き換えを、変更があったときにだけ行うようにしている。これによって、アモルファスシリコンよりも5分の1から10分の1程度の消費電力を実現した。

photophoto アモルファスシリコンとIGZOの消費電力を比較したデモ。IGZOの方が、パネルとバックライトのどちらも少ない電力で動いていることが分かる(写真=左)。タッチした際に発生するノイズが少なく、繊細な操作が可能になる。「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」ではこの特徴を生かし、ペン入力を提案している(写真=右)
photo シャープでソフトバンク向けの商品企画を担当する、林孝之氏

 このIGZOは、シャープの冬モデルに続々と採用されている。ドコモのSH-02Eは売れ行きも好調で、量販店の販売ランキングでは1位を獲得。タブレットでは、au向けの「AQUOS PAD SHT21」もIGZOを搭載している。一方で、ソフトバンク向けにはIGZO搭載モデルが1機種もなかった。そこで、シャープは203SHの仕様変更を提案。理由は、やはりIGZOの省電力性にあった。

 「S-CG Siliconも省電力への取り組みをコツコツと積み上げ、IGZOともそん色ないレベルでできるだろうと発表した。しかし、発表してから各所で使用時間は重要というご意見をいただき、実際に組み込んでみると、これだけ効果があるのも見えてきた。そこで、すでに仕様も固まっていたAQUOS PHONE Xxに対して、変更の提案を行った」(シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 林孝之氏)

 SH-02Eに搭載されたIGZOの反響が大きかったことも、決断を後押ししたようだ。林氏は「正直、想像以上だった。(ネットの)書き込みや、直接の評価を見ても、やはりIGZOというキーワードがいろいろなところに出てきている」と述べ、203SHでも液晶を全面に押し出したプロモーションを行っていくことを明かした。こうした方針に対しては、ソフトバンクモバイルも「タイミングや商機を逃すことはあってはいけないが、商品価値を高めるという意味では、ウェルカムだった」(林氏)という。

 ただ、仕様変更は一筋縄ではいかない。「本来なら途中から設計を変えると、開発日程に影響が出る」(林氏)からだ。実際、サイズにも影響があり、設計の見直しも行っている。こうした調査、裏付けを行い、「設計陣にがんばってもらいながら、何とか吸収する形で、ようやく試作ができあがった」(同)。使用時間などの測定はまだこれからで、「ソフトバンク網の中で評価をしなければ分からないところはあるが、同じチップセットを使っているAQUOS PHONE ZETA(SH-02E)が参考になる」という。SH-02Eは、連続待受時間(LTE)が350時間、連続通話時間(3G)が約580分。同じドコモで、同程度のバッテリー容量を持ちクアッドコア搭載の「Optimus G L-01E」が連続待受時間(LTE)が320時間、連続通話時間(3G)が580分、「ARROWS V F-04E」が連続待受時間(LTE)が300時間、連続通話時間(3G)が520分であることを考えると、203SHにも期待できそうだ。

 ソフトバンクモバイルの発表時には実機がなく、詳細が分からなかった203SHだが、新たな機能も搭載されている。その1つが、SH-02Eにも採用された音声コントロール。本体をトントンと叩き、端末に向かって「カメラ」などと話しかけるだけで、特定の機能、アプリを起動できる。カメラは「もっと明るく」といった自然言語に対応し、音声でシャッターを切ることも可能だ。また、「ワンセグ、YouTubeなど、動画系全般をマルチウィンドウに対応させた」(シャープ 通信システム事業本部 マーケティングセンター プロダクト企画部 岩越裕子氏)のは、203SHからの取り組み。これによって、テレビやネットの動画を見ながら、ほかの操作を行えるようになった。

photophoto 冬モデルで音声コントロール機能が搭載されているのは、AQUOS PHONE ZETAとAQUOS PHONE Xxだけ。冬は、手袋をつけたまま操作できるのがありがたい

 iPhoneの存在感が大きいソフトバンクだが、Android端末も以前より充実し始めている。この1年で、端末の価格も手ごろになった。まだ気は早いが、IGZOを採用した203SHが、どの程度受け入れられるのかは春商戦の見どころと言えるだろう。

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