KDDI研究所は、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)と共同で開発しているUAV(無人飛行機)を用いた災害時のメッセージ通信システムを、ワイヤレスジャパン2014/ワイヤレス・テクノロジー・パーク2014(5月28日から31日まで開催)で展示した。
これは、大規模災害などで通信インフラが断絶した孤立地域に通信装置を搭載したUAVを飛ばし、スマートフォンから送信された安否確認情報や被災状況を撮影した静止画や動画を受信するというもの。UAVとスマートフォンとの通信はWi-Fiを使うため、通信事業者の違いを問わず利用できるのがメリット。
ただUAVは被災地域から送信されたデータを受信して蓄積するのみで、そのままではインターネットに接続せず、相手に届かない。UAVが被害を受けていない免災地域に戻り、着陸後に受信データをネットへ転送することではじめて送信が完了する。また被災地宛てに送信されたメッセージの返信やデータも、離陸前のUAVに転送(蓄積)してから現地に届けられる。

NICTブースに出展されていた電動UAV「PUMA-AE」(米エアロパイロンメント製)。翼長2.8メートル、重量5.9キロ、飛行時間は最大4時間(写真=左)。GPSを使ってあらかじめ設定したルートを飛行できる(写真=右)情報孤立地域の通信手段確保には、衛星携帯電話や移動基地局などの手段がある。衛星携帯電話は災害の有無や地域を問わずいつでも利用できるが、専用端末が必要で利用できる人数は限られてしまう。また移動基地局は展開までに時間がかかり、カバーできるエリアも設置場所から数キロ程度。そしてどちらも、回線を利用するには通信事業者との契約が必要になる。
UAVによるメッセージ通信はリアルタイム性がないものの、自分が持っているスマートフォンを使ってメールを作成し送受信できる。また1度の飛行で広範囲に渡る複数の避難所をカバーし、災害発生から数時間で離陸して被災地に通信手段を提供できるなど迅速な対応も可能だ。UAVの飛来頻度は短くても数時間おきになるため送受信の間隔は長いが、移動基地局が稼働するまでの連絡手段として利用できると見込んでいる。
展示されたシステムでは、UAVとスマートフォンの通信にWi-Fiルーターと小型PCを組み合わせた通信装置を介している。説明員によると、UAVの飛行高度が100メートル前後で、スマートフォンの出力ではWi-Fiの電波が直接届かないことがあるためだという。そのため実用化段階では、避難所ごとにこの装置の設置が必要だ。
またUAVはすべてのインターネットトラフィックを蓄積して送受信するわけではなく、専用のメールアプリとメールアドレスによる通信のみを扱う。利用にはアプリのダウンロードやメールアドレスの発行が必要だが、通信装置に貼り付けられたNFCタグを読み込むことで、できるだけ簡単に設定できるよう工夫した。またメールアプリも緊急時に万人が戸惑わずに使えるよう、文字が大きくシンプルなユーザーインタフェースを採用している。
ワイヤレスジャパン 2014:モバイル通信と共存共栄を図るWi-Fiの過去・現在・未来と課題
災害時に公衆無線LANを無料開放 世界初の統一SSID「00000JAPAN」策定
KDDI研、IBMとスマホ操作の支援技術を開発――4月から「スマホ道場」としてトライアル提供
4K/8K映像の配信、新しい通信技術、バーチャル空間共有――KDDI研究所で“未来”を垣間見てきた
2020年のポストスマホはこうなる――au未来研究所が“未来ケータイ”の構想を発表Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.