国内メーカーが相次いでWindows Phoneに参入、日本で再起なるかMobile World Congress 2015

» 2015年03月05日 14時29分 公開
[山口健太,ITmedia]

国内メーカーが相次いでWindows Phoneを発表

 2月後半、国内メーカーが相次いでWindows Phoneへの参入を表明した。マウスコンピューターがWindows Phoneベースのデバイス開発に着手したことを発表。京セラやfreetelも、3月2日よりスペイン・バルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2015」にWindows Phone端末を出展した。国内では2011年に発売された「IS12T」以来となる、Windows Phone発売の可能性が見えてきたといえる。

photo マウスコンピューターが開発着手を表明した、Windows Phoneベースのデバイスの試作機。国内発売が実現すれば、2011年以来のWindows Phone端末となりそうだ。
photo freetelがMWC2015に出展した、Windows Phone 8.1端末。今夏までに日本国内で発売するという

 現在の国内スマートフォン市場は、iPhoneとAndroidが人気を二分している。今回発表された各社の新端末が発売されることで、Windows Phoneが第3の存在として再び頭角を現す可能性はあるのだろうか。

すでに「寿命」を過ぎたIS12T

 2011年8月、KDDIが鳴り物入りで発売したのが「IS12T」だ。当時、世界初のWindows Phone 7.5端末として注目を集めた。その後、Windows Phone 7.8へのアップデートが提供されたものの、2014年10月にはマイクロソフトによるOSのサポートが終了した。

photo 「Windows Phone IS12T」

 端末としても、KDDIのLTEには非対応で、データ通信は3G(CDMA2000)のみの仕様だ。カバー率が向上したLTEによる高速化の恩恵を受けることができず、スマートフォンとしての寿命はほぼ尽きた状態と考えてよいだろう。

 Windows Phone 7.8のサポート終了にあたっては、Windows XPのような一般ユーザーの移行を促すキャンペーンは展開されなかった。日本マイクロソフトは国内でIS12Tを日常的に利用しているユーザーはほとんどいなくなったものと見ており、移行を呼びかけるには至らなかったと判断している。

 一方、日本マイクロソフトの社内では、Office 365やLyncを利用するための社内端末として、IS12Tを標準採用している。OSのサポート終了後も特別なセキュリティ対策を施して運用しており、安全性に問題はないと強弁するものの、対外的にはWindows XPやWindows 2003 Serverなどからの速やかな移行を訴えており、大きな矛盾を抱えた状態だ。

要件緩和によりメーカー参入が増加、SIMフリーも後押しに

 気になるのは、IS12Tそのものより、なぜ後継機が出なかったのか、という点だろう。

 Windows Phone 8世代では、米Microsoftが端末メーカーを厳しく選別したことで、IS12Tの開発実績があった富士通(当時の富士通東芝モバイルコミュニケーションズ)が外されるという事態が発生。NTTドコモからの国内発売が見込まれていたが、大きく後退する形となった。当時を知る関係者も、「富士通がドコモに頼らず、もっと主体的に端末を展開してくれれば……」と悔しさをにじませる。

 ところが、韓Samsungや台HTC、中Huaweiなどのメーカーは、シェア拡大の兆しがないWindows Phoneから距離を置き始めた。最後に残ったフィンランドのNokiaがどう動くか注目が集まる中、MicrosoftがNokiaの端末事業を買収すると決断、最後の砦を守る形となったことは記憶に新しい。

 この教訓を得たのか、Windows Phone 8.1世代でMicrosoftは、大きく方針を転換した。端末の必要要件を緩和し、チップセット市場でシェアを握る米Qualcommのリファレンス(標準)デザインにも対応し、OEM/ODM企業が独自の判断でWindows Phone端末を開発できる仕組みを提供した。その結果、ローカル企業を中心とする新興メーカーが相次いで参入、2014年のCOMPUTEX TAIPEIでは、かつてないほど多彩なWindows Phone端末が並んだ。MWC 2015におけるWindows Phone 8.1端末の急増も、この方針転換の延長にある。

 日本の市場環境も追い風となっている。2014年にはMVNOの人気が拡大し、キャリアにとらわれず使用できるSIMロックフリー端末の需要が増加した。今後のMVNO市場の拡大に伴い、iPhoneやAndroidだけではない、多様な端末が生き残る余地が出てきたといえる。

日本マイクロソフト「静観」の理由は

 このように追い風となる要素はあるものの、国内投入されるWindows Phoneには依然として厳しい市場環境が待ち受けている。国内のスマホ向けアプリやサービスはほぼ完全にiOSとAndroidをターゲットとしており、Windows Phoneに関心のあった開発者は見切りを付けてしまった。この冷えきった市場を、もう一度温めることはできるだろうか。

 鍵となるのは、日本マイクロソフトの動きだ。国内メーカー各社の発表後も、日本マイクロソフトは公式に大きな動きを見せていない。筆者個人としては、各社の代表が並ぶ合同会見のようなイベントを期待していたが、今のところそういった動きはないという。

 この点について日本マイクロソフトは、「国内メーカーがWindows Phoneに参入したことは歓迎するものの、当社の事業に特別な変化があるわけではない」と冷静な態度をとっている。今後もメーカー各社に対して支援を行っていくことは認めつつも、「Windows Phoneの各機能の日本向け対応についても、これまで通りグローバルで開発を進めている」と現状維持の姿勢だ。

 社内端末として運用しているIS12Tについても、日本マイクロソフトは現時点で置き換えの計画はないとしている。これまで日本マイクロソフトを率いてきた樋口泰行社長はWindows Phoneの日本再上陸を目指し、米国と日本の間で板挟みになりながらも手を尽くしてきたとの評価の声は多い。7月1日に社長に就任する平野拓也氏がどのような方針を打ち出すのか、気になるところだ。

 焦点となるのは、いまもなお交渉を続けているという大手キャリア向け展開と、MVNOやSIMフリー展開をどのようにバランスしていくか、という点だ。たしかに事業規模が桁違いとなる大手キャリアからの発売は悲願だが、まだ課題は多い。一方のMVNOやSIMフリー展開は「プランB」ともいえるが、現実に国内メーカー各社はWindows Phoneの発売に向けて走り出している。日本マイクロソフトの次の一手に、注目が集まる。

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