Android時代に培ったコンテンツサービスに強み――NTTドコモがiPhoneを扱う期待と不安石川温のスマホ業界新聞

» 2013年09月27日 12時10分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 ポロシャツ姿の加藤社長が強調したのがネットワークの優位性だ。NTTドコモでは約5万局(約4万サイト)のXi基地局があり、そのうち75Mbps対応は約4万局(約3万4000サイト)になるという。

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 また、2GHz帯の基地局では6セクタ基地局を都心部中心に展開。2倍の容量を確保することで、快適なネットワークを提供できるという。

 さらに周波数に関しては、2.1GHz、1.7GHz帯、800MHz帯、1.5GHz帯のクアッドバンドを展開(そのうち、iPhoneは 2.1GHz、1.7GHz帯、800MHz帯に対応)。

 特に1.7GHz帯はiPhone提供開始時より東京、大阪、名古屋という大都市圏でサービスを開始。2013年度末までに500局に拡大する。iPhone 5c/5sにおいて、受信時最大100Mbpsを実現するものとなる。

 スペック上の最高値という面では、KDDIでも100Mbpsエリアをすでに提供するものの、対応基地局数という点ではNTTドコモのほうがリードしていそうだ。

 また、「トリプルLTE」という点でも、ソフトバンクモバイルが2.1GHz、1.7GHzに加えて来春から900MHzLTEサービスを開始するが、すでにNTTドコモでは提供済みであるなど、先を行っている感がある。LTEサービスを他社に先駆けて展開してきただけに、あらゆる面で有利と言えるだろう。

 しかし、ここ数日の各Webメディアがアップした都内での実測データ比較記事を見ると、必ずしもNTTドコモが速いというわけではないようだ。ソフトバンクモバイルにおいては、同社とイー・アクセスのネットワークを75Mbps化した倍速ダブルLTEが効いているようだし、KDDIにおいては、800MHzLTEが絶大な効果を発揮している模様だ(その点、iPhone5の数値がものすごく悪い)。

 筆者も9月16日に沖縄・石垣島でLTEエリア調査をしてきたが、KDDIの800MHzLTEネットワークの広さに驚かされた。NTTドコモは石垣空港などエリア対策がしっかりしているところはものすごい速さが出るものの(30Mbps程度)、LTEエリアは決して広くはなかった。

 NTTドコモのiPhoneにおける強みを分析する中で、加藤社長が言うようなネットワーク品質が優位かと言えば、まだ不透明な部分が多いような気がする。

 今後、iPhoneユーザーが増えていく中、iPhoneというAndroidとは違った通信制御が発生するデバイスをどのようにコントロールしていくかが、NTTドコモの評価に繋がっていくだろう。

 その点、他社よりも優位に位置づけられるのがコンテンツサービスだ。

 これまでiPhoneがなかったNTTドコモは、KDDIやソフトバンクに対抗しようと、Androidスマホ向けに、dマーケットで動画やアニメ、音楽などコンテンツサービスを充実させてきた。iPhone対応にはちょっと時間がかかるものの、これらがすべてiPhoneに対応できるようになると、キャリアとしての差別化要素としては充分に効果を発揮しそうだ。なにより、Androidで使っていたサービスがiPhoneに乗り換えてもそのまま使えるという点が大きい。キャリア課金で安心して楽しめるというメリットも大きいだろう。

 また、コンテンツを提供する側とすれば、AppstoreやGoogle Playの高く設定された手数料を支払わなくても、dメニューを経由すれば、安価な手数料で済ませることが可能だ。

 個々のユーザーと直接、AppstoreやGoogle Playで決済を行っていると、ユーザーが仮にAndroidからiPhoneに機種変更した場合、コンテンツプロバイダはイチからユーザーとの関係を構築し直さないと行けない。また再び、コンテンツ使用料を払ってもらうというのは難しかったりもする。その点、dメニュー経由であれば、ユーザーがドコモに留まっていれば、AndroidからiPhoneに機種変更しようと、関係は継続される。月額課金のコンテンツであれば継続性はとても重要になってくる。

 「Tizenの準備を始めた頃から、そんなマルチプラットフォームの世界観を追究してきた」(NTTドコモ、阿佐美弘恭スマートライフビジネス本部長)。

 コンテンツプロバイダにとってみれば、NTTドコモと関係を深めることで、課金のリスクを減らすことができる。コンテンツプロバイダにとっても、ドコモのiPhone導入は魅力的な話になってくるはずだ。

 NTTドコモでiPhoneを購入すると、Safariのブックマークにdメニュー、dマーケット、お客様サポートのページが書き込まれる。また、この3つのページのアイコンが、iPhoneの2画面にセットされるようにもなる。

 当然、iPhoneの画面上をひつじのしつじが歩くことはないが、ドコモが手がけるかなりのコンテンツサービスがiPhone上で展開されることになる。

 これまでiPhone対抗で強化してきた豊富なコンテンツ群が、iPhoneを始めたとたんに一気に他社を出し抜く武器に変わってきたといえるのだ。

 iPhoneでキャリアは「土管化する」と言われるが、意外とコンテンツでも様々な勝負ができそうな気がしている。

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