注目は、性能向上よりも新機軸――iPhone 7/7 Plusは新たなステージへ:神尾寿のMobile+Views(1/3 ページ)

» 2016年09月09日 20時27分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 サンフランシスコ市内のビル・グラハム・シビック・オーディトリウムは、2年連続で“歴史的な場所”になった。Appleが新製品をお披露目する「Apple Special Event」の開催地に選ばれたからだ。

 9月7日(現地時間)、世界各国から招聘されたジャーナリストと通信キャリア首脳陣、そしてライブ中継を通じて注目する世界中の人々に見守られるなか、Apple Special Eventが開催された。テクノロジーとリベラルアーツの交差点から、人々のライフスタイルを、世界そのものを革新してきたAppleが、新たに何を語ったのか。サンフランシスコの地からレポートを届けたい。

iPhone 7/7 Plus iPhone 7と7 Plusは「性能向上」だけでなく、「新機軸の提案」に重きが置かれた進化をしている。これはフルモデルチェンジの名にふさわしいものだろう
iPhone 7/7 Plus 今回もキーノート会場になったビル・グラハム・シビック・オーディトリウム
iPhone 7/7 Plus Apple CEOのティム・クック氏

異例づくしの“日本へのリスペクトと最恵国待遇”

 Appleが“日本びいき”であることは、わりと有名な事実だ。

 Appleの創業者であった故スティーブ・ジョブズ氏は禅に傾倒し、すしをはじめ日本食を好んで食べたことで知られている。その影響というわけではないだろうが、今でもApple本社の人々は日本文化や日本食に精通し、愛してくれている人が多い。またビジネスの面に目を向けても、Appleと日本との関わりは深い。Appleは日本の部品産業や素材産業を深く信頼して年間3兆円以上の調達を行っているほか、横浜にアジア地域の中心となる研究開発拠点を建設中である。Appleが日本をいかに愛してくれているかは、Apple本社を訪れてAppleの人々と交流する度に感じることである。

 しかし、である。今回のApple Special Eventにおける日本の扱いは、異例づくしともいえるものだった。

 まず印象的だったのが、キーノート冒頭で、AppleのCEOであるティム・クック氏が任天堂のクリエイティブフェローである宮本茂氏を招き入れたことだろう。

 「App Storeには1400億ものアプリがあり、50万ものゲームアプリがあるが、誰もが楽しめるゲームとしてマリオが欠けていた」(ティム・クック氏)

 この言葉が表す通り、Appleは最大級のリスペクトを持って任天堂とマリオを紹介。宮本氏が発表したiOS向けのスーパーマリオ「SUPER MARIO RUN」に最高の賛辞を送った。これまでもApple Special EventやWWDCのキーノートで特定のゲームアプリが紹介されることはあったが、それはあくまでAppleの新製品や新プラットフォームの特徴を見せるデモンストレーション的な意味合いが強かった。しかし、今回の任天堂の扱いはまったく違う。Appleが自らの新製品よりも先に、サプライズとしてマリオを迎え入れたのだ。

iPhone 7/7 Plus
iPhone 7/7 Plus キーノート冒頭で特別扱いで任天堂の宮本茂氏が登場。iOS向けにスーパーマリオの新作「SUPER MARIO RUN」が発表された

 そして、マリオに続いて、世界的なブームになっている「Pokemon GO」のApple Watch対応も発表。Nianticのジョン・ハンケCEOが壇上にあがり、Apple WatchとPokemon GOの組み合わせをデモンストレーションした。

 このSUPER MARIO RUNとPokemon GOのAppleプラットフォームへの対応は会場内を大いに沸き立たせ、今回のイベントにおける目玉の1つになった。

 そして、任天堂へのリスペクトに続いて異例だったのが、今回のiPhone 7/7 PlusにおけるApple Payの日本市場対応と、JR東日本のSuicaに対する扱いだ。

 周知の通り、Appleはグローバル市場で製品と部材の共通化を図ることでコスト効率を高めるという戦略をとってきた。国ごとの規制で周波数や通信方式といった仕様の違いが出る無線通信部分でさえ、幅広い周波数・仕様に対応するマルチモードの通信チップを採用して可能なかぎり共通化を図ってきたくらいである。

 しかし、今回のiPhone 7とiPhone 7 Plus、Apple Watch Series 2では「日本特別仕様」ともいえるモデルを用意。SuicaやiDなど日本の電子マネー市場で普及しているソニーの非接触IC「FeliCa」を搭載し、Apple Payの日本市場への対応を果たした。Appleがたった1カ国のためにiPhoneの仕様を作るのは、米国市場でのみ発売された初代「iPhone」以来のこと。しかも、この日本特別仕様となるFeliCa対応を、iPhone 7/7 Plusにおける10の新機能の1つに据えたのだ。

 さらにJR東日本のSuicaへの対応も異例だ。

iPhone 7/7 Plus iPhone 7/7 Plusの紹介では、いきなり大画面に日本の国旗が映し出され、その後に「FeliCa」の文字。Apple Payの日本対応は、まさに日本のためだけの特別扱いだ

 JR東日本のSuicaは交通IC乗車券としてスタートしており、しかも首都圏のラッシュアワーでも滞りなく使えるようにするため、非接触ICのサービスとしては他にない仕様・機能が多い。逆説的にいえば、FeliCaが世界的に見ても類を見ない高速処理に対応し、結果としてそれがグローバル市場におけるFeliCaの特殊性になってしまったのは、JR東日本のSuicaの要求仕様に合わせて作られた部分がとても多いからだ。

 このSuicaサービスに対応するために、AppleはApple Payの仕様を変更。本来はTouch IDの指紋認証と“組み合わせて使わなければならない”というApple PayのUIデザインを変えて、指紋認証をせずに高速処理を実現するEXPRESSモードと呼ばれるSuicaだけの特別仕様が用意された。Appleが自社のサービス仕様とUIデザインを変えてまで、日本のSuicaに対応したというのは、これまでのAppleを知る人間からすれば驚倒するところだ。

iPhone 7/7 Plus スライド上に「Suica」のカード券面。JR東日本のSuica対応のためだけにApple Payの仕様変更が行われるなど、“日本の特別扱い”は今回の特徴だった

 このように今回の発表においてAppleは、異例ともいえる日本市場へのリスペクトと配慮を貫き通した。最恵国待遇と言っても、言いすぎではないだろう。とりわけiPhone 7とiPhone 7 Plusは、日本市場で使いやすいようにスペシャルな内容になっている。

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