ノートPCを駆逐する? Windows 10スマホ+ノート型Continuumドックの衝撃

» 2016年03月07日 16時12分 公開
[小口貴宏,ITmedia]

 スマートフォンがノートPCを駆逐する――。そんな未来がやってくるかもしれません。スペイン・バルセロナで開催されたモバイル関連見本市「Mobile World Congress 2016(以下、MWC)」で、HPはWindows 10 Mobileスマートフォン「Elite x3」を発表しました。モバイル向けとしては最新鋭となるSnapdragon 820プロセッサに4GBメモリ、そして約6型のWQHD解像度のディスプレイを搭載したウルトラハイスペックが話題を集めました。

 ただ筆者がそれより注目したいのが、Elite x3のアクセサリーとして提供されるノートPC型Continuumドック「HP Mobile Extender」です。本製品からは、既存のノートPCを駆逐してしまうと感じるほどの威力を感じました。

HP Mobile Exender HP Elite x3
HP Mobile Exender ノート型のContinuumドック「HP Mobile Extender」

プロセッサを搭載しないPC型Continuumドック

 クラムシェル型ノートPCの外観をしたこのMobile Extenderは、12.5型の液晶ディスプレイ、46.5Whの大容量バッテリー。トラックパッド付きキーボード、そしてUSB-Cなどの端子で構成されています。頭脳を担うプロセッサなどは搭載せず、Windows 10 MobileスマートフォンのHP Elite x3とつないで、Windows 10 Mobileの目玉機能、Continuumを利用することで、あたかもノートPCのように使えます。

 Mobile ExtenderにつなぐスマートフォンのHP Elite x3は、Windows 10 Mobile端末として初めてSnapdragon 820プロセッサを搭載した端末です。同SoCを搭載するメリットとして、USB 3.0に準拠するため、有線(USB-C)を介し、ワイヤレスよりも安定的かつ高速にContinuumを利用可能。メインメモリもPC並みの4GBを内蔵します。

 MWCの会場では、Mobile Extenderはモックのみの展示にとどまりました。実機に触った感想をお伝えできないのが残念ですが、Snapdragon 820や4GBメモリの搭載により、既存の端末よりもContinuumを高速に使えることが期待できます。

HP Mobile Exender 展示されていたモックは薄くて軽かった
HP Mobile Exender 無線接続なら、スマートフォンをカバンに入れたままでもContinuumを使える

Continuumの幅を広げるMobile Extender

 HPの担当者によると、Continuumは特に法人から大きな注目を浴びているといいます。外出先ではスマートフォン、デスクではスマートフォンをディスプレイにつないでContinuumで業務をすれば、管理的にはスマートフォン1台を守れば大丈夫ということになり、コストの削減が期待できるためです。

 個人向けにはどうでしょうか。筆者は最近、自宅ではこれまで使っていたデスクトップPCの使用をやめ、ノートPCを外部ディスプレイにつないで使うようになりました。その方が外出先と家でPCの環境を統一でき、アプリのインストールやOSバージョンアップなどの管理が楽になるためです。

 Continuumでも同様のメリットがあります。スマートフォンをPCとしても使うわけですから、同じプロセッサに同じOS、そして同じストレージを参照します。Windows 10のユニバーサルアプリなら設定は共通。写真もスマートフォンで撮ったものがそのまま表示できます。同期のために煩わしいクラウドを設定する必要はありません。また、スマートフォンは大抵の場合SIMを搭載できるので、モバイルネットワークも苦労せずに確保できます。

 コスト的にはどうでしょうか。若い世代が一人暮らしを始める場合、スマートフォンがPCとしても使えるのなら、新たにPCを購入する動機は薄まります。Mobile Extenderは一般的なノートPCからプロセッサや冷却機構を省いているために、ノートPCとスマートフォンの2台持ちよりも、スマートフォンとMobile Extenderの組み合わせのほうが、トータルコストで優位に立つことが予想されます。

 今回発表されたMobile Extenderは、このContinuumをノートPC形態で使えるようにしたという点で、利用シーンを大きく広げます。最近は家庭でもデスクトップPCではなくノートPCを置く消費者は多く、その意味でも、ノート型ドックの登場により、Continuumがより消費者にとって身近になるともいえます。

 Continuumの利用シーンを広げます。最近は家庭でもデスクトップPCではなくノートPCを置く消費者は多く、その意味でContinuumがより消費者に身近になったともいえます。

ContinuumでフルWindowsが動く日は訪れるか

 なお、現時点のContinuumはあくまで簡易PCのような出来栄えで、WebやSNSの閲覧なら十分な場合もありますが、複数ウィンドウの表示は不可能。Microsoft OfficeもPC版のようなフル機能は使えず、例えばExcelではピポットテーブルも動きません。そこでHPは、Continuum上でリモートデスクトップを動かすソリューションを提案しています。

HP Mobile Exender Continuum上でリモートデスクトップを動かすHP Workspace

 とはいえ、今後MicrosoftがContinuumを充実させ、フルWindows 10に近いユーザー体験を提供する方向に動くのかには疑問も残ります。2 in 1 PCの導入で、タブレットとPCの垣根がなくなり、タブレットがPCのシェアを侵食したようなことがスマートフォンで起こる可能性があるためです。

 しかもタブレットに比べてはるかに普及率の高いスマートフォンがPCを兼ね、Mobile Extenderのようなアクセサリーで場所を問わず自由に使えるようになれば、スマートフォンがノートPCを駆逐し、市場が一変する恐れもあります。OEMと良好な関係を保ちたいMicrosoftとしては、このような理由からContinuumの拡充に慎重な姿勢を取る可能性もあります。

 とはいえ、モバイルにおけるiOS/Androdプラットフォームとの競合を考えるのならば、Continuumの拡充はMicrosoftにとって大きな武器になります。これはContinuumが今後どこまで充実するのかにもよりますが、数年後に“スタバでContinuum”の景色が一般化するのか、楽しみにしておきたいところです。

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